気管支炎:症状は?人にうつるの?風邪とのちがいは?薬はあるの?
更新日:2020/11/11
- 呼吸器専門医の青島 正大と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が気管支炎になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 気管支炎という場合には、急性気管支炎を指すことが多いです。
- 急性気管支炎の原因の約9割はウイルスであり、自然に治ります。
- ウイルスによる気管支炎には、抗生物質の治療は不要です。
- 急性気管支炎の咳が3週間以上続く場合は、感染後の咳と考えられ、麦門冬湯などが咳止めとして使われます。
気管支炎は、どんな病気?
- 気管支炎は、急性気管支炎と慢性気管支炎に分けられます。一般に気管支炎と言う場合には急性気管支炎をさすことが多く、ここでは急性気管支炎について解説します。慢性気管支炎については慢性閉塞性肺疾患の項を参照してください。
急性気管支炎
- 咳を主な症状とするかぜ症候群の一つで、気管支の粘膜に起きた急性の炎症です。
- 主な原因は、かぜ症候群と同じくライノウイルス、コロナウイルスウイルスなどのウイルスが主体です。そのほか、肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジア、百日咳などが挙げられます。
慢性気管支炎
- 「毎日のように痰が出る」という状態を表す言葉で、気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患などに伴う症状です。
- これらの病気では、気管支の壁が壊され慢性的に痰が作られます。この状態にインフルエンザ菌や緑膿菌などの細菌感染が二次的に合併することがあり、慢性下気道感染症と言われます。
気管支炎と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 急性気管支炎は、肺炎のはじまりと症状で区別がつきません。以下のような症状があった場合に医療機関をお勧めします。
医療機関を受診すべき症状
- 咳のために夜眠れない、食欲がない、食事が食べられないなど
- 39℃を超える高熱がでている
- 息苦しい
- 咳をしたときに「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」といった音(喘鳴)が聞こえる
受診前に自分でできることは?
- 市販の総合感冒薬は消炎鎮痛成分、鎮咳薬などを含んでいます。症状の緩和に役立つことがあります。
気管支炎になりやすいのはどんな人?原因は?
- 急性気管支炎の原因の多くはかぜ症候群と同じくライノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスで、これらが約9割を占めます。そのほか肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジア、百日咳など細菌による場合もあります。
- 急性気管支炎の原因となるウイルスや細菌は、ヒトからヒトへ飛沫や接触によって伝搬すると考えられています。インフルエンザもそのうちの一つであり、 ヒトと接触する機会が多い方はなりやすいかもしれません。
- 気管支喘息など気管支の病気を持っている方は、ウイルス感染に続いて肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌感染を来すことがあります。
どんな症状がでるの?
- 症状の主体は咳です。痰を伴う場合も伴わない場合もあります。
- 百日咳では2~3か月間咳が持続します。最も激しい時には発作性の咳込み、咳をした後に息を吸うとヒューという笛を吹くような音がしたり、咳発作後の嘔吐なども特徴的です。
- そのほか急性の発熱などインフルエンザと似た症状を示すことがあります。インフルエンザの項も参照してください。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 急性気管支炎の診断は、患者さんの症状に基づいて行われます(臨床診断と言います)。また、原因を調べるため、次のような検査を行います。
検査の種類
- 胸部のレントゲン検査:急性気管支炎と症状が似ている肺炎ではないことを確認するために行います。
- インフルエンザウイルス迅速検査:鼻の中やのどを綿棒でぬぐい、インフルエンザウイルスがいないかを調べます。
- マイコプラズマ抗原の迅速検査:痰の中にマイコプラズマがいないかを調べます。
- 血液検査:百日咳・肺炎クラミジアの抗体価測定を行います。
- 培養検査:痰の中に百日咳菌などの細菌がいないかを調べます。
コラム:急性気管支炎の原因の検査
- インフルエンザウイルス
:インフルエンザウイルスの検査は、発症からの時間で検査を行う必要性が変わります。発症からあまり時間がたっていないときには検査をしても検査が陽性になることは少なく、検査が役立たないことが多いです。 - 肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア
:肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアの抗体価測定は、発病間もない時期(急性期)と回復期の2回の採血が必要です。 - 百日咳
:百日咳では発病から2週間以上が経過すると培養検査では検出できなくなりますので、血液検査で抗体価測定が主体となります。 - 急性気管支炎
:急性気管支炎の原因となる微生物のうち、肺炎マイコプラズマや百日咳では遺伝子検査が行われることもあります。
どんな治療があるの?
- 咳の症状は通常、自然に軽くなります。症状が強い場合には、咳止めのお薬(鎮咳薬)の内服治療が行われます。
- インフルエンザでは、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬やゾフルーザが処方されることがあります。詳細はインフルエンザの項を参照してください。
抗生物質による治療について
- 急性気管支炎の多くはウイルスによるものなので、抗生物質の治療は不要です。ただし、肺炎マイコプラズマや百日咳では、抗生物質での治療が行われる場合があります。
- 百日咳では発病から2週間以上たっている場合には、菌が検出されないために抗生物質を飲んでも症状は改善しませんが、周囲の人(特に乳幼児)へうつることを防ぐ目的で、抗生物質治療が奨められています。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 急性気管支炎で主に使用されるマクロライドという系統の抗生物物質は、副作用として下痢や不整脈が出ることがあります。これらが出るようなら薬を処方した医療機関に相談しましょう。自己判断で薬を中止してしまうと、治療の効果が判断できなくなります。
- 鎮咳薬のうち、コデインリン酸塩水和物(リン酸コデイン散1%(R)など)は、腸の動きを抑えるために便秘に傾きます。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- マイコプラズマ、肺炎クラミジア、インフルエンザウイルスは、咳やくしゃみに含まれる飛沫を介して人から人にうつります。
- 他の人への感染のリスクを下げるために、咳エチケットを行いましょう。
咳エチケット
- 咳が出る人はマスクを着用する
- 咳をするときはハンカチなどで口を覆う
- インフルエンザにかかると、その後細菌による肺炎を合併することがあります。インフルエンザ予防のために、インフルエンザシーズンが始まる前にワクチンを打つことが推奨されます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 急性気管支炎による咳は急性の咳と言われ、おおむね3週間以内で自然に治っていきます。
- 3週間以上続く場合には遷延性の咳と言われ、感染による急性の咳ではなく、感染後の咳と判断されます。通常の咳止めではなく、漢方薬の麦門冬湯(麦門冬湯エキス顆粒(R))などで治療します。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本呼吸器学会のホームページ
- http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3