しゃっくり:原因は?対処法は?検査は?治療で良くなるの?
更新日:2020/11/11
- 家庭医療専門医の三澤 美和と申します。
- 突然しゃっくりがでたり、ひどいしゃっくりが何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、しゃっくりの一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は知っておいてほしいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- しゃっくりの原因は様々ですが、心配のないことがほとんどです。ただ、まれにきちんと検査をしたほうがいいような病気が原因として隠れていることもあり、長時間(48時間以上)続く場合などには医療機関への受診が必要になります。
- しゃっくりを止めるためには、自宅でできる方法(冷水を飲む、レモンを噛む、コップの反対側から水を飲むなど)や、医療機関で処方される薬によって止める方法、漢方薬などいくつかの方法があります。
- しゃっくりそのものの持続時間や、同時に起こるしゃっくり以外の症状をメモして、医療機関に相談しましょう。
しゃっくりは、どんな病気?
- しゃっくりとは、胸とお腹の中にある横隔膜【おうかくまく】という部分が、自然にけいれんすることによって起きる症状です。
- そのほとんどはすぐおさまるので心配のないですが、止まらずに48時間以上続く場合、まれですが1ヶ月以上続く場合もあります。
しゃっくりでは、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- しゃっくりのほとんどは心配のないものです。短い時間で治まるしゃっくりは病院に行く必要はありません。48時間以上続くような止まらないしゃっくりの場合や、他に苦痛な気になる症状がある場合には病院へ行ってください。
- 長く続くしゃっくりの原因は色々考えられますが、まずは近くの内科やかかりつけの病院へご相談ください。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 短時間のしゃっくりに対しては、次のような方法で止まることがあると言われています。
おうちでできるしゃっくりの止め方
- 数秒間お腹に力をいれて息を止める(息こらえ)
- 舌をやさしく引っ張る
- コップの反対側(自分と遠いほうの縁)から水を飲む
- 冷水を飲む
- 紙袋(ビニール袋は不可)に息を吐く
- 硬いパンや小さじ1杯の砂糖、砕いた氷を飲み込む
- レモンを噛む
しゃっくりがでやすいのはどんな人?原因は?
- しゃっくりが出やすい人というのははっきりわかっていません。
- 短時間のしゃっくりを起こす原因となるものには次のようなことがあると言われていますので、しゃっくりの出やすい人は気をつけるようにすると良いです。
しゃっくりの原因
- 大食い、食べすぎ、胃がいっぱいになること
- 炭酸飲料
- ガムを噛むこと(空気を飲み込んでしまうため)
- タバコ
- 冷たい飲み物を急に飲む(胃のなかの温度が急に変わるため)
- お酒
- ストレス、不安、興奮、不快感などの心の問題、疲れや水分不足、眠れない、眠りが浅いこと
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院に行ったら、しゃっくりが続く時間や、起こりやすい状況をお聞きし、体の診察をして必要な検査をします。
行うことの多い検査
- 血液検査:患者さんの体から血液を採り、感染症がないか、ミネラルのバランスなどを、評価します。
- 上部消化管内視鏡検査:いわゆる胃カメラで、口または鼻から管を入れて、胃の中の液体である胃酸が逆流していないか、胃酸が原因となる消化性潰瘍がないか、チェックします。
- 心電図:心臓のある部分の肌や手足に電極をつけて、心筋梗塞や狭心症という心臓の血管が詰まって起こる病気がないか調べます。
- 胸部レントゲン、CT:腫瘍や、動脈の異常などが起きていないかを調べます。
- 頭部CT、MRI:頭の中にしゃっくりの原因があるかどうかを調べます。
もっと知りたい!しゃっくりのこと
どんな治療があるの?
- しゃっくりの治療には、薬を使う治療と薬を使わない治療があります。薬を使わない治療は、前述の「おうちでできるしゃっくりの止め方」を参考にしてください。
- 胃酸が食道へ逆流する胃食道逆流が考えられる場合には、胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)をまず使います。
- 脳の病気が疑われる場合には、てんかんという病気やけいれんを抑える抗てんかん薬(ガバペンチンなど)をまず使います。
- 漢方薬である柿蒂湯【していとう】は、薬局に置いてあり、古くからしゃっくりを止める漢方として使われています。
- お薬でも効かない場合、東洋医学の鍼【はり】治療は一般的に効果があるとされています。横隔神経の刺激や手術による方法は、まだ確立されたものはないようです。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- お医者さんで治療を受けた後は、それぞれの薬の副作用には注意が必要です。副作用については、お薬を出した先生に聞いてください。
- また、しゃっくりを悪化させる疲れや水分不足、睡眠不足には、治療中も注意してください。
- 治療中にもしゃっくりがひどくて眠れない場合は、もう一度検査し、他の薬を飲む必要があることがありますので、病院にご相談ください。
追加の情報を手に入れるには?
長く続くしゃっくりに隠れている病気は?
- 48時間以上続くようなとまらないしゃっくりに隠れている病気として、代表的で病院に相談が必要なものを紹介します。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは、それぞれ胃・十二指腸の壁が胃酸や食べ物を消化する液で攻撃され、傷ができている状態をいいます。
- 逆流性食道炎とは、胃酸が出すぎて胃から食道に逆流し、傷を作る状態をいいます。
- どちらも、胃の痛みや胃もたれ、胸焼けなどの症状が出ます。これらがしゃっくりの原因になることもあり、症状が強い場合は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をして、病院で胃酸を抑えるようなお薬をすすめることもあります。
電解質異常
- 電解質とは、体の中のカリウム、ナトリウムなどのミネラルのことで、電解質異常とは、ミネラルのバランスが何らかの原因で崩れる状態を言います。
- 特に、ナトリウムが下がったときなどはしゃっくりの原因となることがあります。血液検査をして異常があれば、お薬を飲んだり点滴をいれてもらったりすることがあります。
甲状腺や肺の腫瘍、肺炎や心膜炎
- 甲状腺を含む首のまわりや、胸のあたりの腫瘍が神経を刺激し、しゃっくりを起こしていることが稀にあります。肺や心臓といった臓器に炎症を起こしている場合も、しゃっくりの原因になることがあります。
- 治りにくいしゃっくりでは、胸のレントゲンやCTをとってそのような異常がないかを確かめることもあります。
心筋梗塞、狭心症
- 心筋梗塞や狭心症という心臓の血管が詰まって起きる病気もまれではありますが、しゃっくりの原因となります。
- 心電図や血液検査で異常があれば、すぐ病院で治療をすすめることになります。
脳腫瘍、脳出血、脳炎など
- まれですが、脳の中の病気が原因となることがあります。体のほかの症状や診察の結果からも疑わしい場合には、脳のCTやMRIで調べることがあります。
お薬
- 一部のお薬がしゃっくりの原因になることがあり、疑われる場合にはそのお薬を出した先生にご相談ください。
- 免疫を抑えるステロイド薬、眠れるようにするお薬、精神科のお薬、細菌をやっつける抗菌薬、がんをやっつける抗がん剤、医療用の麻薬などがしゃっくりを起こすことがあります。
原因が分からない長時間続くしゃっくりの治療は?
- はっきりとした原因がわからない場合には、以下の薬がある程度効くと考えられています。
- メトクロプラミド10mg,口から飲むお薬,1日2回~4回
- クロルプロマジン10~50mg,口から飲むお薬,1日3回
- 重度の症状であればクロルプロマジン25~50mg,筋肉内・静脈内へ注射するお薬
- バクロフェン5~10mg,口から飲むお薬,1日3回バクロフェン