CT(造影を含む):どんな検査?検査を受けるべき人は?検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2020/11/11
- 放射線診断専門医の吉満 研吾と申します。
- 現在広く用いられる画像診断であるCT検査について情報をまとめてみましたのでお役にたてると幸いです。
- 私が日々の診察の中で、「よく質問を受けること」、「特に気を付けてほしいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- CT(コンピューター断層撮影)検査とは、放射線の一種であるX線を用いて体内の様子を見る検査です。
- 検査中はわずかな機械音がしますが、痛みも何も感じません。
- 造影剤を用いる場合は、熱っぽい感じがある場合があります。
- 一般にMRIよりも短時間(長くても10数秒の息止めを数回繰り返していただく程度)で済む検査です。
- 安全な検査ですが、X線の被曝、および造影剤を用いる場合はその副作用の可能性が皆無ではありません。
- 外来でも入院でも検査できます。
どんな検査?
- CT(コンピューター断層撮影)検査は、放射線の一種であるX線を 用いて体内の様子を見る検査です。
- X線の通りにくさを白、黒、灰色で色付けして像を作っています。
- 一般には輪切りのような像(横断像と言います)で観察しますが、コンピュータで処理することで立体的に観察することもできます。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 体の中に何か異常が疑われる時は、どなたでもCTを受けて構いません。ただ、X線被曝などの副作用が皆無ではないので、過度に繰り返し受けることはお薦めできません。
- 血液検査などの他の情報を良く検討して本当に必要な場合に、主治医の先生がCT検査をオーダーします。
- 検査内容によっては、検査前の食事を抜いたほうがよい場合があります。
- X線が当たる部位に金属類を身に着けている場合は、検査の前に取り外します。
CT検査を受けられない方
- 以下の様な方は造影剤の使用の有無に関わらず検査を受けられないかもしれないので、担当医もしくは放射線技師にお尋ねください。
CT検査を受けられない方
- 心臓ペースメーカーなどの精密機器が体内に埋め込まれていて、その近くを詳しく検査する場合
- 小さなお子さんなど、じっとしていることができない場合
- 極度の閉所恐怖症の方
- 造影CT検査の場合は、造影剤に関連した制限があります。以下の人は検査が出来ない場合があります。
造影CT検査ができない方
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある方
- 過去にヨード系造影剤に対するアレルギーがあった方
- 喘息と言われたことがある方
- アレルギー体質や、アレルギーの病気がある方
- ヨード過敏症の方
- 腎臓の働きが悪い方
- 経口糖尿病薬(ビグアナイド系)を飲まれている方
実際には、どんなことをするの?
- 小さなベッド(写真の左、手前)に寝て、ベッドごと大きなドーナツ状のトンネル(写真右、奥)の中に入ります。放射線技師が部屋の外からマイクで声をかけますので、指示に従ってください。トンネルの中でX線が出て体の内の様子が観察できます。
- 検査の間は、モーターのような機械音が聞こえます。
ヨード造影剤
- CT検査では腕の血管(静脈)から注射します。
- 造影剤を注射すると全身、特に顔から上半身に熱感を感じることが多いですが、数秒で収まりますので問題ありません。驚いたり、心配したりしないでください。
- ただまれに体の様々な部位に皮疹が出てかゆくなったり、気分が悪くなったりすることもありますので、何か異常を感じたらすぐに放射線技師や看護師にお知らせ下さい。
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 検査時間は、内容によりますが、通常数分以内から10分弱、長くても30分ほどで終わります。
- CT検査自体では痛みも何も感じません。造影剤を用いると熱感を感じることがあります。詳しくは前項を参照ください。
- 検査中に体を動かすと画像が乱れてしまいますので、じっと動かないようにしておく必要があります。十数秒程度の息止めをお願いすることもあります。小さなお子さんなど、じっとできない場合には、事前に鎮静剤などを使って眠ってもらう場合もあります。
- 費用は、施設の状況で多少異なりますが、保険診療の3割負担では、単純CTで5000~6000円前後、造影CTで10000円前後です。
他にどのような検査法があるの?
- 他に体の中を画像化する方法としてはMRI検査、超音波検査があります。それぞれCTと比べて長所と短所があります。
MRI(核磁気共鳴画像)検査
- MRI検査では、CTと似たような断面画像が得られますがCTとは以下の点が異なります。
- CTと違い、磁石の力を利用しますので、放射線(エックス線)被爆はありません。
- 一般に、CTよりもMRIのほうが体内の状態が詳しくわかります。
- 一般に、CTよりもMRIのほうが時間がかかります(30分から1時間弱)。
- 磁石の力を応用するので、様々な制限があります。詳しくはMRI検査の項を参照ください。
超音波(エコー)検査
- 体に超音波を当てて、音波がはねかえる様子をもとに断面画像を作ります。
- 放射線被爆はありません。また磁石や電波も使いません。
- 一般に、短時間で済みます。
- 体の深い所や、骨や空気で囲まれた場所はよく見えません(頭の中や肺など)。
- 検査者の技量によってはよくわからないことがあります。
理解しておきたい リスクと合併症
X線被曝による障害
- 通常のCT検査に用いるX線の量は、体には影響がないレベルです。使用する放射線も、診断に必要な最低限の量しか用いていません。ただし、繰り返し検査を行う場合は医師と相談してください。
造影剤による障害
- CT検査に用いられる造影剤は、人によりアレルギー反応を起こすことがあります。弱いアレルギーでは湿疹が出たり、一時的に気分不良を起こしたりするぐらいですが、強いアレルギーではショック状態になったりします(40万人に一人程度)。まれに造影剤使用後10日ほどして湿疹が出現することもあります。
- また、造影剤は不要物として腎臓から出され、ごく軽度ですが腎臓に負担をかけます。元々腎機能が低下している方に造影剤を用いると、腎機能障害を悪化させることがあります。通常は検査前に血液検査をして腎機能が悪くないことを確認してから検査しますので、問題になりません。
- 飲み薬の糖尿病治療薬の一部(ビグアナイド系)を使用している人にヨード造影剤を用いると「乳酸アシドーシス」という重篤な状態になる可能性があるため、検査前にこの薬を中止する必要があります。糖尿病のお薬を飲んでいる方は、主治医の先生もしくは担当医にご相談ください。
- 造影剤を注射するときに、血管の外に漏れてしまうことがあります。腫れたり痛みを伴うことがありますが、通常は時間が経てば自然に吸収されます。まれに狭い場所で多量の造影剤が漏れた場合に、周囲の血管や神経を圧迫して組織に障害が出ることもあります。その場合には注射をしたり切開手術が必要になる場合もあります。
検査後の注意は?
- 造影剤を使わない単純CT検査では、検査後特に気を付けることはありません。通常通り生活してください。
- 造影CT検査の場合は以下の2点、注意することがあります。
造影CT検査後の注意点
- 造影剤の腎臓への影響を軽くするために、検査後は水分を多めにとって造影剤を尿から出しやすくすることです。検査後、脱水になったり、長時間トイレに行けないような状況は避けて下さい。
- 時間が経ってから現れる副作用(アレルギー反応)にも注意してください。これについては次項を参照ください。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- 造影剤を使った場合には、副作用に気をつける必要があります。多くは注射の直後に起こりますが、時間が経ってから現れる副作用(アレルギー反応)もまれですがあり得ます。これは、30分後から数日後に、発疹や吐き気などで表れることが多いです。
- 検査の後に、皮膚のかゆみや痛み、発疹や色の変化、吐き気、息苦しさなどの症状が現れた場合には、検査をした施設に相談してください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- CT検査、X線被曝、造影剤等について、より詳しい情報やガイドラインについて知りたい方は下記のウェブサイトを参照してください。
- http://www.radiology.jp/content/files/690.pdf
- http://www.radiology.jp/content/files/20150418_x-ray_ct_guideline.pdf
- http://www.radiology.jp/content/files/iodine_guideline_d.pdf
- http://www.radiology.jp/member_info/safty/20181115.html
- http://www.radiology.jp/member_info/safty/20190627_01.html