血痰:どんな病気が原因になる?血痰に伴う心配な症状は?病院受診のタイミングは?
更新日:2020/11/11
- 呼吸器病内科を専門としている原 悠、金子 猛と申します。
- とつぜん血痰がでると、心配になりますよね。何か悪い病気ではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になるかもしれません。
- そこでこのページでは、血痰の一般的な原因や、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「正しく理解してほしいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 血痰【けったん】とは、血液が混じった痰のことです。また、肺や気道から出血した血液そのものが口からでてくることを喀血【かっけつ】といいます。
- 血痰は、かぜなどの急性の呼吸器感染症が原因のことが多いですが、肺がんや肺結核などの重大な病気が原因となることもあります。血痰が出た場合は、専門医を受診することをお勧めします。
- 喀血が止まらない場合と、息が苦しい、胸が痛いなどの症状を伴う場合は救急車を呼んでください。そうでない場合でも、早急に診断と治療を受けてください。
血痰とは?
- 血痰【けったん】について理解していただくために、空気の通り道である気道と痰について説明させてください。
- 気道は普段、ヌルヌル、ネバネバした液体(粘液【ねんえき】といいます)に覆われて守られています。気道に炎症が起きると、粘液がたくさん作られます。気道にたまった粘液などの分泌物が咳で吐き出されると、「痰」と呼ばれます。
- 炎症が起こっている気道の表面では、細い血管が増えており、そこを流れる血液の量も増えています。咳などの刺激で血管が傷つくと、少量の出血が起きてしまいます。こういった血が「痰」に混じると、「血痰」と呼ばれます。
- 肺の病気などが原因の場合、太い血管に傷がついて大量に出血することもあります。出血の量が多いと、血液そのものが気道から吐き出される場合があり、これを「喀血【かっけつ】」と呼びます。
血痰が出たり喀血をしたら、救急車を呼んだ方がよいの?
- 次のような場合には、肺や気道に血液が詰まって呼吸ができなくなり、窒息してしまう恐れがあります。急いで救急車を呼んでください。
救急車を呼んでください
- 血液あるいは血液を含む痰が大量に出て止まらない場合
- 血液あるいは血液を含む痰が口から出ていて、「息が苦しい」、「胸が痛い」などの症状もある場合
喀血と吐血は違うの?
- はい、違います。どちらも口から血を吐き出すことですが、出血している場所が違います。「喀血【かっけつ】」は、空気の通り道である気道や肺からの出血で、「吐血【とけつ】」は食べ物の通り道(消化管)からの出血です。
- 「喀血」の特徴は、真っ赤な血で、空気の泡が混じることがあり、咳と一緒に吐き出されることが多いです。また、息が苦しい、胸が痛いなどの症状を伴うことがあります。
- 「吐血」の特徴は、暗赤色またはコーヒーのような色で、食物のカスが混じることが多いです。吐血が暗赤色になるのは、血液中の成分が胃液で変化するためですが、出血量が多い場合は真っ赤な血のこともあります。また、吐き気や胃の痛みなどの症状を伴うことがあります。
- 色や症状で判別できることもありますが、よく調べないとわからないことも多いです。
「血痰」の原因となる病気にはどのようなものがありますか?
- 「血痰」の原因として、かぜ(感冒)が約3分の1を占めています。次いで気管支炎と肺炎が多く、これら3つの呼吸器感染症を合わせると全体の6割以上を占めます。
- その他に、気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)が多く、頻度は低いですが、肺がん、気管支拡張症、肺結核、肺非結核性抗酸菌症などが原因となります。
- なお、肺がんと肺結核は、診断と治療を急がなければならない重大な病気です。血痰が続く場合は、専門医(呼吸器内科医)を受診し原因をよく調べてもらってください。
- また、血を固まりにくくするお薬を飲んでいる場合は、血痰が出やすくなります。いったん出血すると血が止まりにくいため、普段からどんな薬を飲んでいるか確認しておかれるとよいでしょう。
「血痰」の原因が、肺がんである可能性が高いのはどのような患者さんですか?
- タバコを長期間(数10年以上)吸ったことのある高齢者で血痰が出た場合、肺がんのリスクが高いと言えます。
- なお、肺がん健診において、太い気道にできるがんの診断を目的とした喀痰細胞診検査(痰の中の癌細胞を顕微鏡で確認する検査)は、50歳以上で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方がハイリスクとして検査対象となっています。
病院に行ったらどのような検査をするのですか?
- 病院では、血痰や喀血の原因としてどんな病気を疑うかによって、必要な検査が異なります。
出血が少量で呼吸に影響のない程度であると考えられた場合
- 聴診:肺の音を聞いて、肺や呼吸の状態をチェックします。
- 胸部X線検査、胸部CT検査:出血している場所と出血の原因となる異常(病気)を探します。
- 血液検査:出血のために貧血になっていないか、血が止まりにくい状態であるか、炎症があるかなどを調べます。また、貧血がある場合や喀血が続いている場合は、輸血に備えて血液型も調べます。
肺がんが疑われる場合
- 喀痰細胞診検査:痰の中から癌細胞を探します。
- 気管支鏡検査:胃カメラをより細くしたカメラで気道を観察し、癌がないかを確認します。そして、癌が疑われるところがあれば細胞や組織をとって検査します。
肺炎や肺結核が疑われる場合
- 喀痰培養検査:痰の中から肺炎の原因となる細菌や結核菌を探します。
血痰の原因が特定できない場合、血痰が続く場合
- 気管支鏡検査:カメラで気道を観察し、出血している場所と出血の原因となる異常がないかを確認します。
血痰や喀血にはどんな治療が行われますか?
- 出血量が少ない場合、気道表面の細い血管の傷が原因のことがほとんどですので、自然に治ることが多いです。また、気管支炎や肺炎など原因となっている病気を治療することで治ります。
- 大量に血を吐いた場合は、窒息してしまう恐れがあるため、緊急で次のような検査や治療を行う必要があります。
大量に喀血した場合
- 緊急に気管支鏡検査を行って出血している場所を探します。出血している気道内に止血剤を注入することや、窒息を防ぐために気道に管を入れて(気管挿管)、呼吸をしやすくすることがあります。
- 出血した血液が肺の中の広い範囲に残ってしまっている場合は、肺での酸素の取り込みが十分に行えなくなるため、酸素吸入や人工呼吸器による呼吸の補助が必要になります。
- また、出血している血管を特定して、血管に詰め物をして止血する処置が必要となることもあります。