中耳炎:種類は?原因は?症状は?治療は?
更新日:2020/11/11
- 耳鼻咽喉科専門医の山本 裕と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると耳鼻咽喉科で中耳炎と言われて不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 中耳炎とは鼓膜の奥の空間の炎症が起こることです。
- 耳の聞こえにくさの他、色々な症状を自覚します。
- 様々な種類があり、それに応じた適切な治療を受けることが大切です。
- 急性中耳炎は、お子さんに多く耳の痛みで発症します。細菌の感染をおさえることが治療の基本です。
- 滲出性中耳炎は耳のつまった感じや軽度の難聴を来します。耳管の機能が未熟なお子さんに多くみられます。
- 慢性中耳炎は鼓膜に穴があることにより耳だれや難聴をきたす病気です。手術により根治が得られます。
- 中耳真珠腫は進行性の病気で耳以外にも様々な症状をきたします。診断されたら多くの場合手術治療が必要となります。
中耳炎は、どんな病気?
- 耳の穴の奥には鼓膜がありますが、その奥の空間を中耳といいます。
- 中耳炎は中耳に炎症が生じる病気です。
- 中耳炎には様々な種類があります。
- 子どもに多くみられるものでは、細菌が中耳に侵入することにより急に発症する急性中耳炎や中耳に液体が長期にわたり貯留する滲出性中耳炎などがあります。
- 大人によくみられるものでは、鼓膜に穴があきそこから細菌が侵入してトラブルとなる慢性中耳炎があげられます。
- その他のものでは鼓膜の皮膚の成分が中耳に侵入することにより発症する中耳真珠腫があります。あらゆる年齢にみられ、さまざまな症状をきたす進行性の病気です。
中耳炎と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診を検討してください。
耳鼻咽喉科専門医への受診がおすすめな場合
- 強い耳の痛みが持続し、市販の鎮痛薬でおさまらない場合
- 耳のつまった感じや聞こえづらさを持続的に自覚する場合
- 耳だれ(耳から液体が出てくること)を繰り返す場合
- 耳を触ったときにめまいを感じる場合
- 幼児では、発熱、鼻汁などのかぜの症状とともに耳を気にする動作がみられる場合、音に対する反応が低下している場合
中耳炎になりやすいのはどんな人?原因は?
- 中耳炎の多くは、耳と鼻をつなぐ管である耳管の機能が低下することにより生じます。
- 耳管は中耳の圧を調節したり、鼓膜からの分泌物を排泄したりする機能があります。
- かぜを引いた時などに耳管の機能が低下すると、鼻やのどの細菌が中耳に侵入し、炎症を引き起こします。
- また慢性的に機能が悪い場合は、中耳に液体が貯留し、滲出性中耳炎を発症します。
- 耳管の機能は10歳前後にようやく成熟しますので、急性中耳炎や滲出性中耳炎は子供に多く発症します。
- 大人では上咽頭(鼻の奥)にできる腫瘍が耳管をふさいで滲出性中耳炎を引き起こしている場合があります。
- 慢性中耳炎では耳の穴から細菌が侵入して耳だれを反復します。
- したがって、中耳炎は下記のような人に起こりやすいといえます。
中耳炎になりやすい人
- 10歳までの子ども
- 上咽頭に腫瘍がある人
- 鼓膜に外傷を受けたことがある人
どんな症状がでるの?
- 多くの中耳炎では耳の聞こえづらさを感じますが、種類によって症状は少しずつ異なります。
急性中耳炎の場合
- 発熱
- 耳の痛み
- 耳だれ(耳から液体が出てくること)
- 耳を塞がれたような感じ
- 耳の聞こえづらさ
※子どもでは耳をさわる、不機嫌、夜泣きで気づかれることもあります。
滲出性中耳炎の場合
- 耳がつまる感じ
- 軽い耳の聞こえづらさ
- 耳の痛みはない
※子どもの場合は自ら難聴の症状を訴えることはあまりなく、返事をしない、テレビの音が大きいといったことで気づかれるケースが多いです。
慢性中耳炎の場合
- 耳の聞こえづらさ
- 耳だれ(耳から液体が出てくること)
※耳の聞こえづらさは、ゆっくりと進行していくことが多いです。
中耳真珠腫の場合
- 耳だれ(耳から液体が出てくること)
- 耳の聞こえづらさ
- めまい
- 顔面の動きづらさ
- 頭痛
※初期では症状は耳だれや耳の聞こえづらさですが、進行するとめまいや顔の運動障害などが現れます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 耳の中を観察して鼓膜の状況を確かめると同時に鼻やのどの炎症の有無もチェックします。それに加えて下記の検査を必要に応じて行います。
検査の種類
- 聴力検査:聞こえの程度を調べます。
- ティンパノメトリー:鼓膜の動きやすさをみる検査です。
- 耳管機能検査:耳管の機能を調べます。
- 細菌培養検査:耳だれの細菌を調べます。
- CT検査:耳の中の構造や炎症の有無などを確認します。慢性中耳炎、中耳真珠腫を疑う場合に行われます。
- ファイバースコープ:大人の滲出性中耳炎では、上咽頭(鼻の奥)に腫瘍がないかを調べます。
どんな治療があるの?
- 中耳炎の種類によって下記のように治療が異なります。
急性中耳炎の場合
- 軽症の場合は痛み止めや解熱剤を使用してまず経過を観察することもありますが、適切な抗菌薬を使用し中耳に侵入した細菌を殺すことが治療の基本となります。
- 重症度によっては、鼓膜を切開して中耳にたまった膿をだす処置を行うこともあります。
滲出性中耳炎の場合
- 鼓膜の切開により中耳内の液体を抜く処置を行います。
- また、耳管に空気を通す処置や鼻症状がある場合はその治療を並行して行います。
- 難治な場合は、鼓膜に換気用のチューブを留置します。
慢性中耳炎の場合
- 耳だれがみられた場合はまず耳にさす抗菌薬を使って中耳の細菌を抑えます。しかし鼓膜の穴がある限り感染は繰り返すことが多いです。
- 根治を目指す場合は鼓膜の穴をふさぐ手術(鼓膜形成術)などが選択されます。
中耳真珠腫の場合
- 真珠腫の進行があまりみられない場合は、局所の処置を行いながら経過観察をしていくこともあります。
- 基本的には真珠腫を取り除き鼓膜や中耳を再建する手術(鼓室形成術)の適応となります。
予防のためにできることは?
- 予防は中耳炎の種類によって異なります。下記に従って予防に取り組んでみてください。
急性中耳炎、滲出性中耳炎の場合
- アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大症などが発症にかかわっている場合があります。耳鼻咽喉科医と相談の上、これらを治療することが予防につながる場合があります。
慢性中耳炎の場合
- 急性中耳炎、滲出性中耳炎、鼓膜の外傷をした時に、それらを適切な治療により根治させることが慢性中耳炎の予防となります。
中耳真珠腫の場合
- 鼻をすすることが発症の原因になっている場合があります。鼻をすする癖がある時は、それをやめることが予防につながります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
急性中耳炎の場合
- 適切な治療を受ければ通常2週間以内に治ります。しかし、子どもでは繰り返し起こることがあります。
- 就学以降は発症しにくくなります。
滲出性中耳炎の場合
- 鼓膜の切開により液体を抜くことにより耳のつまった感じはすぐに良くなります。しかし、再び液体がたまると症状がぶり返してしまいます。
- 鼓膜チューブによる中耳の換気をうながす治療は数年間に及ぶ場合もあり、定期的な診察が必要になります。
- その間の水泳は病状が安定していれば耳栓着用の上で可能です。
慢性中耳炎の場合
- 抗菌薬で耳だれをおさえることが可能ですが、根治には手術が必要となります。
中耳真珠腫の場合
- 手術により根治が得られますが、再発の可能性もあるため術後長期間の定期受診が必要です。
追加の情報を手に入れるには?
- 中耳炎に関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 日本耳鼻咽喉科学会のサイト
- http://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki2/index.html