ネフローゼ症候群:原因は?症状は?検査や治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 腎臓専門医の石本 卓嗣、丸山 彰一と申します。
- このページに来ていただいたかたは、むくみや尿の泡立ちなどの症状が出てきて、なにか病気だろうか、もしかすると「腎臓病なってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- ネフローゼ症候群は尿にタンパク質が大量に漏れ出てしまう腎臓の病気です。
- ネフローゼ症候群の原因やタイプは数多くあり、診断に応じた治療が必要です。
- ネフローゼ症候群は、放置すると腎機能の低下が進み、透析治療や腎臓移植が必要となることがあります。
ネフローゼ症候群は、どんな病気?
- ネフローゼ症候群とは、尿にタンパクが多量に出てしまう病気です。
- そのために血液中のタンパクが減り、その結果、体に水分・塩分がたまり、むくみ(浮腫)が起きます。
- ネフローゼ症候群が長い期間続くと腎臓の働きが低下し、進行すると透析治療や腎臓移植が必要となることがあります。
どんな症状が出るの?どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- ネフローゼ症候群の症状は下記のようなものがあります。
ネフローゼ症候群の症状
- むくみ
- 体重の増加
- 体のだるさ
- 尿の泡立ち
- 一方で、症状があまりみられず、健康診断などの尿検査ではじめてわかる場合もあります。
- 以下のような場合は専門医の受診がおすすめです。
専門医の受診がおすすめな場合
- 上記の症状を認める場合
- 健康診断などの尿検査で指摘された場合
- 腎臓の働きが大きく低下すると、上記の症状以外にも尿の量が少なくなったり、血圧が高くなったり、食欲の低下、息切れなどが現れる場合があります。
- 症状が軽くても、多量の蛋白尿が長期間つづくと腎機能の低下が進むので、受診を検討してください。
どんな人に多いの?原因は?
- 一次性ネフローゼ症候群のタイプによって異なりますが、小児から高齢者まで広くみられます。
- ネフローゼ症候群には、腎臓自体に何らかの異常が起きたことが原因のもの(一次性)と、糖尿病や高血圧、膠原病など腎臓以外の病気が原因のもの(二次性)があります。
- 一次性のネフローゼ症候群にもいくつかのタイプがあり、そのタイプによって異なった原因でおこると考えられていますが、原因はよく分かっていません。
どんな検査をして診断するの?
- ネフローゼ症候群を疑われると以下の検査を行います。
検査の種類
- 尿検査
- 採血検査
- 超音波検査・CT検査:腎臓の形態的異常や、腎以外のものが原因でないかを調べます。
- 腎生検:針にて腎臓の組織をとって、顕微鏡で診断する検査です。ネフローゼ症候群のタイプを調べます。
- 尿検査と採血検査でネフローゼ症候群と診断できます。その原因を調べるために、その他の検査は必要に応じて行います。
どんな治療があるの?
- ネフローゼ症候群には一次性と二次性があります。
- 腎臓の異常が原因の一次性と、腎臓以外の病気が原因で腎臓に異常をきたす二次性で治療が異なります。
- 対症療法では、むくみを改善するため塩分の摂取を制限します。ひどいときには利尿剤を使用します。尿タンパクがつづく間は、レニン・アンジオテンシン系阻害薬も使用されます。
一次性ネフローゼ症候群
- タイプによっては副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬、リツキシマブなどの薬などによる治療を行います。
二次性ネフローゼ症候群
- 原因となっている病気の治療を行います。
治療が始まった後に注意をすることは?食事や生活で気をつけることは?治療の副作用は?
- 治療をしていく上で気をつけることは下記のことです。
治療で気をつけること
- 塩分の摂取制限
- タンパク質の摂取制限
- 感染症になりやすいために注意する(ワクチン接種などをする)
- むくみや高血圧の改善のために塩分の制限を行います。
- タンパク質の摂取について、一部のタイプを除いて、軽い摂取制限がすすめられることがあります。
- 副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が処方された場合は、感染に対する抵抗力が下がり感染症にかかりやすくなります。
- 副腎皮質ステロイド薬は、他にも肥満、糖尿病、胃潰瘍、骨粗しょう症、脂質異常症、成長障害、緑内障、白内障、不眠症などいろいろな副作用を起こしますが、どの位の量で、どの位の期間に使用するかで違います。
- 多い量で長く飲み続ける場合は、注意が必要です。定期的に眼科で目のチェックをうけることが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 一次性ネフローゼ症候群は、早期の適切な治療によって治すことができますが、薬が効きやすいタイプ(数週間の治療で尿タンパクが消え、数ヶ月で治療が終了できる)、薬が効きにくいタイプ(数ヶ月から年単位でゆっくりと改善する、もしくは治療が効かない)があります。いったん良くなっても再び悪化することもあります(再発といいます)。そのため、定期的な通院や検査が必要となり、処方された薬の服用を欠かしてはいけません。
- 上記のように、尿タンパクが多い状態が長い期間続くと腎臓の働きが低下し、進行すると透析治療や腎臓移植が必要となることがあるため、尿タンパクを減らすことができるかが重要になります。
追加の情報を手に入れるには?
- 一次性ネフローゼ症候群は国の難病に指定されていて、医療費助成制度の対象となります。
- 詳しくは、以下のwebサイトを参照してください。
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/45