食物アレルギー:どんな食べ物で起こるの?検査は?治療で改善できるの?
更新日:2020/11/11
- アレルギーの研究をしている医師の海老澤 元宏と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分やお子さんが食物アレルギーかもしれない?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 食物アレルギーとは、食べたり、触れたり、吸い込んだりした食物に対して、体が免疫を介して過敏に反応したために起こる、体にとって不都合な症状のことを言います。
- 食物アレルギーの症状は、全身のあらゆる臓器にあらわれます。
- 食物アレルギーと診断されるためには、アレルギー専門医の元で、食物経口負荷試験などの特殊な検査を行うこともあります。
- 食物アレルギーの症状を起こさないためには、原因になっている物質を確定し、それを避けることが唯一の対応です。
食物アレルギーは、どんな病気?
- 食物アレルギーとは、食べたり、触れたり、吸い込んだりした食物に対して、体が免疫を介して過敏に反応したために起こる、体にとって不都合な症状のことを言います。
- 食物アレルギーには5つのタイプがあり、発症しやすい年齢、原因となる食物、症状もさまざまです。
- 原因の食べ物を摂った後、2時間以内にアレルギーの症状がでるのが典型的な食物アレルギー(即時型症状といいます)です。離乳食前後の赤ちゃんの下痢や嘔吐(新生児・乳児消化管アレルギーといいます)、子どもの皮膚炎(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎といいます)、運動した後に症状がでる場合(食物依存性運動誘発アナフィラキシーといいます)、原因の食べ物を食べた直後から口の中に症状がでる場合(口腔アレルギー症候群といいます)があります。
医療従事者向けコラム:免疫と不耐症
- 免疫には免疫グロブリンE (IgE抗体)、白血球の一種であるリンパ球などがあります。
- 食物不耐症(乳糖不耐症、ヒスタミン中毒など)は免疫を介さないため、食物アレルギーには含まれません。
食物アレルギーではどんな症状がでるの?
- 食物アレルギーでは、全身のあらゆる臓器に症状があらわれます。とくに皮膚や粘膜に症状がでることが多いです。
- 最悪の場合にはアナフィラキシーショックを起こし、生命の危険を伴うこともあります。
皮膚の症状
- 赤みがでる、じんましんがでる、腫れてくる、かゆくなる、熱くなってくる、湿疹などがあります。
粘膜の症状
- 眼にあらわれる症状:白目が充血する、腫れる、目がかゆくなる、涙が出る、まぶたが腫れるなどがあります。
- 鼻にあらわれる症状:鼻水がでる、鼻がつまる、くしゃみが出る。
- 口の中・くちびるに現れる症状:舌がかゆくなる、口の中に違和感がある、くちびるが腫れる。
呼吸器の症状
- 喉に違和感がある、喉がかゆい、喉が締め付けられる感じがする、声がかすれる、飲み込みにくい、咳がでる、息をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする、胸が締め付けられる感じがする、息苦しくなる、唇や爪が青白くなる(チアノーゼ)などです。
消化器の症状
- 気持ちが悪くなる、吐いてしまう、お腹が痛くなる、下痢、血便などです。
神経の症状
- 頭が痛い、元気がなくなる、ぐったりする、不機嫌になる、意識がもうろうとする、尿や便を漏らしてしまう(失禁)などです。
循環器の症状
- 血圧が低下する、脈が速くなる、脈が触れにくくなる、脈が不規則になる、手足が冷たくなる、顔色・唇や爪が白くなる(末梢循環不全)などが挙げられます。
アナフィラキシー
- 食物などの原因物質が体に入ったときに、複数の臓器で全身にアレルギー症状が起こり、生命に危険を与えかねない状態のことをいいます。
- アナフィラキシーが起こり、さらに血圧が低下して意識の障害がある場合はアナフィラキシーショックとなります。
食物アレルギーはどうやって診断されるの?
- 食物アレルギーと思われる症状があったとき、原因の食物や診断を確定するために医療機関を受診してください。
- ある食物を食べて同じような症状が繰り返し起こった場合、さらにアレルギーの検査などで免疫反応が関与していることが確定した場合に、食物アレルギーと診断されます。
- なお、食物に対するIgE抗体の検査はどの医療機関でも実施可能ですが、この検査が陽性だからといって、食物アレルギーとはならないためご注意ください。
- 診断がつかない場合には、アレルギー専門医の元で、食物経口負荷試験などの特殊な検査を行うこともあります。
医療従事者向けコラム:食物アレルギーの症状と確定診断
- 食物摂取後に前述したような症状が誘発された場合は食物アレルギーを疑いますが、それらの症状があれば必ず食物アレルギーであるとは言えません。
- 例えば、食物アレルギーで蕁麻疹は誘発されますが、じんましんの原因としてアレルギーは10%未満なのです。
- 免疫反応が関与していることが確定しなければ、食物アレルギーと診断することはできません。
どんな治療があるの?
- 食物アレルギーの原因になっている物質を確定し、それを避けることが唯一の対応になります。
- ただし、調味料、出汁、油などまで避けようとするととても大変で、生活の質も悪化してしまいます。過剰な除去にならないようにすることも大切です。
- 加工食品にはアレルギー表示がされていますので、表示を確認してください。
- お子さんに多い鶏卵・牛乳・小麦・ピーナッツなどの食物アレルギーは、食物経口負荷試験で症状が出ない範囲で摂取をします。生活の質がよくなり、予後の改善にもつながると考えられています。
医療従事者向けコラム:経口免疫療法
- 専門医療機関で研究段階の治療ですが、経口免疫療法という治療が検討されています。
- 症状が出ない量から摂取を開始し、計画的に摂取を継続しながら増量していきます。
- より多くの量が摂れ、誤食による症状誘発を防げる可能性も模索されています。
予防のためにできることは?
小児の即時型症状の予防
- ピーナッツと鶏卵でハイリスクの方でも、乳児期からそれらの食品を避けすぎない方が良いとされています。
- つまり、症状がなければ、できるだけ原因になりうる食物を摂るようにすることが予防につながります。
- また、ハイリスクの乳児は湿疹があることが多いです。湿疹を適切に治療し、管理することが大切です。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- 原因の食品を摂取したら、2時間程度は安静に過ごしてください。
- また、あらかじめ運動することが分かっている場合には、原因の食品を摂らないようにすることで予防できます。
薬物の携帯
- 食物アレルギーの症状が出たときに使用する薬物をいつも携帯しておくことも大切です。
- 特にアナフィラキシーを起こしたことがある方や、アナフィラキシーが起こる可能性がある方は、アドレナリンの自己注射薬(エピペン®)を常に携帯しておくことをおすすめします。
もっと知りたい!食物アレルギー
食物アレルギーには、どんな種類があるの?
新生児・乳児消化管アレルギー
- 主に非IgE抗体依存性(リンパ球依存性)の機序により、新生児・乳児に嘔吐や血便、下痢などの消化器症状で発症するタイプです。
- 原因としては人工栄養(牛乳)が多いです。
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎
- 乳児アトピー性皮膚炎に合併して認められる食物アレルギーで、食物に対するIgE抗体が陽性になり、食物が湿疹の増悪に関与しているタイプです。
- しばしば、原因食物の摂取によって即時型症状を誘発することもあります。
- ただし、すべての乳児アトピー性皮膚炎に食物が関与しているわけではありません。
即時型症状
- 食物アレルギーの最も典型的なタイプです。
- 原因食物を摂取した後、通常2時間以内にアレルギー反応による症状を示すことが多いです。
- 原因食物は小児では鶏卵、牛乳、小麦が多く、学童期にはピーナッツ、木の実、果物が増え、成人では甲殻類、魚類などが多く認められます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- 原因食物を摂取した後に運動することによってアナフィラキシーが誘発される病型で、原因食物摂取から2時間以内に誘発されることが多いです。
- 学童期から成人期に多く認められます。
- 感冒、睡眠不足や疲労などのストレス、月経前状態、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)摂取、アルコール摂取や入浴なども発症の誘発因子となります。
口腔アレルギー症候群
- 口唇・口腔・咽頭粘膜におけるIgE抗体を介した即時型アレルギー症状を呈する病型です。
- 食物摂取直後から始まり、口唇・口腔・咽頭のかゆみ、イガイガ、血管浮腫などをきたします。
- シラカバやハンノキ花粉と関連して、バラ科の果物や野菜の摂取により口腔アレルギー症候群を来すことがあります。ブタクサやイネ科の雑草の花粉症とウリ科の果物でも同様です。
食物アレルギーの症状にはどんな治療をするの?
- アナフィラキシー:アドレナリンの筋肉注射を行います。症状によっては、救急車で緊急に医療機関を受診する必要もあります。
- 皮膚・粘膜症状:抗ヒスタミン薬の内服(または経静脈投与)を行います。
- 呼吸器症状:気管支拡張薬の吸入、効果が無ければアドレナリンの筋肉注射を行います。
- アレルギー症状が遷延する場合:ステロイド薬(内服または経静脈投与)を使用します。