乳幼児・小児の発熱:どんな症状? 原因やリスクは? 自分で対処する方法は? どんなときに医療機関を受診すればいいの?
更新日:2020/11/11
著者田原 卓浩 | 医療法人社団 たはらクリニック
監修岡 明 | 埼玉県立小児医療センター 病院長
- 小児科専門医の田原 卓浩と申します。
- とつぜんお子様が発熱したり、ひどい高い発熱が何日も続いたりすると、心配になりますよね。「何か悪い原因で起こっているのではないか?」と心配されたり、「病院に行ったほうがよいかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、お子様の発熱の一般的な原因や、ご家族による適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしいこと」、「本当はゆっくり説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 感染症に伴う発熱は、からだの防御反応です。
- 元気であればご家庭でのケアで対処できますので、熱を下げるお薬(解熱薬【げねつやく】)を常備しておくことが大切です。
- 感染症以外の病気でも発熱を繰り返すことがあります。その場合でも、治療方針に影響がないときは解熱薬を使うことがありますので、解熱薬を手の届くところに保管しておいてください。
- 熱が上がるときには手足が冷たくなって寒がることがありますので、このタイミングでは、冷たい手足、からだを温めてください。
- いったん熱が上がってしまうと汗ばんできますので、そのときはもう温めずにクーリングと着替えをさせてください。
- 解熱薬による効果は5~8時間と限定的ですので、再び発熱することを想定しておいてください。
- 不快感が薄れてご機嫌がよくなり、食欲が少しでも戻ったら水分や糖分の補給をしてください。
- いろいろな対処(ホームケア)の手を尽くしても発熱とそれに伴う症状が続いて、お子さまのつらい様子が続くときには医療機関を受診してください。
- 受診後解熱して元気になると続いての医療機関の受診プランを忘れてしまうことがありますが、解熱しても再度の受診が必要かどうかを確認しておくと安心です。
どんな症状があるの?
- 体温が37.5度以上を発熱と定義しています。
- 体温計に表示される数字を基準にしますが、365日24時間そばにいらっしゃるご家族が何となく元気がないと感じられる場合には発熱の前兆となりえます。
- 発熱すると、機嫌が悪くなったり、元気がなくなったり、赤ら顔になったりします。
- 乳幼児(特に0、1、2歳)は環境(気温・室温)の影響を受けやすいため、すずしい場所でもう一度体温を測ってみるようにしてください。
- 集団保育の場では多くの子どもたちが生活していて熱気に包まれていることもあります。
- 発熱の連絡を受けてお迎えに行って帰宅したときにもう一度体温を測ってみると平熱ということもよくあります。
どんな原因があるの?
- 発熱にはさまざまな原因(原因となる病気)があり、最も頻度の高い原因は感染症です。
- 感染症の原因は、細菌、ウイルスなど多種多様です。
- 発疹【ほっしん】をともなうときは、発疹の形態が診断に役立つことがありますので写真を撮っておくようにしてください。
- 川崎病、熱中症(脱水症も含める)、お薬のアレルギーも発熱の原因になります。
- そのほか、脳神経系の異常や免疫システムの異常によっても発熱します。
- 意外に多いのは予防接種後の発熱で、ワクチンの種類によって発熱の頻度に差がありますが、予防接種当日、翌日、翌々日は発熱が一定の頻度で認められます。
どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの? 医療機関の選び方は?
かかりつけ医を受診したほうがいい場合
- 発熱に加えて、次のような症状があったらかかりつけ医を受診してください。
- 発疹
- 咳
- 痛み(頭痛、胸痛、腹痛、関節痛、耳痛など)
- 下痢
- 尿量の減少
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- 発熱の原因をはっきりさせておくことが大切です。
- 生後3~4か月までは一般的に発熱することはとてもめずらしく、この月齢で発熱があった場合にはほかの症状のあるなしにかかわらずかかりつけ医を受診してください。
- 現在のワクチンデビューは生後2か月ですので、生後3~4か月でも予防接種当日、翌日、翌々日に発熱があった場合には、あわてずにかかりつけ医を受診してください。
- けいれん(ひきつけ)は、短時間で止まったと思っても手足が硬いと感じたり、けいれんが5分以上止まらないときにはすぐに医療機関を受診してください。
救急車を呼んだほうがいい場合
- 通常37.5度以上を発熱と表現しますが、体温の高い低いは別にして、次のような症状があったら救急車を呼んで医療機関を受診してください。
- 意識(呼びかけに対する反応)レベルが低下している
- けいれんが5分以上止まらない(あるいは止まったかどうかわからない)
- 咳【せき】などのために呼吸が不規則
- おう吐が止まらない
- 出血している
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お子様の発熱に対して、よくなるために自分でできることは?
- 発熱すると、頭痛や関節痛などの痛み、嘔吐/嘔気、だるさ、発汗に加えて、発熱の原因となっている疾患(病気)特有の症状(肺炎であれば咳、胃腸炎であれば下痢)を伴い、どれも子どもたちに不快感を与えてしまいます。
- 発熱を一時的に取り除くことによって不快感をやわらげることができます。
- 前述しました対策(クーリング、水分補給、着替え、解熱薬)をご家庭でなさるとよろしいと思います。
- 解熱薬の効果はあくまでも一時的ですので、使用後数時間経つと再び使用前と同じレベルの体温に戻ってしまうことも想定しておいてください。
- 不快感が軽くなると、ご機嫌もよくなり、水分や食事をとれるようになります(これが解熱薬を使用する目的)。
- 高熱でもお子さんが元気でニコニコしているときは、解熱薬を使用する必要はありません。
- 電子体温計ではデジタル表示で数字が変化しますが、数字の上下動に一気一憂すると、お子さんの表情や仕草、そしてどうしてほしいかを感じる親・保護者のセンサーがはたらかなくなりますので、気をつけてください。
お医者さんではどんな検査が行われるの?
- 問診:次のようなことに答えられるようにしておいてください。
- いつからの発熱か(どのくらい続いているか)
- 集団保育/幼稚園/学校に通っている場合、ほかに発熱している子どもがいるか
- 兄弟の有無と兄弟の様子
- 食欲・尿量の変化の有無
- 発熱を繰り返すかどうか
- 暑い場所にいたかどうか
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- 診察:次のようなお子さまが表現している症状を確認します。
- 聴診、触診、打診、喉のチェック、耳(鼓膜)のチェックをします。
- 血液検査、感染症の抗原迅速検査、培養検査、レントゲン撮影などの画像検査:必要に応じて行います。
どんな病気のことが考えられる?(医療従事者向けの詳細情報)
- 乳幼児の発熱の原因(病気)としては次のようなものが考えられます。
- 感染症
- 川崎病
- 薬物アレルギー
- 異常高体温を示す疾患群(横紋筋融解を伴う)
- 熱中症、悪性高熱症、(向精神薬)悪性症候群
- 中枢性発熱
- 自己免疫性疾患(JIA、RFなど)
- 自己炎症性疾患(PFAPA、家族性地中海熱、高IgD症候群など)
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- 慢性反復性発熱の原因としては次のようなものが考えられます。
- 自己免疫性疾患
- 悪性腫瘍
- 中枢性発熱
- 自己炎症性疾患
- 無痛無汗症
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追加の情報を手に入れるにはどうしたらいいの?
- 日本小児神経学会の「熱性けいれん診療ガイドライン2015」が以下のページで参照できます。
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0212/G0000775