ヘノッホ - シェーンライン紫斑病:どんな病気?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 小児科専門医の楊 國昌と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとお子さんがヘノッホ - シェーンライン紫斑病」と診断されるなどして、不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病とは、毛細血管の壁に炎症がおきることで発症する病気です。
- 皮膚に紫色の斑点(紫斑【しはん】といいます)が出たり、お腹の痛みや関節痛が症状としてあらわれます。
- お痛の痛みと関節痛は、治療を受けていただき安静にしていれば数週間以内でなくなります。紫斑は1年くらい続くことがあります。
- また、腎臓に炎症が起こることがあります。6か月間は尿検査を受けてください。
ヘノッホ - シェーンライン紫斑病は、どんな病気?
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病(HSP)は、毛細血管の壁に炎症がおきることで発症する病気です。
- この病気になると、足やお尻に少し盛り上がった紫色の斑点が出たり、足や膝の関節が腫れて痛む、おなかが痛くなったり、また、血の混ざったおしっこが出たりします。
- 治療を受けていただければ治る方がほとんどですが、重症で腎臓に炎症を起こした場合(HSP腎炎といいます)は、ヘノッホ - シェーンライン紫斑病が治った後に、慢性腎臓病になってしまうことがあります。
コラム:
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病は、アレルギー性紫斑病、アナフィラトイド紫斑病、血管性紫斑病などとも呼ばれていましたが、抗体の1種類であるIgAが血管内に沈着するため、最近ではIgA血管炎という呼びなに変わりつつあります。
どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 足やお尻に紫色の斑点(紫斑といいます)があらわれた場合は、ちゅうちょせず、医療機関を受診してください。
- 紫斑があることに加えて、次のような症状がある場合は、すぐにかかりつけ医にご相談ください。
すぐにかかりつけ医にご相談いただきたい症状
- 吐き気がある・嘔吐する
- 腹痛が続く
- 血便が出る
- 膝や足の関節の腫れが大きく、痛みが強い
- 尿が赤い、尿が少ない、顔がむくんでいる
- また、ヘノッホ - シェーンライン紫斑病と似たような症状を示す病気がたくさんあります。足やお尻の紫斑、下半身の関節痛に加えて、次のような症状があらわれたら、早めに医療機関にご相談ください。
他の病気の可能性もある症状
- 熱が出る
- 鼻血が出る
- 紫斑が腕、体、顔などにも出ている
- 腕や手、指などの関節が痛い
- 腫れている関節にほてりや赤みがある
受診前によくなるために自分でできることは?
- 早くよくなるためには、症状にあわせて無理のないようにご対応いただくとよいでしょう。
- お腹が痛いときは、固形物は避けて水分だけ摂るようにしてください。
- 関節痛がある場合は、歩かず安静にしてください。
ヘノッホ - シェーンライン紫斑病になりやすいのはどんな人?原因は?
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病は、3歳〜10歳のお子さんに多い病気です。
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病の原因は、ウイルスや細菌の感染をきっかけにつくられたIgA抗体という免疫成分が、何らかの要因で毛細血管の壁に付着してしまうことです。これにより、毛細血管が炎症を起こします。
- 毛細血管の炎症は、血管の内圧が強い部分で見られやすいため、紫斑や関節痛は足に出ることが多いです。
どんな症状がでるの?
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病にかかった場合、順番は様々ですが、下記のような症状があらわれます。
ヘノッホ - シェーンライン紫斑病 の症状
- 紫斑:太ももとお尻に、少し盛り上がった赤い斑点がでます。赤い斑点はその後、内出血を起こしているようなたくさんの点や、数センチ大の紫色の内出血の斑点になります。
- 腹痛:我慢できない痛みが続きます。食欲がなくなっていき、吐いてしまったり、栄養状態が悪くなったり、脱水を起こすこともあります。便に血液が混ざることもあります。
- 関節痛・腫れ:足や膝の関節が腫れてきます。歩く時に痛みがありますが、安静にしていれば痛みはでません。関節の赤みはありません。
- 腎症状:血液が混じった尿が出ることがあります。おしっこをするときの痛みはありません。尿検査で血尿や蛋白尿がわかることもあります。
- むくみ:顔、唇、頭、陰嚢などに、むくみが出ます。むくみは数時間から数日間続きます。これは血管神経性浮腫(クインケ浮腫)と呼ばれています。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 紫斑、関節痛、腹痛があり、ヘノッホ - シェーンライン紫斑病を強く疑った場合は、以下のような検査を行います。
検査の種類
- 血液検査:他の原因による紫斑や血液の悪性腫瘍でないことを確認するために行います。強い炎症がないこと、貧血がないこと、異常な白血球がないこと、血小板や血液を凝固させる成分の異常がないことを調べます。なお、腹痛が強い場合は、血液凝固第ⅩⅢ因子が低下していることがあります。
- 尿検査:腎炎を合併していないかについて調べます。血尿や蛋白尿があれば、HSP腎炎と診断します。
- 腎生検:尿蛋白が多い場合、腎臓の組織を取って腎炎の障害の程度を調べます。
どんな治療があるの?
- 腹痛がある場合は、ステロイドというお薬の点滴、もしくは飲み薬での治療を行います。腹痛が続くと、食欲低下による栄養不良や脱水になったり、腸に穴が開いたりすることもあるためです。
- HSP腎炎がある場合には、その重症度に応じて薬剤療法を行います。ステロイドのほか、免疫抑制薬、抗血小板薬、降圧薬などが使われます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 一般的に、ヘノッホ - シェーンライン紫斑病の治療で長期間、大量のステロイドを使うことはあまりないため、副作用がでることはまれです。
- ただ、ステロイドには高血圧、緑内障、白内障、躁鬱症状など多くの副作用があります。治療の後に見えづらさなどを感じることがあれば、主治医の先生にご相談ください。
予防のためにできることは?
- 特別な予防策はありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 紫斑、関節痛、腹痛は、数日から数週間で治ります。
- ただ、紫斑は1年間くらい出たり消えたりすることがあります。紫斑のみの場合は、日常生活に制限はありません。
- HSP腎炎も、自然に治ることが多いです。ただ、紫斑や関節痛が治まった後に発症することもあるため、ヘノッホ - シェーンライン紫斑病を発病してから6ヶ月間は、腎臓の状態を確認するために尿検査をしていただく必要があります。
- HSP腎炎が重症だった場合は、最終的に慢性腎不全になることもあります。
追加の情報を手に入れるには?
- ヘノッホ - シェーンライン紫斑病を含む血管炎については、以下のガイドラインを見るとよいでしょう。
- 日本循環器学会:
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_isobe_d.pdf
- 日本皮膚科学会:
- https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/vasculitisGL.pdf