生物学的製剤:どんな薬?どんな病気で使うの?効果や副作用は?費用は?
更新日:2020/11/11
- リウマチ専門医の森信 暁雄と申します。
- このページに来ていただいた方は、関節リウマチの治療についてのお悩みがあり、生物学的製剤の処方を希望されておられるかもしれません。
- 生物学的製剤を始めるにあたり、それがどのような薬であるのかについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 関節リウマチでよく使われる生物学的製剤というお薬は、体内にある抗体という物質を作り出して、薬として使用するものです。
- 関節リウマチの炎症(痛みや腫れ)を強く抑える効果があり、点滴や皮下注射として使われます。
- 抗リウマチ薬に比べて強い効果があります。抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)の効果が不十分だった方でも、生物学的製剤が有効であることが多いです。
- 副作用としては、感染症にかかりやすくなります。お薬を使っていない方ではかかりにくい結核やニューモシスチス肺炎などにも注意が必要です。
どんなくすり?おおよその値段は?
- 関節リウマチで使われる生物学的製剤は、体内にある抗体という物質を最新の技術によって作り出して、薬として使用するものです。
- 関節リウマチの炎症を抑えて、痛みや腫れを少なくする効果があり、点滴や皮下注射として使われます。現在8種類の生物学的製剤があります。
- 値段は薬剤の種類によって変わりますが、通常の量では月々およそ8万円~14万円です。保険で3割負担の方の場合、月々2万5千円~4万円くらいになります。薬の量を増やした場合には2倍程度の費用が掛かります。
- 高額療養費制度などの医療福祉制度を利用できる場合があります。
- 生物学的製剤の場合、成分が同じジェネリック薬品のことをバイオシミラーといいます。一部の生物学的製剤についてはバイオシミラーが発売されていて、値段は6~7割程度です。
どんな目的で使用するの?
- 関節リウマチの患者の方の関節の炎症を和らげて、関節の変形を予防するために使います。
- 関節リウマチの治療薬では、始めに抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)や痛み止めが使用されます。抗リウマチ薬を飲んでも炎症が収まらない時に生物学的製剤を使います。炎症が収まらないと、関節が徐々に変形してしまうからです。
- 抗リウマチ薬に比べて強い効果があります。抗リウマチ薬の効果が不十分だった方でも、7割程度の方には効果があり、2割程度の方にはとてもよく効きます。残念ながら効果のない患者様もいらっしゃいます。
- 生物学的製剤が効果的な疾患は、関節リウマチです。上述のように抗リウマチ薬を使用しても関節の痛みや腫れが取れない場合に使います。
- 関節リウマチのほかに、強直性脊椎炎、ベーチェット病、大動脈炎、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、成人スチル病などの治療にも使われます。
どのように治療を受けるの?
- 生物学的製剤には、点滴のお薬と皮下注射のお薬があります。
- 点滴の場合は、1-2カ月に1回通院して、点滴を受けます。点滴時間は30分~2時間程度です。薬の種類や量によって通院の間隔や点滴にかかる時間が違います。
- 皮下注射の場合は、薬によって1、2週間または4週間に1回皮下注射をします。自宅に持ち帰り自分で注射をしますが、通院して注射することもできます。自分で注射する場合は、注射の仕方や注意点を習い、自分で注射できるようになってから家に持ち帰って自己注射を始めます。
- 決められた量と間隔を守って、医師の指示通りに注射することが大事です。自分で勝手に変えることはお勧めできません。
治療の期間はどれぐらい?
- 治療を始めたら、数か月は続けて生物学的製剤の効果をみましょう。
- 効果が全くない場合は、他の生物学的製剤に変えることを考えます。
- 効果がある場合は、治療を続けます。継続しても腫れや痛みが残っている場合には、薬の量を増やしたり、薬を使用する間隔を短くしたり、あるいは薬を変えたりします。
- 充分に効いて腫れや痛みがほぼない状態になったら、お薬を中止することも考えられます。生物学的製剤を中止しても腫れや痛みがないままの状態でいられる方もいます。逆に数カ月から数年で再び腫れや痛みが出てしまう方もいますが、この場合はお薬を再開します。どのような方で、いつ中止できるかについては、まだ結論がありません。
- 腫れや痛みがほぼない状態になったら、お薬の量を減らしたり、注射の間隔をあけたりする場合もあります。
副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの?治療中の注意点は?
- 生物学的製剤を使用している方は、感染症にかかりやすくなります。お薬を使っていない方ではかかりにくい結核やニューモシスチス肺炎などの感染症にも注意が必要です。
- 皮下注射部位に赤みやかゆみがでたり、点滴時に発熱や皮疹がおこることがあります。
患者さんからよく聞かれるご質問
生物学的製剤を使用すると、その他のリウマチの薬はどうなりますか?
- 今飲んでいる薬はそのまま飲み続けます。痛みや腫れが引いてきたら、その他の薬を減らすことも可能です。ステロイド剤を飲んでいる場合は、まずステロイド剤を減らして中止することを考えましょう。
風邪を引いている場合や熱がある場合は、注射はどうしたら良いでしょうか?
- 高熱や、明らかな感染症がある場合は注射を延期することがあります。医師に相談してください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 下記のページが参考になります。
- 日本リウマチ学会
- https://www.ryumachi-jp.com/
- 日本リウマチ財団(リウマチ情報センター)
- http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/senikintsu.html
- 日本リウマチ友の会
- http://www.nrat.or.jp/
- 難病情報センター
- https://www.nanbyou.or.jp/
もっと知りたい 生物学的製剤の基礎知識
どのような種類があるの?それぞれの特徴は?
- 現在使用可能な薬剤を、標的の抗体ごとにまとめました。
TNFα
- インフリキシマブ(商品名レミケード):点滴、4-8週毎
- エタネルセプト(商品名エンブレル):皮下注射、週1-2回
- アダリムマブ(商品名ヒュミラ):皮下注射、2週毎
- ゴリムマブ(商品名シンポニー):皮下注射、4週毎
- セルトリズマブ(商品名シムジア):皮下注射、2週毎
IL-6
- トリシリズマブ(商品名アクテムラ):皮下注射、1-2週毎/点滴、4週毎
- サリルマブ(商品名ケブザラ):皮下注射、2週毎
CD80/86
- アバタセプト(商品名オレンシア):皮下注射、1週毎/点滴、4週毎
バイオシミラーにはどんなものがあるの?
- 2018年12月現在、TNFαを標的としたインフリマキシブとエタネルセプトにバイオシミラーがあります。
- インフリマキシブの先行品はレミケードですが、インフリキシマブBSとして、各社で製造されています。
- エタネルセプトの先行品はエンブレルですが、エタネルセプトBSとして、各社で製造されています。