白内障手術:手術の方法は?時間は?費用はどれくらい?後遺症は残らない?
更新日:2020/11/11
- 眼科専門医の黒坂 大次郎と申します。
- このページに来ていただいた方は、ご自身またはご家族、お知り合いの方が白内障と診断され、どのような治療法があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
- 白内障手術について理解するために役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」についてまとめました。
目次
まとめ
- 白内障手術とは、濁った水晶体の内容物をとり、代わりにプラスチック製の眼内レンズをいれる治療です。
- 保険適用のある眼内レンズは、遠く・近く・中間などのどこか一つにのみピントを合わせるレンズで、手術後は眼鏡が必要です。複数にピントを合わせられる多焦点眼内レンズをいれるのは、選定療養になります。
- 手術後の大きなトラブルはないことが多いです。ただし、失明につながる合併症の可能性があるため、定期的なチェックが必要です。
白内障手術とは、どんな治療?
- 白内障手術とは、眼の中の水晶体の濁った部分をとり、代わりにプラスチック製の眼内レンズを入れる手術です。
この治療の目的や効果は?
- 白内障の手術を行うと、濁ったレンズが透明なレンズに置き換わるので、目が良く見えるようになります。視力が向上して、色が鮮やかに感じられるようになります。
どういう人がこの治療を受けるべき?
- 白内障のために、日常生活に不便を感じている患者さんで、手術によって良くなる可能性のある方が対象になります。
白内障手術を慎重に検討しなければならない方
- 角膜の透明さを維持する細胞が少ない場合
- 他に目や全身の病気があって体調が悪い場合
- 視力があまり低下していない場合
実際には、どんなことをするの?
- 眼に麻酔をして、眼を洗い、黒目と白目の境目に切り込みを入れて、水晶体の中の物を超音波でくだき、吸い取ってしまいます。水晶体を包んでいた袋を残し、そこにプラスチック製の眼内レンズを入れます。
- 点眼などで麻酔をしますが、通常触っている感じはのこるものの、痛みは軽いです。
- 水晶体内容物が硬くて砕けない場合や、水晶体をささえている糸のような組織がダメージを受けている場合には、別の方法で水晶体を除去したり、眼内レンズを挿入したりします。
眼内レンズって何?
- 白内障手術で使う眼内レンズについて、水晶体のはたらきからご説明いたします。
水晶体とピント調節機能
- 若い方の水晶体は、物をみる距離によってピント調整を自動で行う機能(調節)がありますが、45歳を過ぎると日常生活に不便を感じるくらい低下し、老眼になります。
- 老眼で遠くが見える人は、そのままでは近くが見えにくいので、老眼鏡をかける必要があります。逆に眼鏡なしで近くが見える人は、遠くを見るときに近視の眼鏡をかけ、近くを見るときにははずします。
- 眼鏡なしではどこか一つのところが見えていても、それ以外(近く遠く)のピント合わせは、眼鏡をかけたりはずしたり、または、遠近両用の眼鏡をかけたりして、眼鏡に頼るわけです。
眼内レンズ
- 標準の眼内レンズは、通常の眼鏡と同じようにどこか一つにピントを合わせます。それより遠くや近くにピントを合わせようとするときには、眼鏡が必要になります。
- 手術前の診察時に、手術後、眼鏡なしでピントを合わせる場所を遠く、近く(手元)、あるいはその中間などのどれにするかを決めます。
- 眼鏡に度数があるように、眼内レンズにも度数があります。ピントを合わせる場所によって、眼内レンズの度数も決まります。
- 以前は、乱視まで眼内レンズで矯正することはできませんでしたが、最近は強い乱視については、それを軽減し、手術後の眼鏡の乱視度数を減らせるようになってきています。
多焦点眼内レンズ
- 多焦点眼内レンズとは、ある程度眼鏡なしで、遠くも近くもピントがあうようにしたレンズです。対象になる方は限られますが、選定療養費でこの多焦点眼内レンズにすることが可能です。
- とはいえ、「眼鏡なしで若いころのように見えるようになる」というわけではありません。薄暗い環境や薄い字などを見るときには、眼鏡が必要なこともあります。また、夜間の運転などでは、対向車のヘッドライトが散ってまぶしく感じ、運転しにくいと感じられる人もいます。
- また、通常のレンズがすべてのピントを一点に集中させるのに対し、多焦点では遠近に同時にピントを合わせるため、本当にピントの合った一点の見え方は通常のレンズのほうが良い場合があります。
- 他に眼の疾患がない人の場合はほぼ問題になりませんが、すでに目の機能が落ちている人の場合は通常の眼内レンズのほうが良い場合があります。
治療を受けるにあたって
- 治療を受けるにあたって、気をつけていただきたいことは下記のとおりです。
治療を受けるにあたっての注意点
- 検査前にはコンタクトレンズを1~2週間前から外す:眼内レンズの度数を正確に測定するためです。
- 血糖値は、術前から術後も少なくとも半年間は安定させる:術後の経過に影響が出る場合があるためです。
- 当日は化粧を控える:眼の消毒をするためです
- 退院時はできれば付き添いの方と帰る:眼帯をつけ片目になることが多く、見え方の状況が変わるためです。
- 術後は、しばらく安静にして急に動かないようにする
※術後の感染を予防するため、数日前から菌をやっつける目薬が出されることが多いです。
理解しておきたい リスクと合併症
- 手術によって引き起こされる望ましくないことを合併症と言います。白内障手術の代表的な合併症を挙げます。
- 水晶体の袋が破れる:内容物が目の奥に移動したり、眼内レンズを入れられない場合があります。水晶体の袋を支える組織が弱い時も同様な危険性があります。
- 出血:稀ですが、手術中に目の奥で大出血が生じ、手術の継続が難しくなる場合や、失明につながる場合があります。
- 眼圧の上昇:手術後は一時的に目の圧力が高くなって、重い鈍い痛みを感じることがあります。薬を飲んだり、目薬をさしたりすることで、よくなります。
- 炎症:糖尿病や他の眼疾患があると、手術後に炎症が強く出ることがあります。通常は、点眼薬で対処できますが、内服や白目への注射が必要になることもあります。
- ゴロゴロ感や違和感:手術後数日から数か月間は違和感がでることがあります。強い痛みは出ません。
- 視力の低下:数週間後から、視力が落ちることがあります。目の奥のフイルムにあたる網膜が腫れることが原因で、通常は目薬で落ち着きます。
- 眼内炎:稀に、眼の中に細菌が感染して、術後数日から1か月以内に急激に視力が低下したり、眼が充血して痛みが出ることがあります。軽度の場合には点眼や白目の注射でよくなりますが、重い場合は、眼内へ抗菌剤を注射したり、細菌に感染している硝子体を手術で切除したりすることが必要になります。視機能が回復しなくなる場合もあるので、休日でも様子を見ず、すぐに眼科のある大きな救急病院を受診する必要があります。
- 後発白内障:術後3~5年後に、再び白内障の時のようにぼやけてきます。水晶体の袋に残ったわずかな細胞が年数をかけて増え、眼内レンズの周りに濁りをつくるものです。眼内レンズ自体は濁っていないため、増殖した部分だけをレーザーで除去します。外来でできる処置で、数日間で視力が戻ってきます。
治療後について
- 手術後は目薬による点眼治療を行います。感染・炎症の予防のために、複数の目薬を使います。感染予防には術後数週間、炎症予防には3か月程度続けます。
- 洗顔、入浴などの時には、手術した目に水が入らないように注意が2~3週間は必要です。1か月程度たてば、プールなども可能になります。
- 目は多少ならばこすっても大丈夫なことが多いですが、1か月以内は手術の傷が開きやすいため、目をこすらないように注意が必要です。
- その後も、目を強くぶつけると傷が開いて眼球が破裂する可能性があります。激しいスポーツなどする場合には、保護具で目を守る必要があります。
もっと知りたい! 白内障手術
手術をしたために、手術前より視力が悪くなることはあるの?
- 「リスクと合併症」でご説明しましたが、まれ(1/2000の確率)に生じる眼内炎などによって、視力が著しく低下する場合があります。
手術しないでおくと失明するの?
- 光しかわからない程度にまで、視力が落ちることがあります。しかし、他の目の病気を起こしていなければ、その時点で手術をおこなっても視力を回復することは可能です。
- ただ、まれに、水晶体の袋が過度に腫れたり破裂してしまい、数日の間に痛みを伴って急激に悪化し、手術しても回復しない状態になる場合もあります。
手術は痛いの?
- 目を触られている感じがあると思いますが、多くの場合痛みはありません。
- 痛いと感じられた場合、手術中に「痛い」とお伝えいただければ麻酔が追加されます。