糖尿病性腎臓病:症状は?検査や治療は?血液透析が必要になるの?
更新日:2020/11/11
- 腎臓専門医の春名 克祐と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が将来透析患者になるのでは?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 糖尿病性腎臓病は、糖尿病によって腎臓の機能が低下する病気です。
- 症状は尿の泡立ちやむくみ、息切れがあります。
- 糖尿病性腎臓病は、血糖や血圧をしっかりとコントロールすることで、進行を遅らせることができます。
- 肥満の解消や禁煙等生活習慣の改善も重要です。
- 腎機能が低下すると、最終的には透析になってしまいます。
糖尿病性腎臓病は、どんな病気?
- 糖尿病性腎臓病は糖尿病によって腎臓の機能が低下する病気です。
- 現在透析導入の原因 第1位の病気です。
- 糖尿病による腎臓の血管傷害により、通常はろ過されないタンパク質が尿中に漏れ出したり、逆にろ過されるべき老廃物が十分にろ過されなくなります。
- 腎臓の機能が低下すると、体のだるさ、食欲の低下、むくみや息切れなどが起き、最終的には血液透析が必要になります。
コラム:糖尿病性腎臓病の機序
- 糖尿病になると、エネルギー源であるブドウ糖が消費されにくくなり、血管の中は血糖が高い状態(高血糖)になります。
- 高血糖が続くと、血液中のブドウ糖が血管障害を引き起こします。血管が傷害されると眼や腎臓や神経など、血管が集中している臓器に大きな問題が生じます。これらを総じて糖尿病の3大合併症と呼ばれます。(網膜症、神経障害、腎症)。
糖尿病性腎臓病と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 糖尿病性腎臓病の病初期はほとんど自覚症状がありません。
- 初期に尿にわずかなタンパク質が出てきます。
- 病気が進行すると、むくみや息切れなどの症状が出てきます。
- 糖尿病を見てもらっている病院で詳しく調べてもらいましょう。
糖尿病性腎臓病になりやすいのはどんな人?原因は?
- 糖尿病性腎臓病は下記のような人になりやすいです。糖尿病になりやすい人が該当します。
糖尿病性腎臓病になりやすい人
- 糖尿病の人
- 高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を指摘された人
- 家族に糖尿病の人がいる人
- 糖尿病になってから10~15年以上経過してから発症することが多いとされています。
- 糖尿病患者全体の約30%~40%の人が、糖尿病性腎臓病を発症します。
どんな症状がでるの?
- 糖尿病性腎臓病の症状として下記のようなものがあげられます。
糖尿病性腎臓病の症状
- 尿の泡立ち
- むくみ
- 息切れ
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- はじめは、ごく少量のタンパク質が尿中に漏れ出します。この段階では自覚症状はほとんどありません。
- だんだん病期が進行して尿中のタンパク質が増えてきます。このころにはむくみや息切れなどの自覚症状があらわれることがあります。
- 更に進行すると、老廃物や余分な水分をろ過する機能が低下し、頭痛や吐き気などの自覚症状があらわれます。この時期になると透析治療が必要になります。
どんな治療があるの?
- 治療の基本は血糖と血圧のコントロールです。糖尿病性腎臓病は、血糖や血圧をしっかりとコントロールすることで、進行を遅らせることができます。早期に治療を行えば、改善も期待できます。
血糖のコントロール
- 糖尿病性腎臓病が軽い場合は、食事療法と運動療法が基本です。
- それでも血糖値が下がらない場合は、経口薬やインスリンなどの注射薬によって血糖値を下げます。
- HbA1c 7.0%未満が管理目標値とされます。
血圧のコントロール
- 食塩の制限に加えて、降圧薬を用います。
- 収縮期血圧130 mmHg未満かつ拡張期血圧80 mmHg未満を目標にします。
その他の治療
- コレステロールの治療や肥満の解消、禁煙も非常に重要です。腎臓の働きがさらに悪くなるとタンパク質の摂取制限も必要になります。
コラム:新たな治療
- 新しい糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬は、腎臓に対しても保護効果があると言われています。糖尿病性腎臓病の進行を抑える新たな薬剤として注目されています。
予防のためにできることは?
- 糖尿病性腎臓病の予防には、糖尿病の予防である生活習慣の改善が重要です。
- 減塩:塩分が多いと血圧が上昇します。腎臓への負担も増えてしまいます。
- 運動:有酸素運動をすることで血圧が安定します。血糖値やコレステロール値も改善します。
- 減量:体重を減らすことで血圧や血糖値が安定します。
- 禁煙:血圧を上昇させる一因になります。
- アルコール:過度の飲酒はひかえることが大切です。
追加の情報を手に入れるには?
- 糖尿病情報センター
- http://dmic.ncgm.go.jp/general/index.html
- 一般社団法人 全国腎臓病協議
- http://www.zjk.or.jp/index.html