脳波(EEG):どうやって測るの?何が分かるの?異常と言われたら?
更新日:2022/05/20
- 日本臨床神経生理学会専門医・指導医の坂本 崇と申します。
- こちらをご覧になっている方はご本人やご家族友人が脳波検査を受けることになったのでしょうか、頭の中の問題・その検査というといろいろご心配が出てきますね。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は理解していただきたいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 頭に電極をつけて脳の神経細胞の電気活動を評価する検査です。
- てんかんや意識障害の方に必須の検査です。
- 痛みやリスクはまずありません。
どんな検査?
- 脳波検査とは、脳の神経細胞が働くときにでる電気的変化を、頭皮に付けた電極から記録して、脳の神経の働きを調べる検査です。
- 脳の神経細胞の働きを評価する検査ですので、脳神経細胞が働くことで出る電気活動が異常に興奮している状況や逆に低下している状況を評価します。
- 脳の神経細胞の発達によって電気活動は異なってきます。したがって乳児・幼児・小児と成人では脳波自体も異なってきます。発作波とともに、それぞれの年齢に応じて、正しいときに正しい波が出ていることを観察します。
- 健常成人では、安静時に目を閉じた状態、開けた状態、熟睡中でそれぞれ特徴的な脳波が検出されます。
- 頭に電極をつけて、仰向けに寝た姿勢で脳波の測定を開始します。検査中は、目の開閉・深呼吸・光や音の刺激を負荷して波形の変化をモニタリングしていきます。睡眠中に、あるいは薬剤を投与して検査することもあります。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 脳波検査は、てんかんや睡眠・意識障害など脳の疾患が疑われる人が受けることが多いです。
てんかん
- てんかんは脳の神経細胞が異常に興奮することが原因であり、その評価に脳波検査は欠かせません。てんかん波と呼ばれる異常放電が頭のどの部分にどのようなタイミングで出現しているのかをみることができます。
- また、治療の過程でその波が少なくなったか、などの経過観察にも有用です。
- てんかんに限ったことではありませんが、一回の脳波検査で異常が分かるとは限りません。一定期間のモニタリングが必要です。
意識障害
- 脳の神経細胞の働きが低下(活動性低下)すると、意識状態が悪くなります。原因を問わず、意識障害の患者さんの評価にも脳波検査は有用です。
- 活動性低下は遅い波(徐波)として現れます。徐波が頭のどこにあるのか、全体にあるのか、一部にあるのかで実際の神経細胞のダメージを評価します。
- 意識障害の原因は比較的急に発症する中枢神経感染症や頭部外傷があります。
- 認知症では、意識障害まで来たさないものの、ゆっくりと脳機能の低下が見られることがあります。その症状が、脳波上では、徐波の増加として観察することができます。
- いわゆる脳死では脳の神経細胞の活動停止をあらわして、脳波が平坦化します。この所見は脳死判定において必須となっています。
実際には、どんなことをするの?
- 脳波検査では、22個の電極を頭全体につけます。このほか、筋肉の動きを拾う電極を2個と、呼吸を調べるレスピレーターを鼻につけます。
- 静かな部屋に横になってもらいます。
- 起きているときと(場合によっては)寝ているときの脳波を測定します。眠りにくい方では睡眠薬をあらかじめ飲んでいただくこともあります。
- 起きているときに、目を開けたり閉じたりする行為や、目の上方30㎝で光をピカピカ放つ刺激をしたり、4分間深呼吸をしてもらう等して、脳波を20分位記録します。
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 脳波検査は、通常であれば30分程度要します。検査中に刺激や負荷を行うと検査時間がさらに必要となります。
- 長時間の観察が必要な場合には、電極を取れないようにキャップ等で保護をして、頭皮に電極をつけたまま一定の時間を過ごすことになります。そのときは少し圧迫感を感じる場合もあります。
- 痛みを感じることはほぼありません。
- この検査は、患者様に電気刺激を与えるものではありませんので、電流が流れて不快に感じることはありません。また、繰り返し検査しても問題ありません。
他にどのような検査法があるの?
- 脳波検査に代わるものとして脳磁図(のうじず)があります。これは神経細胞の電気活動の発する磁場を捉えて画像化する検査です。
- 設備が大型になりますので行える施設が限られており、現在ではどちらかというと研究のための使用が多くなっています。
理解しておきたい リスクと合併症
- 脳波検査のリスクや合併症はまずありません。電気ということで多くの皆さんが感電の危険を心配されるかもしれませんが、それは全くといってよいくらい可能性がありません。
- 合併症を強いてあげるならば、電極をつけるためのペーストによるかぶれがあります。これは別の種類のペーストに変えるなどで対応可能です。
検査後の注意は?
- 負荷の影響で眠気等が残る場合には検査後もしっかり休息するなど注意が必要です。車の運転は控えてください。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- 脳波検査自体の影響はありません。
- 検査中の負荷の影響で眠気やふらつきが残る場合があります。次回以降の検査への影響を回避するために、そのような状況があれば主治医に伝えてください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 日本てんかん学会のホームページでてんかんの診療ガイドラインを見ることができます。
- http://square.umin.ac.jp/jes/epilepsy-detail/guideline.html