乳幼児・小児の頭痛:原因は?対処方法や病院受診のタイミングは?
更新日:2020/11/11
はじめに
- 小児神経専門医、頭痛専門医の榎日出夫と申します。
- 子どもが頭痛を訴えたり、ひどい頭痛が何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、子どもの頭痛の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- 小さな子どもにも頭痛はあります。
- 頭痛が長引いてなかなか治らないことがあります。このようなときは、症状の無い時期があるかどうかがポイントです。
- 頭痛の原因の大半は緊張型頭痛や片頭痛と呼ばれる病気であり、危険性は低く、急いで受診する必要はありません。
- ただし、まれに髄膜炎やくも膜下出血のように危険な病気が潜んでいることもあります。そのような症状がある場合にはすみやかに受診してください。
- 睡眠の不足、睡眠の取りすぎ、目の使いすぎ、姿勢の悪さは悪化の原因となりますので避けるようにしてください。
子どもに頭痛はあるの?
- 小さな子どもにも頭痛はあります。
- 「あたま いたい」と口に出して言えるようになる年齢は5歳くらいです。
- 2、3歳の子どもは自分からは頭が痛いと言いませんので、本人の様子を見て、以下の症状があれば、子どもでも頭痛の可能性があります。
子供の頭痛の症状
- 急に元気がなくなる
- 顔色が悪く
なる - 繰り返し吐く
- 痛そうな表情
をする
どんな症状なの?
- 小さな子どもでは痛みの部位を「まえ」とか「うしろ」と口に出して言うことはできません。お父さん、お母さんが自分の手をお子さんの頭に当てて、「ここ?」「こっち?」と尋ねて、頭痛の部位を確認してください。
- 子どもでは部位がはっきりせず、頭全体を痛がることが多いです。
- 頭痛が強いのか軽いのかは、本人の様子で見分けます。「寝込んで起き上がれない」なら、強い頭痛です。「痛がっているけれど遊んでいる」「テレビを見ている」「ふつうに食事をとっている」なら、それほどひどくない頭痛と考えられます。
- テレビなどのふつうの音量が大きすぎて、うるさく感じられる音過敏がみられることがあります。
- 光をまぶしがり、部屋の照明が明るすぎると感じて、暗い部屋を好むのは光過敏といいます。
- 音過敏も光過敏も、とくに片頭痛のときに現れる症状です。小さな子どもではまれです。
- また、熱が出て、吐く、頭痛は脳の表面をおおう膜面の感染症(髄膜炎)かもしれません。意識がしっかりせず、ぐったりするようなら急性脳炎や急性脳症の場合もあります。
いつものように繰り返す頭痛? それとも急に始まった頭痛?頭痛にはどんな種類があるの?
- 頭痛が長引いてなかなか治らないことがあります。このようなときは、症状の無い時期があるかどうかがポイントです。
- 以下に種類と特徴をまとめました。
頭痛の種類
- 片頭痛:頭を痛がって寝込むけれど、数時間すると治まってケロッとしている。でも、また翌週あるいは翌月にも同じ症状が出る。このように無症状の時期をはさんで何度も繰り返します。
- 緊張型頭痛:頭痛が何日も、ときには何週間も続くけれど、痛み自体は軽くて、どんどんひどくなることもないのが特徴です。
- 脳腫瘍などの病気:何週間も続き、だんだんと程度が強くなるときは脳腫瘍などの病気を調べる必要があります。
- この他にも、いままで頭痛はないのに、急に強い頭痛が現れたら危険な症状かもしれません。頭の中で出血が起こっているかもしれないので医療機関を受診しましょう。
薬は使っていいの?
- 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)は子どもでも服用できます。
- 漢方薬の中にも頭痛に使いやすいものがあります。
- 薬の使い方はかかりつけ医に相談してください。
こんな症状があったら救急車を!
- 頭痛の原因の大半は緊張型頭痛や片頭痛と呼ばれる病気であり、危険性は低く、急いで受診する必要はありません。
- ただし、まれに髄膜炎やくも膜下出血のように危険な病気が潜んでいることもあります。
- 以下のような症状がある場合にはすみやかに受診してください。
救急車を呼んでほしい時
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- 頭のCT検査などが必要になる場合が多いので、緊急で検査を実施できる医療機関が適切です。
- 救急車の必要性も検討してください。
子どもの頭痛が楽になるように、自分でできることは?
- ふだんから頭痛を繰り返している人が、今日もまた頭痛をきたした、という場合は、必ずしもすぐに医療機関に受診する必要はありません。
- こんなとき、自分でできる対処法や予防法を試してみてください。
予防法
- ストレッチ:首や肩のこりをほぐすとよいです。小さな子どもでも肩こりはあります。とくに緊張型頭痛の方は是非、試してみてください。
- 温める:緊張型頭痛では温めると痛みが楽になります。おふろに入るのもよいです。しかし、片頭痛では入浴で体が温まると悪化しますのでひかえてください。
- 痛み止めの薬:痛みがつらいときには解熱鎮痛薬を飲んでみるのもよいです。小さな子どもではアセトアミノフェンを使用できます。緊張型頭痛、片頭痛どちらにも効果があります。かかりつけ医であらかじめ処方してもらってください。
※痛み止めの薬は、まれに“くせ”になり、服用していないときに頭痛が生じるようになることも知られています。適切な使用法は月10日くらいまでが目安です。
避けた方がいいことは?
- 避けた方がいいことは以下の通りです。
避けた方がいいこと
- 睡眠の不足・取りすぎ:睡眠不足は頭痛の大敵です。しかし、実は、必要以上の睡眠をとると、かえって頭痛は悪化します。また休日に「寝だめ」しても悪化することがあります。
- 目の使いすぎ:例えばスマホなどの画面を見続けることも悪化の原因になります。
- 姿勢不良:前かがみの作業など、長い時間同じ姿勢をとると頭痛が悪化します。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- かかりつけ医へ受診してほしい時は以下の通りです。
かかりつけ医へ受診してほしいとき
- 何度も繰り返し現れる頭痛
- 手持ちの薬を飲んでも効果がなく、むしろ悪化していく頭痛
- 片頭痛を疑わせるような特徴のある頭痛
お医者さんでおこなわれること
- 医師の診察では、主として問診で診断します。とくに下記の項目をお医者さんに正しくつたえると診療の助けになります。
頭痛チェックシート
- 初めての頭痛か、以前からあった頭痛か?
- 1回の頭痛はどれくらい続く?:数秒~数分、数時間、数日
- 痛みの部位は?:おでこ、後頭部、首の後ろ、片側、両側、頭全体
- 痛みの感じ方は?:ズキズキ、締め付けられる、人生最悪の頭痛、ピリピリ電気が走るよう、など
- 頭痛以外の症状は?:熱、吐き気、めまい、意識がおかしい、しゃべりにくい、目が見にくい、手足のしびれ
- 大半の頭痛では特別な検査は必要ありませんが、ときに血液の検査や頭部の画像検査(CTやMRI)などを行うことがあります。
- また、ごくまれですが髄液検査が必要になることがあります。
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ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下の書籍やウェブサイトを参照してください。
- 日本頭痛学会ガイドライン(http://www.jhsnet.net/guideline.html)
- 日本小児神経学会ホームページ「小児神経Q&A」(https://www.childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=4)
- 慢性頭痛のガイドライン2013(監修:日本神経学会/日本頭痛学会医学書院 2013年)
- 国際頭痛分類 第3版(訳:日本頭痛学会 医学書院 2018年)
もっと知りたい! 頭痛
頭痛の種類の詳細
- 多くの病気が頭痛の原因になります。もし、痛みで毎日の生活に大きな支障が出ている場合は、医療機関で相談してみてください。
- 手掛かりは、痛みが「いつものように繰り返す」のか、「急に始まった」のかという点です。急に起こった初めての頭痛は通常医療機関の受診が必要です。
- いつものように繰り返す頭痛には緊張型頭痛、片頭痛、薬剤誘発性頭痛などがあります。
- 急に始まった頭痛にはくも膜下出血、髄膜炎・脳炎、脳腫瘍などがあります。
風邪などによる頭痛
- 風邪、インフルエンザなどの病気にかかったときに同時に頭痛を認めることもあります。これらは風邪などが治ると痛みがなくなります。
- 副鼻腔炎も頭痛をおこします。おでこの眉の上のあたりや、頬の付近を痛がります。
緊張型頭痛
- ストレス、睡眠不足、疲労、運動不足や姿勢の悪さが誘因となります。
- 慢性的に頭部、肩、首筋の筋肉が収縮して張った状態(=緊張)が特徴の頭痛で、首や肩のこりを伴います。
- 頭のまわりがベルトでじわっと締め付けられるような痛みが典型的です。
- 頭のうしろが右も左も痛いことが多く、頭部全体が痛いこともあります。
- 頭痛は連日続きますが痛みの程度は軽く、寝込むほどではありません。
- 動くことで悪化したりせず、吐き気もないので、日常生活の大きな支障にはなりません。
- 一日の中でも変化は少ないのですが、夕方にやや強くなります。
- 小さな子どもでも睡眠や運動の不足がきっかけになって発症します。
典型的な片頭痛
- 吐き気を伴い、拍動性の片側の痛みが特徴です。
- 典型例では視野の一部が光ったり、ギザギザの星形が現れて見えにくくなったりする閃輝暗点を特徴とした視覚の前兆を伴います。
- 家族歴が多く、家族に同じ症状の人がいます。
- 片頭痛にはさまざまな特徴があり、典型的な場合には下記のような症状が現れます。
典型的な片頭痛の症状
- 頭痛の程度がやや強く、寝込んでしまう
- 数時間から、長くても72時間で治まる
- 頭痛の始まる前に前兆を伴う
- 前兆は視覚症状が多く、モザイクのような光が見える
- 頭部の片方の痛み
- ズキン、ズキンと波打つような拍動性の痛み
- 吐き気、嘔吐を伴う
- 小さな音をうるさく感じる(音過敏)
- 光をまぶしく感じる(光過敏)
子どもの片頭痛
- 小さな子どもの片頭痛は、大人の片頭痛の典型的な症状とは異なります。
- 痛みの部位は頭全体で、拍動性ではありません。
- 前兆を伴うことはまれです。
薬剤乱用頭痛
- 鎮痛薬を飲みすぎたことによって、薬がないときに頭痛を認めるようになった状態です。
- この状態を避けるために、ふだんの鎮痛薬は1ヵ月に10日までにとどめるように指導します。
起立性調節障害に伴う頭痛
- 朝、起床時に血圧が上がりきらず、頭を痛がります。
- 午前中に症状が重く、午後には軽くなります。
- 頭痛のほかに、腹痛、乗り物酔い、立ちくらみ、めまい、風呂でのぼせやすいなどの症状を伴います。
髄膜炎の頭痛
- 髄膜とは脳の表面をおおう膜のことです。病原体が頭がい骨の中に入って感染症を起こしたものです。
- 多くの場合、原因は風邪などのウイルスの侵入です。
- ごくまれに細菌が侵入して発症することがあり、これはウイルス性の場合にくらべると、たいへん重症の病気です。
- 発熱と嘔吐を伴う頭痛では髄膜炎かもしれませんので、医療機関を受診してください。また、ぐったりして意識がない場合にも危険な頭痛の可能性がありますので緊急で医療機関への受診が必要です。
- このほか、急性脳炎、急性脳症による頭痛も緊急性があります。
くも膜下出血に伴う頭痛
- まれですが、頭の中の血管が切れて出血を起こし、頭痛を起こすことがあります。突然、いままで経験したことないような激しい頭痛が突然始まった場合には緊急の対応が必要になります。
脳腫瘍
- 慢性的に続き、次第に程度が強くなる頭痛を特徴とします。
- MRIのある医療機関を受診するとよいです。