乳がんスクリーニング:どんな検査? ハイリスクといわれたら?
更新日:2020/11/11
- 乳腺専門医の鈴木 昭彦と申します。
- 乳がんは早期発見、早期治療で救命できる可能性が高いがんです。
- 乳がんスクリーニング(乳がん検診)は早期発見の切り札ですが、万能ではなく、そのメリットと限界について正しく理解して利用することが大事です。
- 効果的にスクリーニングを利用するための知識を紹介いたします。
目次
まとめ
- 乳がんスクリーニングは乳がん検診と同じ意味です。
- 乳がんスクリーニングは、主にマンモグラフィと超音波で行われます。
- 自覚症状が出る前の早期の乳がんをみつける乳がんスクリーニングは、早期の治療に結びつけることで救命の可能性が高くなります。
乳がんスクリーニングって何をするの?
- 乳がんスクリーニングは乳がん検診と同じ意味です。
- 乳がんは初期の段階では自覚症状がありません。
- その一方で早期に治療を開始できれば命に対する危険性はより小さくすることが可能です。
- 乳がんスクリーニングでは、自覚症状が出る前の早期の乳がんを画像による診断でみつけだします。
どんな検査があるの?
- 2000年以前は視診(目で見て判断する)や触診(触って判断する)のスクリーニングが行われていましたが、この方法では自覚症状のある乳がんとスクリーニングで発見された乳がんとで大きな差はなく、死亡率を下げる効果が期待できないことが明らかとなり、現在では推奨されていません。
- 日本では、2000年にマンモグラフィという乳房のレントゲン検査がスクリーニングの方法として推奨されるようになりました。
マンモグラフィ
- 乳房を板で挟む形で固定し、レントゲン撮影する検査法です。
- 触診では診断できないごく早期の乳がんをみつけることが可能で、この方法でスクリーニングを受けると、受けなかったグループと比較して死亡率が下がることが科学的に証明されています。
- 乳房全体を1枚のレントゲン写真に写すことができるので、多くの方の診断を効率よく行うことができます。
- 短所としては、次のようなことが挙げられます。
マンモグラフィのデメリット
- 少ないながらも放射線の被ばくがある
- 固定の板で挟む際に痛みを生じる
- 乳腺組織の厚い若い年代ではがんが乳腺に隠されてしまう可能性があり、診断の精度が低くなる
超音波
- 乳房の表面に機械を当てて超音波を発生させ、その反射を利用して乳房内を診断する方法です。
- しこりをつくるタイプの乳がんの診断に有効です。マンモグラフィと比べて、次の点では勝っています。
超音波検査のメリット
- 被ばくがない
- 挟む必要がなく痛みもない
- 乳腺組織の厚みは障害になりにくい
- 部分的な所見をとらえるのは得意ですが、乳房全体を1つの画像に記録すことはできないため、スクリーニングの効率はマンモグラフィより落ちます。
- 死亡率を下げる効果があるかどうかは未確定です。
どんな人が受けたらいいの?
- マンモグラフィの乳がんスクリーニングで、死亡率減少の効果が証明されているのは40歳以上74歳までの女性ですので、この年代の女性はぜひ検診を受けてください。
- 20代、30代の女性にもまれに乳がんはみつかりますが、スクリーニングを受けることのメリットと、不要な検査を受けることのデメリットが同じくらいあるので、一般的には39歳以下の女性のスクリーニングは推奨されません。
- 血縁のある方に乳がん患者がいるなどの特殊な事情のある方は、医療機関で相談してみてください。
乳房にしこりを感じますが、スクリーニングを受けたほうがいい?
- スクリーニングは基本的に自覚症状のない、表面上は異常のない方が受診するものです。
- 乳房に次のような自覚症状を感じている方は、スクリーニングではなく、医療機関(乳腺科)を受診してください。
乳腺科を受診していただきたい症状
- しこりがある
- 乳頭からの分泌物に血液が混じっている
- 発赤がある
- スクリーニングで異常なしと判定を受けても、気になる症状が出現した際には、スクリーニングの結果を過信せずに速やかに医療機関を受診してください。
マンモグラフィと超音波、どちらがいいの?
- 死亡率減少の効果が証明されているのはマンモグラフィです。
- 超音波検査は乳がんを多く発見できますが、死亡率を減少できるかどうかは未確定です。
- マンモグラフィと超音波はそれぞれに得意な診断分野が違うので、優劣をつけることは困難です。
- 40代の女性でマンモグラフィと超音波を両方行うことで、乳がんの発見がどれだけ増えるか、死亡率の減少効果がみられるのかを検証する研究がいま進められています。
高濃度乳房といわれましたが、どうすればいい?
- 乳房は、脂肪と乳腺組織とで構成されています。
- 乳腺の割合が高い乳房はマンモグラフィでは白く(高濃度)にみえるため、がんの腫瘤【しゅりゅう】(腫れもの、かたまり)などが隠されて発見しにくいことがあります。
- 高濃度乳房は、高濃度ではない乳房と比べると乳がんが発生する可能性が高いことが知られており、この意味からもハイリスクといわれています。
- 高濃度乳房ではマンモグラフィによるスクリーニングでの見落としを回避する目的で、超音波の追加などが有効ではないかと期待されていますが、死亡率の減少効果は証明されていませんので、おすすめできる根拠はありません。
- 高濃度乳房は個人ごとの個性であり、決して病気ではありません。
- 高濃度乳房といわれても過度に反応することなく、なにか心配な所見を自覚した際には速やかに医療機関で相談することを心がけてください。
追加の情報を手に入れるにはどうしたらいいの?
- 日本乳癌学会のHPで「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」が紹介されています。
- http://jbcs.gr.jp/guidline/p2019