A型肝炎:症状は?どうやって感染するの?人にうつる?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 肝炎ウイルス研究者の相崎英樹、石井孝司と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がA型肝炎になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)に汚染された生水や食品などを摂取することで生じる急性のウイルス性肝炎です。
- 日本では上下水道などの衛生環境の整備が進み、発生数は減少しています。
- 症状としては発熱や全身のだるさ、食欲が出ないなどがあります。
- 予防として感染症の情報に耳をすませるとともに、ハイリスクの方にワクチン接種を勧め、一般の方も手洗いを習慣づけることが重要かと思われます。
A型肝炎は、どんな病気?
- A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)に汚染された生水や食品などを摂取することで生じる急性のウイルス性肝炎です。
- 日本では上下水道などの衛生環境の整備が進み発生数は減少しています。
- 一方でHAV抗体保有率の低下が進み、一度感染が起こると広がりやすい状況となっています。
- A型肝炎は決して発展途上国の特殊な病気でなく、先進諸国でもアウトブレイクが発生しており、一度アウトブレイクが起こるとその鎮圧には大変な社会的、経済的な負担が生じます。
どんな症状がでるの?
- A型肝炎では下記のような症状が出ます。
A型肝炎の症状
- 食欲がでない
- 全身のだるさ・疲労感
- むくみ
- 発熱
- 肌や白目が黄色くなる(黄疸)
- A型肝炎の初期症状はいわゆる風邪症状に似ており、血液検査で初めて診断されるケースも少なくありません。
- 一方、意識障害を伴うような重症の劇症肝炎はまれで、多くありません。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- A型肝炎を疑われると、血液検査をします。
- 血液検査によって、肝臓に炎症が起きていることや肝機能の低下を評価します。
- また、A型肝炎ウイルスによるものかを調べることで診断します。
コラム:血液検査の詳細
- 急性肝炎では、一般の血液検査として、肝機能を示すALT、AST、胆道系のビリルビン、ALP、γ-GTP、血液中のIgMを反映するチモール混濁反応(TTT)値の上昇が見られます。
- A型肝炎特異的な検査として、感染後2-6週の潜伏期の時点から血液中、便中にHAV RNAが検出され、肝障害とともにHAV RNAは減少します。
- 発症後1週間目からIgM型HAV抗体が出現し、約1ヶ月後にピークに達し、3-6ヶ月後に陰性となります。IgM型HAV抗体に遅れてIgG型HAV抗体が出現し、数十年にわたって持続陽性となります。
どんな治療があるの?
- A型急性肝炎の治療は、安静入院で自然軽快する例がほとんどです。
- 小児の場合には不顕性感染や発熱、軽度黄疸程度のものも多く、保育園等で他のヒトへの感染源になる可能性があります。
- 高齢者は若年者に比較して重症化する例があります。
- 重症例では、ステロイドパルス療法や血漿交換療法を行うこともあります。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- A型肝炎はHAVに汚染された生水や食品などを介して口より侵入し、人から人へうつります。
- 食品としては、生牡蠣等の貝類の生食、レタス等の生鮮野菜、冷凍ブルーベリー等の輸入生食材で感染の報告があります。
- A型肝炎の感染経路として他に性的接触があり、近年は男性の同性間性的接触による感染が増えています。
予防のためにできること
- A型肝炎感染予防には、手洗いや食品の十分な加熱が重要です。
- A型肝炎と診断された患者さんと接する際には、適切な手指衛生や糞便処理が必要です。
- 感染予防の中心はA型肝炎ワクチンの接種です。
特にA型肝炎ワクチン接種が推奨される方
- A型肝炎流行地への渡航する方
- A型肝炎患者の同居家族
- 調理士や生鮮食料品を扱う方
- 医療従事者
- 男性同性愛者
- 初回、2-4週間後、6ヶ月後の3回のワクチン接種で数年間持続する抗体価の獲得に有効です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 入院安静で基本的に自然軽快します。
- 退院後は一般的に良好で、一過性感染で慢性化することはありません。