ガングリオン:どんな病気?検査や治療は?手首や足におきるって本当?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医、手外科専門医の村上 賢一と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分にガングリオンができてしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさに症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診療の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- ガングリオンとは、手首や足などによくみられる、ゼリー状の物質が詰まったやや硬い腫瘤(はれもの、できもの)です。
- 注射針で腫瘤の中身を吸引して検査するか、MRIや超音波などの画像検査で診断します。
- ガングリオンと診断された場合、特に困る症状がなければそのまま治療せずに放置しても問題ありません。
- 強い痛みや手足のしびれなど、困る症状の原因になっている場合には、注射針による吸引や手術といった治療を行います。
- 治療の有無や種類にかかわらず、ガングリオンは治ったり再発したりする可能性があります。
ガングリオンは、どんな病気?
- ガングリオンとは、手足の関節の周りにできることが多い腫瘤(はれもの、できもの、しこり)の一種です。中にゼリー状の物質が詰まっています。
- ガングリオンは、身体中のどこにでも発生する可能性があります。特にできやすいのは、手首の甲側、手首の掌側の脈を触れるところ、手のひらです。足首(内くるぶしや外くるぶし)や足(足の甲、裏、ゆび)にできることも多いです。
- ガングリオンが神経を圧迫してしまい、手や足がしびれる、感覚がおかしい、動かしにくいなどの障害をきたす病気の原因になることがあります。
コラム:ガングリオンが原因になることがある病気
- 手や足のしびれ・感覚障害や運動障害をきたす病気として、ギヨン管(尺骨神経管)症候群(図1)、肘部管症候群、手根管症候群、足根管症候群などがあります。
図表1 ギヨン管(尺骨神経管)内に生じたガングリオン
T2強調というモードで撮影したMRI画像です。
ガングリオンのために尺骨神経が圧排されていることがわかります。
ガングリオンと思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 身体に腫瘤(はれもの、できもの、しこり)があることに気づいた場合、整形外科などの病院を受診されることをおすすめします。
- 悪性の腫瘍や、炎症を起こす病気など、注意が必要な病気ではないかを確かめていただくことが大切です。
受診前によくなるために自分でできることは?
- ガングリオンだった場合、ご自身でできることは特にありません。まずは病院で診断を受けてください。
ガングリオンになりやすいのはどんな人?原因は?
- ガングリオンは性別や年齢にかかわらず発生しますが、10代から30代の比較的若い女性に多いと言われています。
- 関節をつつむふくろ(関節包【かんせつほう】といいます)や腱をつつむさや(腱鞘【けんしょう】といいます)の性質が変化することにより生じると言われていますが、比較的若い女性に多いことの説明にはならず、詳細はわかっていません。
どんな症状がでるの?
- 腫瘤があることが気になるだけで、特に悪さをしないことも多いです。
- 腫瘤のあるところが痛むことがあります。
- 腫瘤のサイズが大きくなると、外見上の問題になる、近くの関節が動かしにくくなることもあります。
- 神経の近くに腫瘤ができた場合、神経が圧迫されて、手足のしびれや痛みを感じることがあります。
ガングリオンの腫瘤の特徴
- 腫瘤はやや弾力があって硬めのことが多い
- サイズは米粒大の小さなものから、ピンポン玉ほど大きくなることもある
- サイズは大きくなったり小さくなったり変化することがある
- 自然に消えることもある
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 視診、触診:まずはガングリオンが発生している場所や見た目、触感を確かめます。
- 穿刺:典型的なガングリオンが疑われた場合は、注射針を刺して内容物を吸引し、確認します。ゼリー状の内容物が吸引できればガングリオンと診断します。
- MRI、超音波検査:発生部位が典型的ではない、サイズが小さい、手のひらや足の裏など穿刺時の痛みが特に強い部位、神経の近くなどで、注射針を刺しにくい場合には、MRIや超音波検査などの画像検査を行います。
どんな治療があるの?
- 腫瘤の大きさが気になる、腫瘤の近くの関節が動かしにくい、痛みが強い、手足がしびれるなどの症状でお困りの場合には、治療が必要になります。
- 治療には、ガングリオンを切り取らない保存療法と、ガングリオンを切り取る手術療法があります。
保存治療
- ガングリオンの穿刺、ステロイド注入、強く圧迫して押し潰す、などの方法があります。
- 実施する時の痛みや、再発などの問題があります。
手術療法
- ガングリオンがある部分の皮膚を大きめに切り開き、腫瘤だけでなく、関節包や腱鞘の一部も一緒に切除する方法(切除術)、手首や足首の皮膚を小さく切り開き、関節専用の内視鏡を挿入して関節内を観察しながら、腫瘤につながっている関節包を切除する方法(関節鏡視下切除術)があります。
- いずれも感染、神経を傷つけたり、傷跡が残るなど、手術による合併症のリスクがあります。再発する可能性もゼロではありません。
治療は必要ないかもしれません
- ガングリオンは悪い病気ではないため、特に困る症状がなければ、そのまま放置することをおすすめします。
- 治療をしなくても自然に消えることがありますし、反対に穿刺や手術といった治療を行っても再発する可能性があるためです。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 保存療法と手術療法、どちらも再発の可能性があります。
- 手術療法では感染、神経を傷つける、傷あとが残るなどの合併症が起こる可能性があります。
予防するためにできることは?
- 残念ながら、予防のためにできることは特にありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- ガングリオンは治ります。ですが、治療の有無や種類にかかわらず再発することもあります。
追加の情報を手に入れるには?
- ガングリオンに関して、下記のページを参考にしてみてください。
- 日本整形外科学会
- (https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ganglion.html)
- 日本手外科学会
- (http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/5gangurion.pdf)
- 日本形成外科学会
- (http://www.jsprs.or.jp/member/disease/extremities_malformation/extremities_malformation_07.html)
もっと知りたい! ガングリオン
ガングリオンのあれこれ
- ガングリオンは英語でganglionとつづります。語源はギリシャ語で、「腱の近くの腫瘤」、という意味です。
- 手指の第1関節の手の甲側に発生するガングリオンは、粘液嚢腫と呼ばれます。水疱のように透きとおっていることが多く、ヘバーデン結節と呼ばれる変形性関節症に合併します。
- 皮膚の上から触ってもわからないくらい小さなガングリオンが、治りにくい手首の痛みの原因となっていることがあります。この病変はオカルト(潜在、ひそんでいる)ガングリオンと呼ばれます。