肋骨骨折:どんな骨折? 原因は? 症状は? 検査や治療は? 完治するまでの時間は?
更新日:2022/05/20
- 整形外科専門医、手外科専門医の及川 泰宏と申します。
- 肋骨骨折には交通事故や高所からの転落など大きな外力外傷やコンタクトスポーツによって発症するものから、投球動作やゴルフのスウィング、長引く咳【せき】などによっても生じることがあります。
- 大きな外力による外傷後に発症した肋骨骨折は自覚症状・他覚所見もはっきりしており、すでに医療機関で治療が始まっているものと思われます。
- ここではスポーツや転倒した後、胸部を打った後、咳き込んだ後に生じることの多い肋骨骨折を中心に、私が日々の診察の中で「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 肋骨骨折とは、心臓や肺を包むように保護している肋骨が折れた状態のことです。
- 交通事故や転落による大きな外力や外傷・コンタクトスポーツなどで胸を打撲【だぼく】することで起こります。
- 投球動作やゴルフのスウィングなど繰り返す動作や持続する咳などによる疲労骨折としても発症します。
- からだを動かしたときに胸に感じる痛みや違和感から気胸などの臓器損傷まで、骨折の状態に応じてさまざまな症状がでます。
- 軽症の場合の治療は、消炎鎮痛剤【しょうえんちんつうざい】などを用いた痛みのコントロールが主になります。
- 初期の痛みに対しては、肋骨バンドやバストバンドなどの医療用具を用いて局所を固定することがあります。
- 治るまでの期間は、骨折や患者さんの状態によって数週間から数か月までさまざまです。
- 臓器の損傷がある場合には、手術など外科的な治療も行われます。
肋骨骨折は、どんな骨折?
- 肋骨とは、脊椎【せきつい】から胸郭【きょうかく】を包み込む弯曲【わんきょく】した骨で左右に12対あり、肺や心臓などの胸郭内の臓器を守っています。肋骨骨折は、この肋骨が折れた状態を指します。
- 肋骨骨折はさまざまな状態があります。
肋骨骨折の種類
- 完全に折れて不安定になっている状態
- レントゲンでは骨折がわかりづらい不全骨折(いわゆるヒビが入った状態)
肋骨骨折が起きる原因
- 肋骨骨折は、次のような状況で生じます。
肋骨骨折が起きる状況
- 胸部への強い外力:交通事故や高所からの転落、外傷・コンタクトスポーツでぶつかるなど
- 疲労骨折:投球動作やゴルフのスウィングのようにある競技に特有の同じ動作を繰り返したり、長期間咳き込んだりするなど
肋骨骨折と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの? 医療機関の選び方は?
- からだを動かしたときや咳・深呼吸をするときに胸に痛みが生じるなど、肋骨骨折を疑った場合には整形外科を受診して検査を受けることをお勧めします。
- 一般に緊急性は低く、レントゲンの撮影可能な一般病院やクリニックなどの受診で問題ありません。
- 発熱、呼吸困難、持続する咳や血の混じった痰【たん】、はき気やおう吐などの腹部症状、消炎鎮痛剤でコントロールできない痛みがある場合にはすぐに医療機関を受診してください。
- レントゲンやCT検査が可能な病院を受診されることをお勧めします。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 受傷した1〜2日目は受傷部位を氷などでよく冷やし、安静にしてください。
- 打撲などの痛みは時間の経過によって改善してきますが、骨折の痛みはからだを動かしたときに強くなることがあり、そのようなときにはがまんしないで病院を受診してください。
肋骨骨折になりやすいのはどんな人? 原因は?
- 肋骨骨折は交通事故や転倒・転落、コンタクトスポーツなど胸に直接的な外力がかかることによって発症します
- 投球動作やゴルフのスウィングなど、ある競技に特有の動作や、長引く咳など繰り返される弱い力によって、疲労骨折として発症することがあります。
- 高齢者などで、骨がもろくなる骨粗鬆症【こつそしょうしょう】の患者さんにも生じることがあります。
どんな症状がでるの?
- 肋骨骨折では次のような症状がでます。
肋骨骨折の症状
- からだを動かしたときや深呼吸・咳をしたときの胸の不快感や痛み
- 骨折した部分を圧迫されることによる痛み
- 胸部の皮下出血
- 呼吸をしたときに肋骨に音がなるように感じる
- 呼吸困難、持続する咳や血の混じった痰、はき気やおう吐などの腹部症状(複数の肋骨が骨折している、骨折した肋骨がもとの位置から著しくずれている場合など)
- 複数の肋骨が折れ、呼吸が困難になったり、肺やおなかの臓器、血管などが損傷している場合は、外科治療が必要になることがあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 画像検査:押して痛みがある場所や、痛みのでる動作などを確認した後に、一般的には胸部のレントゲン写真を撮ります。
- 血液検査やCTなど:肋軟骨【ろくなんこつ】というレントゲンに写らない部分など胸の前部の骨折や、肺やおなかの臓器の損傷が疑われた場合に追加で行います。
どんな治療があるの?
- 肋骨骨折の治療は痛みのコントロールが主で、消炎鎮痛剤の処方が中心になります。
- 骨折した初期には呼吸をするときに痛みを伴うことが多く、肋骨バンドやバストバンドなどの医療用具を用いて固定します。
- 複数の肋骨骨折や開放骨折、気胸、臓器損傷を合併している場合には手術など外科治療を行います。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?
- 痛みは徐々に改善しますが、消炎鎮痛剤で痛みがコントロールできない場合や呼吸困難、持続する咳や血の混じった痰、はき気やおう吐などおなかの症状がでたときは必ず受診をしてください。
- 治療後は日常生活において次のようなことに注意してください。
治療を受けた後に注意すること
- 激しい運動や痛みの原因となるような運動は控える
- 負傷した部分をぶつけないように気をつける
- 運動は痛みが落ち着いてから徐々に再開する
- 肺炎予防のためにゆっくりと深呼吸をする
- 肋骨バンドは深呼吸を妨げ肺炎を誘発することがあるため、長期間の固定は行わず、痛みが落ち着いてきたら外す
予防のためにできることは?
- 転倒や打撲をしないように気をつけてください。
- 骨粗鬆症などがある場合には、繰り返す運動や長引く咳などに注意してください。
治るの? 治るとしたらどのくらいで治るの?
- 肋骨骨折は、基本的に1〜3か月で自然に治ります。
- 治癒【ちゆ】までの期間は人によって異なり、小児などでは骨がつくのは早く、高齢者では痛みが長期間続くことがあります。
- 咳き込んだり、激しい運動を継続していると治癒期間は長くなります。