認知行動療法:どんな治療?どこで受けられるの?費用は?どのくらい時間・期間がかかるの?
更新日:2020/11/11
- このページに来ていただいた方は、うつ病や不安障害などのお悩みがあり、認知行動療法がどういうものか知りたいと考えておられるかもしれません。
- こちらには、認知行動療法を選択するにあたり、参考にしていただきたい情報をまとめました。
- 「どこで受けられるの?」、「費用は?」、「どのくらいの期間かかるの?」など、よく質問を受ける内容についても記載させていただきました。
目次
まとめ
- 認知行動療法とは、心の苦痛・症状・問題行動などを改善するために、考え方や行動に働きかける対話型の心理療法です。
- 対処に効果的なスキルやテクニックを学ぶことによって、症状や困りごとを改善するため、主体的に取り組むことが重要です。
- うつ病などの気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、神経性過食症、物質使用障害の認知行動療法には一定条件下で保険が適用されます。
認知行動療法って何?
- 認知行動療法は、心の苦痛や症状、問題行動などの幅広い精神保健上の問題を改善するために、患者さんの考え方(認知)や行動に働きかける対話型の心理療法です。
- 英語ではCognitive Behavioral Therapyであることから、略してCBTと呼ばれています。世界中で治療に使われており、幅広い精神保健上の問題についての有効性が医学研究によって立証されています。
- ときには落ち込んだり、不安になったり、やらなくても良いような行動をとってしまったりすることは、人にとって自然なことで、誰でも体験します。ですが、それがあまりにも繰り返されたり、長く続いたりする時には、心や体に悪循環が出来上がっているのです。
- CBTでは、現在の生活の中で困っていることについての悪循環を明らかにして、適した対処法を見つけていきます。「現在の生活の中で困っていること」の中には、過去の出来事がきっかけとなって、現在の考え方や行動に影響を与えている場合も含みます。
- 悪循環に対処するのに効果的なスキルやテクニックを身につけていただくことで、精神的な健康や生活の質を回復させていきます。対処法が身につきますので、再発予防にも役立ちます。
どういう問題に向いているの?
- 精神科や心療内科におけるCBTは、お薬だけでは改善が不十分な場合に行われることが多いようですが、お薬の治療をせずに行う場合もあります。
- 日本の病院では、以下の診断に対するCBTは、一定の条件(後述)のもとで健康保険が適用されます。
保険適用になるCBT
- うつ病などの気分障害
- 強迫性障害
- 社交不安障害
- 心的外傷後ストレス障害
- 神経性過食症
- 物質使用障害(物質とはアルコールや薬物のことです)
- その他、不眠、過敏性腸症候群、慢性疼痛など、身体に症状が出ている場合や、発達障害による対人関係の悩みや統合失調症の陽性症状(幻聴や妄想など)への対処、怒りのマネジメントなど、幅広い問題に役立つと言われています。
実際には、どんなことをするの?
- まず、何に困っているかを話し合い、どういう悪循環でその困りごとが続いているのかの仕組みを明らかにします。
- そのために、困っている体験を、それが起こるきっかけとなる状況、その時の考え、感情、体の反応や行動に分けて整理します。問題の多くは、これらの要素が互いに影響を与えながら悪循環のパターンをつくり出し、生活の支障へとつながっているからです。
- 悪循環の仕組みが明らかになったら、その要(かなめ)となっている考え方や行動をターゲットにして変化させるやり方を学びます。CBTには様々な変化の手法があります。
- 考え方や行動を変化させる方法を学んだら、練習課題(ホームワーク)として、日常生活でそのやり方を使ってみます。次の面接ではその結果を振り返りながら、新たな循環を身につけていきます。
- 治療の進捗については、何らかの心理検査(自分で記入するタイプやインタビュー形式のものなど)を使って見ていくことが多く、自分でも進み方を確認できます。
コラム:認知行動療法ってどんな種類があるの?
- 認知行動療法には、個人療法も集団療法もあります。
- 患者さんが自分だけで取り組んでみたい場合は、セルフヘルプ本やアプリなどもあります。一人でやってみてうまく行かなくても、認知行動療法自体が合わないとは限りません。その場合は専門家と一緒に取り組んでみて下さい。
治療を受けるにあたって
- 認知行動療法を受けるにあたって大事なのは、患者さんが主体的に取り組むということです。「自分の困りごと」についての第一の専門家は自分です。その自分が、認知行動療法の専門家のアドバイスを受けながら、協力し合って治療を進めていきます。
- 治療期間中は、定期的に通っていただきながら、感情や考えに向き合って言葉で表現したり、学んだ対処法を自分で練習したりします。ですから、こういった練習が行えるくらいの状態のときに受けるとよいでしょう。
リスクはあるの?
- 何に対してのCBTかにもよりますが、それまで避けてきた特定の状況や感情に向き合い始めると、一時的に具合が悪くなったように感じられることがあります。この時に悪化したと勘違いして中断してしまうと、改善を自覚できるところまで治療を進めることが出来ません。あわてたり、がっかりしたりせず、治療者に伝えて何が起こっているのかを説明してもらったり、対処法を取り入れたりして、相談しながら進めるようにするとよいでしょう。
よくあるご質問
どこに行けば治療を受けられるの?
- まずはお近くの精神科や心療内科で診察を受けていただき、主治医の判断で院内外のCBTの専門家に紹介になることが多いようです。関心がある場合には、診察の時に相談してみると良いでしょう。
- どこの医療機関でも必ずCBTが受けられるわけではありません。CBTを受けられる機関でも、特定のCBTを専門にしているなど、特徴がある場合があります。また、医療機関以外でも、精神科や心療内科と連携しながらCBTを提供しているカウンセリング機関もあります。
- CBTを受けられるかについては、料金などと併せて、ホームページ等で情報を得たり、事前に問い合わせをしたりして確認してみましょう。
費用はどのくらいかかるの?
- 医療機関でCBTを受ける場合、健康保険が適用されるのは、一定の研修を受けた医師等が、厚生労働省の治療マニュアルに沿ってCBTを行う場合です。うつ病などの気分障害、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害または神経性過食症、薬物依存症に適用されます。
- その他の場合は、医療機関でもカウンセリング機関でも料金には幅があります。事前の確認をお勧めします。
どのくらい時間・期間がかかるの?
- 1回あたり、30分~1時間程度、頻度は週1回~隔週のことが多いようです。
- 回数は、5~20回以内に設定されていることが多いようです。かかる期間は相談内容の種類や状態、どのくらい定期的に通えるかによっても変わってきます。
- 治療が終わってからも、段々と間隔をあけながら時々通っていただき、身につけた内容をリフレッシュすること(ブースターセッションと呼びます)もよく行われています。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本認知療法・認知行動療法学会ウェブサイトには,CBTの説明が載っています。(http://jact.umin.jp/introduction/)
- こころのスキルアップ・トレーニング(ここトレ)(https://www.cbtjp.net/)CBT活用サイトです。テキストや動画を使ってCBTのスキルを学ぶことができます。ただし、治療を目的としたサイトではありません。
- 「こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳」大野裕 著,創元社,2003年3月.つらい気持ちをもたらしている認知を変えるための方法を6段階に分けて説明しています。