気管支拡張症:原因は?症状は?検査は?治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、原発性線毛機能不全症候群などの難治性気道疾患を専門としている森本 耕三と申します。
- このページに来ていただいたかたは、「自分または家族が、気管支拡張症」と診断されたり、闘病されていて不安を感じておられるかもしれません。
- ここでは、いま不安を抱えている方や、つらい症状を抱えている方に役にたつ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、よく質問を受けること、特に患者さんに心に留めておいて頂きたい内容についてまとめました。
目次
まとめ
- 気管支拡張症とは、様々な原因によって気管支がダメージを受け、気管支が拡がってしまう病気です。
- 気管支がダメージを受けることで、菌を含む痰を出しづらくなり、そのために炎症が続き、さらに破壊が進行するという悪循環に陥ります。
- 症状は主に咳や痰ですが、悪化すると息切れ、発熱、体重低下など様々な症状がでます。
- 気管支拡張症になってしまったら、今以上に悪くならないようにしっかりと管理・治療を行うことが重要です。
気管支拡張症は、どんな病気?
- 気管支拡張症とは、気管支(気管から分岐する鼻や口と肺をつなぐ管)が、何らかの原因で通常より拡がってしまった状態を言います。
- 気管支にダメージを与える原因は、子供のころにかかった感染症のほか、結核、肺非結核性抗酸菌症、膠原病、先天性の病気など様々です。
- 気管支拡張症になると、痰などが気管支にたまり、慢性的な肺の感染症にかかる危険性が高まります。
- 感染症によって肺や気管にさらなる炎症を引き起こし、息切れ、胸の痛み、疲労感などの症状を招きます。
気管支拡張症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 気管支拡張症になりやすいのは下記のような方です。
気管支拡張症になりやすい人
- 過去に肺炎や結核にかかったことがある人
- 肺非結核性抗酸菌症にかかったことがある人
- アレルギー体質の人
- 生まれつき気管の機能が弱い人
- 治療や病気で免疫が弱い人
- 関節リウマチやシェーグレン症候群などの膠原病の人
- 日本では、肺非結核性抗酸菌症で引き起こされるタイプが増えている可能性が高いと考えています。
コラム:気管支拡張症の原因
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA): 喘息患者でアスペルギルスや他の真菌に対するアレルギー反応を起こして粘液栓、気管支拡張などを起こします。
- 原発性線毛機能不全症候群:先天的に気管などの線毛の動きが悪くなり、感染を繰り返します。専門施設での検査が必要です。
- 関節リウマチやシェーグレン症候群:自分の免疫が身体を攻撃する自己免疫疾患です。
- 気管の閉塞:入れ歯など異物の誤嚥や気管内の腫瘍で起こります。
- 免疫不全:先天的なものや血液の病気、薬剤など後天的なものも含みます。
- びまん性汎細気管支炎:日本で初めて提唱されたアジア人に多い病気ですが、最近では稀になっています。
- 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患:リウマチなどと同様に免疫が自分を攻撃することで起こります。
- サルコイドーシス、アミロイドーシスなど稀な病気もあります。
どんな症状がでるの?
- 気管支拡張症の症状は、程度により異なりますが、下記の症状を示すことが多いです。なお、これらはほかの呼吸器の病気とも共通する症状です。
気管支拡張症の症状
- 咳と痰(痰は出たりでなかったり、色や量もさまざま)
- 胸の不快感や痛み
- 急に悪化したとき(急性増悪)には、息切れ、痰の増加、食欲が落ちる、だるさ、発熱など、様々な症状があらわれます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 気管支拡張症を疑ったら、下記のような検査を行います。
気管支拡張症の検査
- 胸部レントゲン検査:気管支が拡張していることを確認します。
- CT検査:早期の病変や程度の把握のために必須です。副鼻腔炎の有無を調べたりもします。副鼻腔炎を合併している方は症状が強いことが多いです。
- 喀痰培養検査:気管支拡張症に合併している、または原因となっている菌の確認を行います。繰り返し調べることが必要です。
- 肺機能検査:病気の程度の把握のために肺活量を調べます。喘息の合併の有無を調べたりします。
- 血液検査:炎症の程度の把握や気管支拡張の原因(免疫不全など)を調べます。
- 専門施設での検査:誤嚥がないか、線毛機能などを専門施設で調べることもあります。
どんな治療があるの?
- 気管支拡張症の治療には薬物療法、理学療法、手術療法があり、主に薬物療法と理学療法を組み合わせて行います。また、原因の病気がある場合は、原因に応じた治療を行います。
- 気管支拡張症の治療の目的は、症状を軽くすること、感染を予防して病状が悪化(急性増悪)するのを防ぐこと、QOLを改善することです。つまり、現在の状態を長期間安定させることが重要になります。
薬物療法
- 増悪を繰り返す方には、長期間少量の抗生剤(マクロライド系)を内服していただきます。ただし、肺非結核性抗酸菌症と診断されている方は、薬の種類が異なりますので主治医の先生によくご確認ください。
- 急に悪化した場合は、抗生剤の内服のほか点滴も行い、それ以上悪くならないよう速やかに治療することが必要です。
- 緑膿菌という菌の感染がおこっている方は、他の細菌よりも症状が強く、コントロールが難しいことが多いです。この場合も一定期間、抗生剤を使用することがあります。
- 痰の症状がある方は、病状や原因などに応じて去痰薬や気管支拡張薬などが処方されます。
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症が原因の方は、ステロイドや抗真菌薬が使われますし、肺非結核性抗酸菌症の方は多剤抗菌治療が用いられるなど、原因に応じた治療が必要となります。
理学療法
- 日々気管にたまる痰を出すのに、理学療法は去痰薬などよりも有効とされています。
- 痰の症状がある方は、理学療法士さんから指導を受けることをおすすめします。
手術療法
- 気管支拡張が肺の一部のみにあり、強い症状を繰り返す場合は手術療法の対象になることがあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 気管支拡張症では、状態を安定させるために下記のような自己管理が大切です。
気管支拡張症の治療後に気をつけること
- 規則正しい生活を送る
- 薬を正しく服用する
- 栄養を摂る
- 痰を吐き出す(排痰)習慣をつける
- 症状を把握する
- 病状を把握するようにしておくと、症状が悪化した時にはすぐに受診できるため、役立ちます。
- 副作用が強い薬剤は少ないですが、長期間内服することによる副作用は起こるかもしれません。あやしい症状があれば、主治医にご相談ください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 一度拡がってしまった気管支は、残念ながら元に戻ることはありません。ですが、自己管理と治療をしっかり行えば、それ以上悪化することを防いで、長期間安定した状態で過ごすことができます。
- なお、手術で悪くなった部分を除去することができれば、治癒に近い状態となります。しかし、手術適用になる患者さんはきわめて限られており、高度専門施設で判断され、実施される必要があります。
追加の情報を手に入れるには?
- ①日本には治療ガイドラインはありません。海外ではヨーロッパ呼吸器学会が2017年に発表したガイドラインが有名です。
- https://erj.ersjournals.com/content/50/3/1700629?ctkey=shareline
- ➁海外の大学(英語)ですが米国のノースカロライナ大学の専門サイトがあります。
- http://www.med.unc.edu/medicine/pulmonary/bronchiectasis
- ③日本では呼吸器学会のHPに解説があります。
- http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=38
もっと知りたい! 気管支拡張症
気管支拡張症を理解し、進行させないために
- 気管支拡張症は、今まであまり注目されてきませんでした。しかし現在、世界中でその重要性が認識されています。日本でも医療の現場、患者さんすべてにその理解が広がることが望まれています。
- 気管支拡張症は、肺非結核性抗酸菌症という病気の原因にもなり、また肺非結核性抗酸菌症の進行によっても引き起こされます。この理解・把握は簡単ではありません。重要なのは気管支拡張が進行しないように管理されることです。
- 気管支拡張症の管理治療では、痰を吐き出す(排痰)ための理学療法やリハビリテーションが重要であることがわかっています。専門の施設で患者さん個人個人に合った方法で指導を受けていただくことが重要です。