肩の痛み 五十肩?どんな病気?どうすればいいの?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医の山崎 博範と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分は五十肩かな?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 五十肩は、40~60歳の方が悩まされる、明らかな原因がないのに肩が痛む、関節が動かしにくいといった症状があらわれる病気です。
- 痛みが強い時期、肩が動かしにくくなる時期を経て、大多数の患者さんは自然に回復します。
- 病院では痛み止めのお薬や運動療法の指導を行います。
- 五十肩と症状が似ている他の病気もあるので、肩の痛みがあるときは病院を受診してください。
五十肩は、どんな病気?
- 40~60歳の中高年の方が悩まされる肩の痛み、いわゆる「五十肩」は、明らかな原因がないのに肩が痛む、関節が動かしにくいといった症状があらわれる病気です。
- 五十肩は症状に合った治療や運動療法を行うことで、痛みを軽減し、早く治すことができます。
コラム:五十肩の定義
- 広義の五十肩:50歳代を中心とした中年以降に、肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として明らかな原因なしに発症し、肩関節の痛みと運動障害を認める疾患群と定義されています。
- 狭義の五十肩:肩の酷使によって、炎症や損傷が生じやすくなり、痛み、可動域制限が起こると考えられています。この肩関節の炎症が関節周囲の筋肉に広がることがあり、このような肩関節周囲炎のことを五十肩と呼びます。
五十肩と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような症状がみられる場合は、かかりつけ医の受診を検討してください。
病院を受診したほうがよい症状
- 肩を動かすと痛い
- 夜眠れないほど肩が痛む
- 腕をあげようとしても上がらない、上げにくい
- 日々の生活がしづらい
- 3週間以上痛みが続く、痛みが強くなる
整形外科専門医の受診をおすすめする場合
- 次の動作がやりにくい、できない場合は、五十肩の可能性があります。整形外科専門医を受診しましょう。
五十肩チェック法
- 頭の後ろで両手を組む
- 腰の後ろで両手を組む
受診前によくなるために自分でできることは?
- 痛みが強い時は安静にしていただき、無理な動作をしないようにしてください。
- 自分の判断で運動することも控えてください。
- まずは医療機関を受診しましょう。湿布などの外用薬や鎮痛剤を使用することもあります。
五十肩になりやすいのはどんな人?原因は?
- 五十肩は、男女での差はほとんどなく、40~60歳代の方がなりやすいとされています。
- 明らかな原因がなく五十肩になる方もいます。肩関節が動かしにくくなる原因として、下記のことが考えられています。
肩の動かしにくさの原因として考えられること
- 年齢
- 軽いけが
- 糖尿病
- 頚椎症
- 甲状腺・心臓・肺疾患
- パーキンソン病や脳血管障害などの神経疾患
どんな症状がでるの?
- 五十肩の症状は肩の痛みと動かしにくさです。痛みや動かしにくさは、1年くらいかけて変化していきます。
コラム:五十肩の病期
- 急性期:発症~約3ヶ月。強い痛みがあるが、肩は動かせる。眠れないほど痛い。
- 拘縮期(慢性期):約3ヶ月~1年。痛みは治まり始める。肩が動かしにくくなる。ぐっすり眠れるようになる。
- 回復期:1~2年以降。痛みはほとんどなくなる。肩の動きが回復し始める。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 押して痛い部分や、肩の動き、動かせる範囲をみます。
- X線(レントゲン)撮影・MRI検査・超音波検査などの画像検査を行って、他の病気ではないことを確認し、治療方法を決めます。
コラム:五十肩の鑑別疾患
- 石灰(沈着)性腱炎
- 腱板断裂
- 上腕二頭筋長頭腱損傷
- 変形性肩関節症
どんな治療があるの?
五十肩の治療方針
- 五十肩の治療の目的は、肩関節の痛みを和らげることと、肩関節を動かせるようにすることの2つです。
- 薬物療法、運動療法、理学療法が中心になります。手術が必要になることはほとんどありません。
痛みを和らげるお薬
- 痛みを和らげるのに使うお薬には下記のものがあります。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs):のみ薬のほか、貼り薬(パップ剤、テープ剤)、塗り薬(軟膏)もあります。
- ステロイド剤と局所麻酔剤の混合液:痛みが強いときに肩関節に注射します。
- 高分子ヒアルロン酸ナトリウム:痛みが強いときに注射で使います。
病期に応じた治療法
- 急性期:安静にしていることが大事です。痛み止めのお薬や注射で痛みを和らげます。運動療法は行いません。
- 拘縮期(慢性期):痛み止めのお薬や注射で痛みを和らげることも行いながら、肩を動かす運動療法も少しずつ始めます。温めるのも有効です。
- 回復期:痛み止めのお薬や注射はほとんど使わなくてよくなります。運動療法により、肩を積極的に動かしましょう。
- なお、慢性期を過ぎても肩関節の動きが悪く、回復しない場合は、「関節鏡視下受動術」という手術を行うこともあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?
治療を受けた後に注意していただきたいこと
- 痛み止めの注射を行った日は、次のことに注意してください。
関節内注射後の注意
- 注射後当日の入浴はしない
- 注射したところをもんだり、不潔な手でさわらない
- 急に激しい運動をしない
- 温めすぎたり、冷やしすぎたりしない
日常生活で注意していただきたいこと
- 日常生活の中には、肩をひねったり、ねじったりする動作がたくさんあります。痛みがあるときは、とくに次のような動作をするときは肩に負担がかからないよう意識してみてください。
肩に負担がかかりやすい動作
- 高いところのものをとる
- 髪を洗う、髪を整える
- 重いものを持ち上げる
- 洗濯物を干す
- 窓を拭く
- 着替える
生活の工夫
- 着替えをするときのコツ:服を着るときは、痛い方の肩からそでを通します。脱ぐときは、痛くない方の肩から脱ぎます。前開きで、背中や腰にひもやファスナーのない服を選ぶとよいでしょう。
- 痛くて眠れないときのコツ:痛い肩を下にする場合は、肩の下に座布団やクッションを敷きます。痛い肩を上、または、仰向けに寝る場合は、枕などを抱えると痛みが和らぎます。
- 振り子体操:痛みが治まってきた時期に行うと、肩が動きにくくなるのを防ぐのに役立ちます。ご自分の状態に合わせて無理せず行ってください。
予防のためにできることは?
ストレスをためない!
- ストレスは肩の血行悪化につながります。気分転換をして、ストレスを解消しましょう。
肩を冷やさないようにしましょう!
- 夏は冷房や薄着などで肩を冷やすことが多くなります。肩を冷やすと血行が悪くなり、筋肉や腱などがこわばってしまいます。
- 肩の露出を避け、冷房や夜間、寝ている間の冷えには特に注意しましょう。
ふだんから、適度な運動を心がけましょう!
- 肩の運動不足解消のため、肩を回すなど、ふだんから時々肩を動かすようにしましょう。
- ふだんから無理のない範囲で積極的に体を動かすようにしましょう。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 五十肩は自然に治ることもあり、通常は半年~1年ぐらいで症状は良くなります。
- しかし、何もせずに放置すると、日常生活が不自由になるばかりでなく、肩が動かなくなってしまうこともあります。
- 痛みがあるときは、遠慮せずに病院に行きましょう。
追加の情報を手に入れるには?
- 五十肩に関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 日本整形外科学会ホームページより五十肩(肩関節周囲炎)