心電図(ECG:Electrocardiogram):心電図って何? どんなことがわかるの?
更新日:2020/11/11
- 群馬大学で循環器内科を担当しております飯塚 貴士、金古 善明と申します。
- このページに来ていただいた方は、不整脈の疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのか知りたいと考えていられるかもしれません。
- 代表的な検査方法である心電図検査について理解する上で、役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」について記載しています。
目次
まとめ
- 心電図とは、心臓が自ら作り出している電気信号の「大きさ(強さ)」と「向き」を、目に見えるように記録したものです。心電図を見れば、その時の心臓の状態を推測することができます。
- 心電図に記録する「向き」と時間の長さから、12誘導心電図やホルター心電図などの種類があります。
- ご自身で脈を確認できるようになっておくことや、健康診断などで12誘導心電図を測っておくことをお薦めします。
心電図って何?
- 心臓は血液を全身に送るため、1日平均10万回動いています。心臓を動かそうと意識しなくても、心臓は自ら電気を作って送りだしているのです。この心臓の動き(拍動【はくどう】といいます)を、目に見えるように記録したものが心電図です。
- 心電図には、心臓が作って送り出す電気信号の「大きさ(強さ)」と「向き」が記録されます。
心電図にはどんな種類があるの?
- 心電図には、心臓が作り出す電気信号の「向き」と記録する時間の長さによって、いくつかの種類があります。
12誘導心電図
- 健康診断などで最も一般的に行われている心電図検査です。電気信号を12か所の方向から記録するため、12誘導とよんでいます。
- 手足と胸に電極をつけて記録します(図1)。
図表1 12誘導心電図
手足と胸に電極をつけて記録する心電図です。
ホルター心電図
- 2方向(種類)の心電図を、24時間記録する心電図検査です。中には12誘導を記録できるものや、2週間記録できるものもあります。
- 胸に電極をつけたまま、24時間過ごしていただきます。入院する必要はありません。
心電図ではどんなことがわかるの?
- 心電図検査をすると、そのときの心臓の状態を推測することができます。また、不整脈の診断もできます。
- ただし、心臓の病気は別の検査も行わないと診断できないものが多くあります。ですから、あやしい症状があった場合は、心電図検査の結果をふまえて、次にどんな検査を行えばよいのかなどを検討していきます。
心電図検査でわかること
- 心臓が動く回数(脈拍数といいます)は正常か?
- 心臓が動くリズム(調律といいます)は正常か?
- 余分な電気信号は出ていないか?もし出ていれば、それはどこから出ているのか?=>不整脈かも?
- 心臓の壁(筋肉)の厚さは正常か?=>心肥大かも?
- 心臓に負担がかかっていないか?=>心不全かも?
- 心臓の血管が狭まったりつまっていたりしていないか?=>狭心症や心筋梗塞かも?
どんなときに心電図検査を受けたらよいの?
- 下記のようなときに、医療機関の受診を検討してください。
かかりつけ医もしくは近医への受診が望ましい場合
- 急に胸がドキドキすることが時々ある
- 階段を上るときなど、運動しているとき胸が痛いことがある
- 安静にしているのに胸が痛いことがある
- 胸がドキドキするのがおさまらない
- 安静にしているのに脈拍数が異常に多い(1分間に120回以上)、もしくは異常に少ない(1分間に50回未満)
- 明らかな原因がないのに失神したことがある
- 近い親族の方で、45歳より若いうちに、明らかな原因がないのに突然亡くなった方がいる
- めまいやふらつきが起こることがある
- 次のようなときは緊急の場合がありますので、救急車を呼ぶことも検討してください。
救急車を呼ぶ場合
- 胸の痛みがあり、冷や汗が出て、よくならない場合
- 脈拍が非常にゆっくり(2秒に1回くらい)になり、めまいがして、よくならない場合
- 安静にしているときの脈拍が非常に早く(1秒間に3回程度以上)、めまいやふらつきもある場合
もっと知りたい!脈のこと
動悸≠不整脈:危険な動悸って?
- 動悸【どうき】とは、「心臓の拍動(心拍)を不快に感じること」と定義されています。また、動悸には心配のないものと危険なものが存在します。
- 例えば階段を駆け上がったり、会議や発表会などで緊張したりするとドキドキしますよね。それは運動したり緊張したりした結果の正常な反応で、心配はありません。
- 病気があることを示す危険な動悸もありますが、「胸がドキドキする=動悸を感じる」からといって、必ず不整脈というわけではありません。心配な動悸がある場合は、かかりつけの医師にご相談いただくとよいと思います。
検脈できるようになろう!
- 「検脈【けんみゃく】」とは、皮膚の上から動脈の動き(脈拍【みゃくはく】といいます)を感じて、観察することです。脈拍触診【みゃくはくしょくしん】ともいいます。脈拍は、心臓の拍動を示しています。
- 不整脈は突然起きて突然止まってしまいます。不整脈があったから病院に来たけれど、病院の心電図検査では何も起きない、という患者さんがほとんどです。
- 不整脈が起きたときに必ず近くにいる人、それは自分自身です。ですから、ご自身でどのような不整脈なのかをその場で確認していただき、病院でお伝えいただくと、診断の際に非常に役立ちます。
検脈の方法
- 利き手の人差し指~薬指の3本を使います。
- 反対側の手首の親指側で、血管の動きが感じられるところを探します(図2)。
- 「拍動が規則正しいか?」と「1秒間に何回?もしくは何秒間に1回?」を評価してください。余裕があれば、「1分間に何回拍動しているか?」を確認されるとよいでしょう。
fig_h00321_02
図2
図表2 検脈の方法
平常時12誘導心電図検査のすすめ
- 身長や体重、顔の形などが人それぞれ違うように、正常な心電図の波形も人それぞれ異なります。また、同じ人であっても、正常な心電図の波形は年々少しずつ変化していきます。
- そのため、気になることがあって医療機関を受診された際に、『その人の正常な心電図の波形』があれば、それと比べることで格段に異常を見つけやすくなります。
- 成人されたら数年に1度、定期健診や人間ドックの際に、12誘導心電図検査を受けていただくことをお薦めします。