幻覚:原因は?病院受診のタイミングは?必要な検査は?
更新日:2020/11/11
- 精神科専門医の川﨑康弘と申します。
- このページを見ておられる方は、普段は起こらない幻覚症状を体験し、不安を感じておられるかもしれません。
- 幻覚のうち、思春期や青年期に起こりやすいのは幻聴で、幻視は高齢者に起こりやすく、それぞれは異なる病気で生じてきますし、治療や対処法も異なります。
- ここでは、おもに「幻聴」についてお伝えします。いま不安を抱えているご本人や、心配しているご家族に役立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- 幻覚とは、実際には存在しないものが聞こえたり、見えたりすることです。「他の人には聞こえない声が聞こえる」といった幻聴と、「他の人には見えないものが見える」といった幻視が代表的です。
- 幻聴では、自分のことを悪く言う人の声が聞こえることが多く、思春期や青年期に起こりやすいです。また、統合失調症が発症している可能性があります。
- 本人は幻覚に対して実際に起こっている出来事として対処しようとしますので、周囲の人にとっては理解しがたい行動をとることがあります。
- 最大の原因は、精神的なストレスです。ストレスを減らしたり、医療スタッフに相談したり、お薬を飲んだりすることが、治療として挙げられます。
幻覚って何?
- 幻覚とは、実際には存在しないものが聞こえたり、見えたりすることです。五感のいずれにも生じます。
幻覚の代表例
- 幻聴:他の人には聞こえない声が聞こえる
- 幻視:他の人には見えないものが見える
幻聴って何?
- 幻聴とは、「周りに誰もいないのに人の声が聞こえてくる」という体験です。
- 聞こえてくる内容は、自分に対する悪口や批判、命令などの場合が多くあります。
- 思春期や青年期に起こりやすいです。
- また、統合失調症という精神の病気を合併している可能性があります。
どんなときにお医者さんに行けばよいの? 何科を受診すればよいの?
- 幻聴があり、生活に支障をきたしている場合には、病院へ行ってください。
- 幻聴の克服が必要であるため、精神の病気がなくても、医師に相談することが望ましいです。これは、日常生活への影響は人によりさまざまであること、また不都合を感じているとしても幻覚だけが原因であるかも、本人だけでは判断できないことがしばしばあるからです。
受診してほしい病院
- こころの医療機関:精神科や心療内科
- 精神保健福祉の専門機関:地区の福祉健康センターまたは県こころの健康センターなど
幻聴の原因は何?
- 幻聴の最大の原因は、精神的なストレスです。
- ストレスとなる主な状態として、「不安」「孤立」「過労」「不眠」の四つの状態があります。この四つの状態が重なり、強まった状態がなかなか改善しないと、幻聴が出現してくると言います。(「正体不明の声」として幻聴を紹介している精神科医の原田誠一先生より)
- 四つの状態にさらされると、誰にでも起こりえます。
- 幻聴が起こってくることは稀なことではありません。特に、進学や就職など多くの新しいことに挑戦しなければならない若い方々は、幻聴が聞こえやすいです。
治療はあるの? 幻聴は治るの?
- 治療としては以下の通りです。
幻聴の治療
- 精神的なストレスを減らす:不安、孤立、過労、不眠の四つの条件を放置すると、互いに強め合うような悪循環が生じてしまいます。
- 医療スタッフに相談する:精神科医、看護婦、心理療法士、作業療法士、保健婦、ケースワーカーなどの医療スタッフは、幻聴を消していくためにサポートします。専門的な知識や情報を提供し、ご本人やご家族の不安を減らし孤立を避けるための相談相手なので、ご相談ください。
- 精神安定剤を飲む:精神科の先生が出す精神安定剤は、幻覚が生じてくる脳内のメカニズムを調整します。不安を減らして眠れない状態を治し、こころと脳の過労状態を改善することで、回復を助けます。
お医者さんで行われることは?
- 診察の流れは以下の通りです。
- 患者さんからお話を伺う:どの様な症状か、いつごろからみられるようになったのか、関連する生活上のストレスは無かったか、などを中心に詳しくお話を聞くことから始まります。
- 周りの方からお話を伺う:ご本人が体験したことに加えて、ご本人をよく知る周囲の方々から、どのように見えていたかという視点を変えた情報も、とても重要です。
- からだの検査:脳や神経などからだに病変があって、そのために幻覚が生じる病気もあります。血液検査、脳波検査、脳の画像検査などがあります。
よくなるために自分でできることはある?
- よくなるために自分でできることは以下の通りです。
自分でできること
- 「実は、実際の他人の声ではない」ことを忘れない
- 「声」の内容をなるべく気にかけず、相手にしすぎない:声の内容を気にかけたり、むきになって頭の中で相手に反論したりすると、幻聴が聞こえる頻度が増えたり、内容がエスカレートしがちです。
- 出されたお薬を勝手にやめない:精神安定剤は、十分な期間飲み続ける必要があります。飲むのをやめるべきか否かは、担当の先生と十分に相談して、計画的に行う必要があります。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 原田誠一:幻覚妄想体験の治療ガイド/正体不明の声-対処するための10のエッセンス-.アルタ出版.2002
- 精神医学講座担当者会議:合失調症治療ガイドライン(第2版).医学書院.2006
- 日本神経精神薬理学会:統合失調症薬物治療ガイドライン.医学書院.2016
もっと知りたい! 幻覚
五感ってなに?
- 生物が外のものを感知するための感覚の機能には、五感があります。五感は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5種類です。
幻視ってなに?
- 高齢者で起こりやすいのは「他の人には見えないものが見える」という幻視です。
- 小人や小動物が見えるといったものがあります。レビー小体型認知症という認知症の一種になっている可能性があります。
幻聴が聞こえると言う人の周りはどうしたらいいの?
- 周りの人の望ましい対応は、「不思議なことが起こっているのですね」と状況を受け止め、「そのようなことが起こっているならお辛いでしょう」と共感し、専門の病院を勧めることです。
- 本人の訴えを、「ありえない事だ」と訂正したくなるものですが、「自分に対して悪口や批判を言う者がいる」と確信しているので、訂正されたことで、自分のことを信じてもらえていないと考えるようになり、本人を孤立させることになってしまいます。
本当に幻聴は誰もが起こり得るの?
- 海や山で遭難した時に、声が聞こえてきたという体験が、しばしば聞かれます。
- 遭難すればだれでも「孤立」して「不安」が強まり「眠ることが出来ず」「疲れきってしまう」状態になります。
- そうして、四つの条件がそろうと幻聴が出現してきます。