下血:原因は?下痢や血便との違いは?色や量…どんな場合に受診が必要?
更新日:2020/11/11
- 消化器内科医の古出 智子と申します。
- 突然下血になったり、ひどい下血が何日も続いたりすると、心配になりますね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、下血の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけど本当は説明したいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 下血(げけつ)は、食べ物の通り道である、食道・胃・小腸・大腸のどこかで出血し、肛門から血が出された状態をいいます。
- 出血した場所によって、色が変わります。黒っぽいこともあれば、真っ赤の時もあります。
- 血が出続けていると貧血になり命にかかわる状態にまでいく可能性もあります。また、大きな病気が隠れていることがありますので、早めに病院を受診してください。
下血とはどんな症状?
- 下血(げけつ)とは、食べ物の通り道である消化管(口から肛門まで)から出血し、肛門から外に出ることです。
- 一般的には中高年の方に見られやすいものですが、原因によっては若者でも起こります。
色と出血の場所
- 出てきた血の色によって、血が出ている場所をある程度推測することができます。
- 食道や胃(口に近い方)から出ている場合:黒っぽい便が出ます。墨のような黒さです。
- 大腸から肛門までのどこかから出ている場合:真っ赤に近い色になることが多いです。
下血の主な原因とその説明
- 下血になる原因の多くは、口から肛門までの食べ物の通り道のどこかから血が出ていることです。
- 基本的には口に近い場所からであれば黒っぽい色、肛門に近い場所であれば赤色です。
- 下血の量が多い場合や、しばらく続く場合にはなるべく早く病院を受診するようにしてください。
よく見る病気
- 痔(じ):痔は肛門の病気で、「いぼ痔」、「切れ痔」など聞いたことがあるかと思います。便秘気味で硬い便が出る、トイレで強く息んでしまう、座りっぱなしの時間が長いという方に多く見られます。痛みのない場合も多く、突然赤い血が出て驚くことがあります。
- 虚血性腸炎:何らかの原因で腸に栄養を送る血管の血行が悪くなり、腸の壁がこわれて血が出ます。50歳以上に多く、突然のおなかの痛み、下痢・下血が特徴です。
- 感染性腸炎:食べ物などを介してばい菌がおなかの中に入り、腸に悪さして、おなかの痛み、下痢、おう吐、熱、下血などが出る病気です。
- 大腸憩室出血:大腸の壁にできた、外側に袋状に飛び出したくぼみである憩室【けいしつ】から血が出ることがあります。自然に止まることもあれば、まれに大量に下血する場合があります。また、憩室自体はあっても問題ありません。
- 大腸癌:死亡率は、女性は1位、男性で3位であり、早期発見が非常に重要な癌です。肛門の近くにできた場合は進行すると下血が見られますが、下血しない場合もあります。また、トイレに行くたびに下血するわけではありません。40歳以上の方には大腸がん検診を受けていただくことをおすすめします。便を提出してもらい、血が混じっていないか調べます。
- 小腸腫瘍:他の食道・胃・大腸の腫瘍と比べて、発生頻度は少ないですが、下血で見つかることがあります。近年カプセル内視鏡や小腸内視鏡などで病気が発見できるようになっています。
- クローン病・潰瘍性大腸炎:炎症性腸疾患ともいわれ、若い人でもみられる原因不明の慢性的な腸の炎症性疾患です。長く続く下血・下痢がある場合は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
- 胃・十二指腸潰瘍:胃や十二指腸の壁が一部えぐれてしまった状態で、局部的に壁が薄く血が出やすくなっています。典型的には、みぞおちの痛みと黒い便が出ます。
- 食道・胃静脈瘤:食道や胃の表面近くを通る血管が大きく膨らんでこぶ状になった状態です。ふくらみが大きくなると破れて血が出ます。口から血を吐く場合もあります。肝臓が悪い方に見られることが多いです。
- 胃癌:進行すると胃潰瘍のような状態になり、血が出やすくなります。血が出続けると、黒っぽい便が出たり貧血になったりします。また、体重が減り、物が飲みこみにくくなることが多いです。
コラム:下血の原因と検査
- 下血がある中高年の患者さんでは、感染性腸炎が強く疑われる場合を除いて、大腸内視鏡検査を受けるように勧めてください。
- 若い方でも、慢性的な下血のエピソードがあれば、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患が原因の場合もあるので、一度専門の病院を紹介してみてもよいと思います。
コラム:大腸癌
- 大腸癌は、男女ともにかかる人が多く、死亡率でも女性で1位、男性で3位に入る癌です。
- 早期は無症状であることが多く、発見に時間がかかる癌です。症状が出た時にはすでに大きくなっている可能性があります。
- 典型的には、便秘などの便通異常、下血が見られます。
- がん検診では、便を提出してもらい、便に混じる微量の血を検出します。便潜血検査といい、早期大腸癌の発見に有用といわれています。これが陽性である場合、大腸癌の可能性がありますので、必ず大腸内視鏡検査を受けるように勧めてください。
こんな症状があったら救急車を!
- 下血と一緒に、口からも血を吐いてしまっている
- 下血の量が多く、冷や汗やふらつき、立ちくらみがある
下血に対して、よくなるために自分でできることは?
食事について
- 下血が続いている場合、水分をとることには大きな問題はありませんが、食事については病院で食べていいかどうか相談してからが望ましいです。
- 下血が続いている時はお酒は飲まないようにしてください。
お薬について
- 普段飲んでいるお薬がある場合や、最近飲み始めたお薬がある場合、飲み続けるべきかどうかはかかりつけ医に確認してください。
- 心疾患や脳血管疾患などで、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、受診の際、その薬剤名を伝えてください。
- 下血に効く市販薬はありません。また、下痢止めは下血が悪化する恐れがありますので、飲まないようにしてください。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 内科や外科のかかりつけ医がいる場合は、その医師に下血の相談をして、必要があれば適切な専門医に紹介してもらってください。
- かかりつけ医がいない場合は、消化器内科・消化器外科を専門としている医師がいる医療機関を選ぶことをお勧めします。必ずしも大きな総合病院である必要はありません。
- 繰り返す下血があれば、長期間そのままにしておかず、医療機関を受診してください。
お医者さんでおこなわれること
- まずは症状についてくわしくお聞きします。下記のような情報をまとめてきていただけると役立ちます。
診療の助けになる情報
- 以前から下血があるのか?初めてなのか?
- 下血以外に、下痢やおなかの痛み、熱などはないか?
- 飲んでいるお薬はあるか?
内視鏡検査のすすめ
- 下血があった場合、急性の下痢が中心であったり、薬剤性が疑われる場合であったり、若い方の場合以外は、基本的には、内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。
- 内視鏡検査は受けたことがない場合、抵抗を感じると思いますが、日本は内視鏡検査を行っている医療機関が多いので、まずは相談されてみることをお勧めします。
- 診療所やクリニックでも、大腸内視鏡検査を行っているところもあります。受診した医療機関で大腸内視鏡検査を施行していない場合でも、医師が必要と判断した場合は他の医療機関に紹介してくれます。
- 女性の患者さんは、女性の医師に大腸内視鏡検査をしてもらいたいと思われている方もいると思います。最近は女性医師での検査が受けられる医療機関も多いので、その希望を伝えて相談されることをお勧めします。
- 一般的には大腸内視鏡検査は事前の準備が必要なので、下血で受診した場合にその日に検査になることはありません。ただし、大量の下血などで入院となった場合や、医師が必要と判断した場合はその限りではありません。
- 検査に際しては、食事を中止し、洗腸液と言われる液体の下剤を5L前後服用する必要があります。準備の詳細については担当の先生にお聞きください。