双極性障害:どんな病気?性格との関係は?薬で治せるの?仕事はできる?
更新日:2020/11/11
- 精神科専門医の市橋 香代と申します。
- このページに来ていただいた方は、ご自分やご家族が「双極性障害」と言われて、心配されているかもしれません。
- 症状や治療に対する説明や見通しなど、療養に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 双極性障害【そうきょくせいしょうがい】とは、そう状態とうつ状態を繰り返す病気です。
- そう状態では、気持ちが大きくなったり、お金を使い過ぎたり、性的な問題行動を起こしたり、仕事をやり過ぎたりすることが1週間以上続きます。
- うつ状態になると、気分が落ち込んで、眠れなくなったり、食欲がなくなったりすることがあります。そう状態の時の行動を悔やんで落ち込むことも多いです。ひどい時は、生きていてもしかたがないと考えてしまう人もいます。
- 患者様自身では、小さなそう状態に気付かずに、診断が遅くなることもあります。周囲の方が、あまり眠れていない状況などで受診をうながして診断につながることがあります。
- 治療では、お薬を飲み、気分の波を落ち着かせることが大切です。
双極性障害は、どんな病気?
- 双極性障害は、そう状態とうつ状態を繰り返す病気です。
- そう状態とは、気持ちが大きくなって、大金を使い過ぎてしまったり、怒りっぽくなったり、性的な問題行動が増えることがあります。
- 一方、うつ状態は、気分が落ち込んで、眠れなくなったり、食欲がなくなったりすることがあります。
- 双極性障害には、Ⅰ型とⅡ型があります。Ⅰ型は、激しいそう状態とうつ状態を繰り返します。Ⅱ型は、うつ状態が長く続くうちに、「ちょっと頑張り過ぎて寝なくても平気」程度の、軽いそう状態が出てきます。
双極性障害と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- うつ状態が続き、何日も眠れなかったり、ご飯が食べられなくて体重が減ってしまったり、仕事に行けなくなったりする場合には、精神科を受診してください。
そう状態が気になる方がいた場合
- そう状態はご本人に自覚がないことが多いです。気になる方がいたときは、「あまり眠れていないのではないか?」などを理由に受診をすすめていただけるとよいと思います。
本人が精神科を受診したがらない場合
- ご本人が信頼する人から、体の心配を理由に受診を勧めてもらうのもひとつのやり方です。
- 住んでいる地域の保健所や障害福祉課などにご家族が行って、受診方法を相談することが必要かもしれません。
双極性障害になりやすいのはどんな人?原因は?
- 人づきあいがよい、親切、活動的で熱中しやすい性格の人は、双極性障害になりやすい体質をもっているかもしれません。
- 肉親の死、就職、結婚、出産などのストレスが引き金となって発症したり再発したりすることもあります。
- およそ100人に1人くらいの方が、一生のうちに双極性障害にかかると言われています。男女の差はありません。
診断に時間がかかることもあります
- うつ病だと思っていて軽いそう状態に気づかなかったり、あとからそう状態になったりすることも、少なくありません。
- うつ病の方の10人に1人は、後から双極性障害とわかるとも言われています。
どんな症状がでるの?
- そう状態とうつ状態でそれぞれ以下のように症状が異なります。
- そう状態のとき:睡眠時間が短くてもがんばれる、よいアイディアが次々浮かぶ、仕事がバリバリできる、自分が偉くなったように感じる、でもなんだかイライラして腹がたつ、などの症状が出て、1週間以上続きます。
- うつ状態のとき:何週間も1日中、毎日毎日、ゆううつな気分が続きます。いやな気分は朝に強いことが多く、食欲もなくなり、体重が減ってしまうこともあります。ひどい時は何も考えられなくなり、生きていてもしかたがないと考えてしまう人もいます。便秘やのどのかわき、立ちくらみなどの体の症状が出る人もいます。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 医師はまず、症状の強さや症状が続いている期間などのお話を伺います。また、そう状態やうつ状態は病気や薬の影響で起きることもあるので、病気がないか、お薬を飲んでいないかも確認します。
- 脳の病気が原因かもしれないと考えられた場合には、頭のCTやMRIなどの検査が行われます。
- 血液検査や尿の検査でわかる病気が原因のこともあり、これらの検査を行うこともあります。
どんな治療があるの?
- ご自分の症状に気づくことが、治療の一歩です。病院を受診していただき、気分を安定させるお薬を飲みながら、気分の波を抑えることが治療の基本です。
- 気分の波がある病気ですので、安定している時にご自分の経過を振り返って、そう状態やうつ状態になった時の対策について考えておきます。
症状が出たときの対策
- うつ状態のときは、可能な限りストレスを避けて、自殺を予防することが必要です。
- 経過によっては、仕事を一時的に休む、入院して休養することも考えてください。
- うつ状態が重い時や長引く時には、電気けいれん療法も検討されます。
- そう状態のときは、お金を使いすぎたり、信用を失ったりする前に、入院治療で症状を抑える必要があることが多いです。
リハビリテーション
- 症状が落ち着いたら、社会復帰のためのリハビリテーションを行います。
- ストレスとの付き合い方を身につけて、睡眠のリズムを整えることが大切です。
周囲の方のサポート
- ご家族や周囲の理解やサポートは、病気の回復に向けた大きな力となります。
- しかしながら、患者さんの見守りや入院の判断など、家族だけで抱えるには大変なことも多くありますので、病院や保健所などの専門家と積極的にご相談ください。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 治療を受けてお薬を処方されたら、以下の点に気を付けてください。
お薬について
- 治療の基本となる気分安定薬は、症状が落ち着いてからも飲み続ける必要があります。お薬は主治医の処方どおりに続けてください。
- いきなり薬をやめたり、突然飲み始めたりすると、重い副作用につながることがあります。事情があって薬がのめなかった時には、必ず医師にお知らせください。
- 体調の変化で薬が効き過ぎる場合もあります。手の震えなどいつもと違う症状が出たら病院に連絡してください。
妊娠や授乳
- 妊娠を希望される場合や、授乳を行う場合は、あらかじめ主治医と相談してすすめてください。
運転
- 薬や病状の影響がある可能性があります。必ず主治医と相談してください。
予防のためにできることは?
- 双極性障害になりやすい体質で心配な方は、そう状態やうつ状態の症状についてあらかじめよく理解することをおすすめします。早めに異変に気づくことが役に立ちます。
- お葬式、結婚や出産、進学や就職など大きなストレスがかかる時には、睡眠不足に気をつけてください。
- そう状態やうつ状態の影響で、飲酒や食事などの生活習慣が乱れるリスクがあります。ふだんから体の健康に気をつけてください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 双極性障害は、再発を繰り返しやすい病気です。
- そう状態やうつ状態が良くなっても、再発予防のためにしばらくはお薬を飲み続けていただくことが必要です。どのくらい飲み続けるかは主治医と相談しながら決めていきます。
- ただ、そう状態やうつ状態を何回も経験した場合は、薬をずっと続けていただくことが多いです。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本うつ病学会のサイトに、双極性障害とのつきあい方や診察で使える睡眠覚醒リズム表などが載っています。下記を参考にしてください。
- http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/