慢性閉塞性肺疾患(COPD):どんな病気?原因は?検査や治療は?
更新日:2022/05/20
目次
まとめ
- 慢性閉塞性肺疾患(【まんせいへいそくせいはいしっかん】とは,タバコの煙などの有害物質を長い間吸入することなどによって生じる肺の病気で,COPDと略されています.
- COPDは,治療せずに放置すると悪化していき,元の状態には戻りません.進行を遅らせるためにも,禁煙していただくことが治療の基本です.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,どんな病気?
- 慢性閉塞性肺疾患(【まんせいへいそくせいはいしっかん】,COPD : chronic obstructive pulmonary disease)とは,タバコの煙などの有害物質を長い間吸入することなどによって生じる肺の病気です.
- タバコを吸う習慣のある中高年の方に発生することが多く,40歳以上の約8.6%,日本全体で500万人以上の患者さんがいると推定されています.しかし,多くの方が診断されないまま,治療もなされていないと考えられています.
- タバコを吸う方の15〜20%がCOPDを発症すると言われています.
- 日本人の死亡原因として第10位を占める疾患です.
- COPDでは以下のような病気が同時に起こったり,以下の病気の原因になることも知られています.
COPDの併存症と合併症
- 肺がんなどの悪性腫瘍
- 喘息
- 栄養障害
- 筋力が衰える
- 高血圧症,心筋梗塞,狭心症,不整脈,脳血管障害
- 骨粗鬆症
- 不安,うつ状態
- 糖尿病,メタボリックシンドローム
- 胃潰瘍,胃食道逆流症
- 睡眠時無呼吸症候群
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と思ったら,どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- タバコを吸っている方,あるいは過去にタバコを吸っていた方で,次のような症状がある場合はCOPDが疑われます.医療機関を受診する際には,呼吸機能検査を行えるかどうか,事前のお問い合わせをお勧めします.
こんな症状があったら病院へ
- 坂道を昇るときや,道を歩いていて息切れを感じる
- 咳や痰が続く
- いわゆる風邪の症状を繰り返す,あるいは風邪の症状がよくなるのに時間がかかる
どんな症状がでるの?
- 私たちは気管支を通して肺で呼吸しています.呼吸によって取り込まれた酸素は,肺の中にある肺胞で血液の中に取り込まれてから,からだ中に送られます.一方,排気ガスである二酸化炭素は,血液の中から肺胞へ排出されます.
- COPDでは空気の通り道である気管支に炎症がおこります.そのため,咳や痰が出たり,気管支がむくんで狭くなり,呼吸がしづらくなったりします.
- COPDでは肺胞が破壊されて肺の機能が低下してしまい,坂道や階段を昇るときなどに息切れを感じるようになります.
- 病状が進行すると,平地を歩行しても,さらにひどくなると安静にしているときにも息切れや呼吸がくるしくなってしまいます.
病院ではどんな検査をするの?
- 医療機関では,スパイロメトリーという呼吸機能検査を行い,気道が狭くなっている状態(閉塞性障害【へいさせいしょうがい】といいます)を確認します.
- さらに,胸部X線写真やCTなどで,閉塞性障害を起こす他の病気でないことを確認できれば,COPDと診断します.
どんな治療があるの?
- タバコを吸っている方は,まず禁煙が治療の出発点です.禁煙すれば,COPDがこれ以上悪くなるのを遅らせることができます.
- すでにCOPDの症状があったり,より強い治療を行う必要がでてきた場合(増悪【ぞうあく】といいます)は,薬物療法が行われます.
- 吸入薬である抗コリン薬,吸入または貼付のβ2刺激薬,飲み薬のテオフィリン薬などの気管支を拡張する薬が使われます.効果や副作用の面から,吸入薬が推奨されています.長時間にわたって気管支を拡張してくれる吸入抗コリン薬や,吸入β2刺激薬が使用されます.
- 薬物以外の方法では,呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法があります.在宅人工呼吸療法や肺組織の一部を切除する外科手術が行われる場合もあります.
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 普段よりも咳や痰が増えたり,息切れが強かったり,胸の不快感や違和感があらわれた場合,より強い治療を行う必要があります(COPDの増悪【ぞうあく】).呼吸の機能が低下して,場合によっては死に至ることさえあります.
- COPDの増悪は,インフルエンザ,気管支炎,肺炎などの感染症や大気汚染がきっかけになることが多いとされています.ですから,これら感染症の予防や症状を軽くするため,インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン接種をお勧めします.
喫煙したことがなければCOPDにはならないの?
- タバコを吸ったことがなくても,COPDになることがあります.受動喫煙(周囲の人が吸っているタバコの煙や、その人が吐き出す煙を吸い込むこと)や、子供の頃にかかった喘息などの肺の病気,遺伝的な要因も,COPDの原因の一つと考えられています.
- 子供の頃に肺に炎症や傷害を受けると,肺が正常に発育できなくなることがあり,場合によってはCOPDを発症することが近年わかってきました.妊娠中にお母さんがタバコを吸っていた,子供の頃に同居していた人がタバコを吸っていたことも,肺の発達が障害される原因と考えられています.