乳房のしこり:どんな症状?原因やリスクは?自分で対処する方法は?どんなときに医療機関を受診すればいいの?
更新日:2020/11/11
- 乳腺専門医の大谷 彰一郎と申します。
- とつぜん乳房にしこりができたり、ひどい乳房のしこりが何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、乳房のしこりの一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけど本当は説明したいこと」について記載をさせていただいています。
まとめ
- 乳房のしこりの80-90%は良性のしこりといわれています。
- 乳房のしこりは様々な原因が考えられます。
- しこりを自覚したら、一人で悩まずに早めに乳腺クリニックや乳腺専門医を受診してください。
どんな症状?
- しこりは乳腺にできる、周りの乳腺の組織とは違って感じられる膨らみや、肥厚や、硬く触れる部分のことを指します。
- 乳がんでも、もちろんしこりができますが、乳腺症などの良性の病気でもしこりが見られます。
- 乳腺に出来るしこりの80-90%は良性だといわれています。
主な原因とその説明
- しこりとして考えられる原因として下記のような病気が挙げられます。
乳腺症
- 乳腺症は30-40歳代の女性に多く見られる乳腺の良性の変化です。
- 症状の特徴として皮膚が硬くなったり、乳房の痛み、乳頭の異常な分泌物などがあります。
- 皮膚が硬くなることは片方または多くは両方の乳房に、大きさが不ぞろいの境界がはっきりとしない、平らで硬いしこりとして触れることが多いです。
- 別の特徴としてしこりが月経前に増大し、月経後に縮小します。
- 月経周期によって大きさや硬さが変化する場合は乳腺症のことが多いです。
- 乳腺症は主として卵巣から分泌される女性ホルモンが関わっており、閉経後は女性ホルモンの分泌も減少し、症状は消失します。
線維腺腫
- 10歳代後半~40歳代の若い女性に多く見られる良性の乳房のしこりです。コロコロしたしこりで、触ってみるとよく動きます。
- マンモグラフィーや超音波検査などの画像検査や場合によっては細胞診・組織診で線維腺腫と診断されれば、特に治療は必要ありません。
- 乳がんの発症とも基本的に関係ありません。
- しこりの大きさが2-3cmを超える場合や、急速にしこりが増大する場合は摘出する場合もあります。
- 線維腺腫は女性ホルモンと関連しており、閉経後や妊娠・出産をすることでしこりが縮小・消失したりすることもあります。
葉状腫瘍
- 初期のものはしこりとして線維腺腫と似ているものの、急速に大きくなることが多いのが特徴です。
- 多くの場合は良性ですが、中には良性と悪性の中間のものや、転移を起こす可能性の高い悪性のものもあります。
- 治療の原則はしこりの完全摘出です。
- 葉状腫瘍は周囲への広がる力が強いため、しこりより大きめの範囲を摘出することが大切です。
- 再発することも少なくなく、しこりが大きい場合は乳房を全摘する場合もあります。
乳腺炎
- 乳腺炎とは出産後に乳腺に母乳がうっ滞することや、乳首より乳腺に細菌が入ることによって起こる乳腺の炎症です。炎症なので良性です。
- 赤く腫れたり、痛み、膿、しこりなどがみられます。
- 特に授乳期には母乳が乳腺内にたまり炎症を起こすことが多いです。
- 治療としては抗菌薬の使用、母乳の滞りを取り除くためのマッサージなどを行います。
- 改善しない場合は皮膚を切開して膿を出す処置をする場合もあります。
- まれに炎症性乳がんといって乳房全体が赤く腫れる乳がんもあるので、乳房全体が赤く腫れる場合は乳腺クリニックや乳腺専門医を受診してください。
のう胞
- 乳管の中に液体がたまり、袋になったものです。良性です。
- 袋は数ミリから4-5cmになるものまであり、多くの女性にみられます。
- 超音波検査をすればすぐに診断がつきます。
- 大きくなり、乳房の痛みや張り感がある場合は、注射器で内容液を吸引する場合もあります。
乳管内乳頭腫
- 乳管の中に出来たポリープが乳管内乳頭腫です。
- 乳管の中にあるために、乳首から分泌物が出ることがあり、時には分泌物中に血液が混じることもあります。
- 良性ですが、乳管内の乳がんとの見分けが難しく、腫瘍の一部をとって確定診断します。
乳がん
- 40歳代以上に多く、高齢出産した人、授乳歴の少ない人、肥満の人、親族で乳がんにかかったことのある人などが乳がんになりやすいことがわかっています。
- しこりとしては痛みがなく、硬いしこりでしこりが動きにくいのが特徴です。
- 乳首から血の混じった分泌液が出る場合もあります。
- 進行すると、皮膚にへこみが出たりします。
- 早期発見できれば他のがんより治る確率は高いです。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 良性のしこりの一部は、比較的弾力があり、ころころと動く傾向が見られます。
- これに対して、乳がんのしこりは硬い場合が多く、しこりが周囲の組織とくっつくため、しこりが動きにくいのが特徴です。
- ただし自己判断は難しいです。乳腺専門医の方でも触診だけで診断するのは大変難しいです。
- 乳房のしこりに気付いたら、一人で悩まずに早めに乳腺クリニックや乳腺専門医を受診することが大切です。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 日本乳癌学会のHPで都道府県別に乳腺専門医の氏名と所属が明記されています。調べて、受診する参考にしてください。
- http://jbcs.gr.jp/member/aboutus/senmonilist/