漢方薬:どんな薬? どんな効果? どんなときに飲むといいの? 副作用は?
更新日:2020/11/11
- 漢方専門医の加藤 士郎と申します。
- このページでは、漢方薬について、どんな薬なのか、どんな効果があるのか、 どんなときに飲むといいのか、副作用はあるのかなどについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 漢方薬は、かぜ、歯痛、こむら返り、慢性の胃腸障害、冷え症、更年期症候群などいろいろな病気の治療に活用できます。
- お薬を飲むだけでなく、日ごろの食事・運動・睡眠などにも注意をはらっていただくと、より効果的に活用できます。
漢方薬とは?
- 漢方薬とは、天然にある動物や植物、鉱物など病気や症状に効果があるものをそのまま、あるいはあまり加工をしないで使う生薬【しょうやく】をいくつか組み合わせたお薬で、これを方剤【ほうざい】といいます。
- この方剤を、漢方医学の理論に基づいて、適している考えられる症状と体質(これを証【しょう】といいます)をもつ人に投与すると効果が得られます。
漢方薬と民間薬って何が違うの?
- 漢方薬は民間薬と比較して次のような違いがあります。
漢方薬は民間薬の違い
- 構成生薬:漢方薬は複数の生薬を組み合わせた方剤であるが、民間薬は1種類の生薬であることが多い。
- 投与方法:漢方薬は漢方医学の理論に基づいて投与されるが、民間薬は民間の経験的な伝承による。
- 効果:漢方薬は比較的かぎられたある証に対してのみはたらくのに対して、民間薬の効果は症状も体質も考慮しないので漠然としたものが多い。
漢方薬はどんなときに飲むとよいの?
- 漢方薬は、次のような病気や症状があるときに服用してください。
- 急性疾患:かぜ、こむら返り、歯痛、頭痛、眩暈、つわり、子どもの夜泣きやひきつけなど。
- 慢性疾患:慢性の胃腸障害、食欲不振や便秘、冷え症や更年期障害、不安神経症やうつ状態、腰痛や下肢痛、肩こりや打撲など。
漢方薬を処方してもらうにはどこに行けばいいの?
- 漢方薬は病院あるいは薬局で処方してもらえます。
- 病院で処方してもらう漢方薬は、多くの場合健康保険が適用となりますが、薬局で直接処方してもらうときには自費になります。
- より専門的な知識が必要なときには、漢方専門医がいる病院や漢方薬・生薬認定薬剤師がいる薬局に行くとよいです。
漢方薬はすぐに効くの?
- かぜ、こむら返り、歯痛などの急性疾患には即日効果がでることが多いです。
- 慢性の胃腸障害、食欲不振や便秘、冷え症や更年期障害などの慢性疾患に対しては2週間〜1か月ぐらいでなんらかの効果がでることが多いです。
- 症状や体質(証)に合っている漢方薬は、遅くても1~3か月で効果が出てきます。
漢方薬に副作用はないの?
- 漢方薬にも副作用はあります。とくに、次のような生薬が含まれているときには注意が必要です。
副作用に気を付けるべき生薬
- 柴胡【さいこ】
- 黄芩【おうごん】
- 麻黄【まおう】
- 附子【ぶし】
- 山梔子【さんしし】
- 甘草【かんぞう】 など
- 最近は一般的なお薬(西洋薬)と漢方薬を一緒に内服されることも多いと思います。次のような組み合わせで使用されるときは注意が必要です。
注意してほしい漢方薬と西洋薬の組み合わせ
- 麻黄剤とキサンチン製剤やエフェドリン製剤
- 附子剤と強心剤
- 甘草が多い漢方薬と利尿剤
- 大黄剤と下剤 など
- また、冷え症などの体質改善するための漢方薬を飲んでいる人が、かぜなどにかかって、さらに漢方薬を内服するときには、体質改善のための漢方薬は一時的に中止すべきです。
もっと知りたい! 漢方薬
漢方薬をより効果的にするにはどんな方法があるの?
- 漢方薬は食前や食間に飲むのが一般的ですが、都合により食後に飲んでも効果はあります。
- 漢方薬の名前で葛根湯【かっこんとう】などのように最後に“湯”という文字が書いてあるものは、お湯に溶かして飲むと有効性が高まります。
- 葛根湯のように汗をださせるはたらきがある漢方薬を飲んだときには、温かいものを一緒に食べると有効性が高まります。
- 冷え症などの体質改善に漢方薬を飲んでいるときは、冷たい飲食物をさけ、温かいものを多く飲んだり食べたりすると漢方薬の効果が高まります。
- 柔軟体操やウォーキングなどを続けると、漢方薬の効果が高まります。
漢方薬には何故錠剤が少ないの?
- 漢方薬はもともと薬草を煎【せん】じたものをそのまま飲んでいました。
- 現在の医療用漢方薬は、多くはこの煎じ薬からつくりだした粉末【ふんまつ】状のエキス顆粒として飲んでいることが多く、種類は少ないですがカプセルや錠剤もあります。
漢方薬の効き目はどのように現れるの?
- 慢性疾患に用いる多くの漢方薬は、24時間からだのはたらきを調節している自律神経系を整えて、臓器の微小循環(末端の微小な血管などによる臓器との栄養分やからだに不要になった物質のやりとり)を改善する効果があります。
- 詳細なしくみはまだよくわかっていないものが多いですが、かぜの漢方薬のように、ウイルスに効果を示すしくみが明らかになってきたものもあります。