前立腺肥大症:どんな病気?症状は?尿が出づらくなる?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 泌尿器科専門医の舛森 直哉と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分は前立腺肥大症かな?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 前立腺肥大症は、50歳以上の男性の方に多い前立腺の病気です。
- おしっこの勢いがない、おしっこが近い、夜中におしっこに起きる、などの症状が出ます。
- 前立腺がんなど、他の病気でも前立腺肥大症と同じ症状が出ることもあるため、気になる症状があれば病院にご相談ください。
前立腺肥大症は、どんな病気?
- 前立腺肥大症とは、年を取ることで大きくなった前立腺がおしっこの通り道を圧迫し、おしっこが出にくくなる病気です。おしっこが出にくくなるだけではなく、おしっこに頻繁に行きたくなったり、夜中におしっこのために起きてしまうなどの症状もあります。
- 前立腺とは、膀胱(ぼうこう;おしっこを一時的に溜める場所)の出口で尿道(にょうどう;尿の通り道)を取り囲むように存在しています。
前立腺肥大症と思ったら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような症状が出て、困ったな、何とかならないかな、何が原因か心配だな、と思ったら泌尿器科のある病院にご相談ください。
- 特におしっこに血が混じっている場合、膀胱がんの可能性もあるので、必ず受診してください。
前立腺肥大症を疑う症状
- おしっこの勢いがない
- おしっこに頻繁に行きたくなる
- 夜中におしっこのために起きてしまう
- おしっこが出なくなった
- なお、上記の症状と一緒に下記の症状があった場合は、緊急を要するので、すぐに病院を受診してください。
急を要する症状
- 前立腺肥大症を疑う症状があり、38度以上の高熱がある
- 前立腺肥大症を疑う症状があり、おしっこが全くでなくなり、下腹部が張って苦しい
受診前によくなるために自分でできることは?
- 残念ながら受診前に前立腺肥大症がよくなるためにご自身でできることはありませんが、チェックすべきことはいくつかあります。
受診前にチェックすべきこと
- 飲んでいる薬がおしっこの出具合に影響を与えていないか?先生や薬剤師さんに確認してください。
- 水を飲み過ぎていないか?たくさん水を飲むとトイレの回数は増えます。
- 太り過ぎていないか?太り過ぎの人は、体重が減るとおしっこの症状が良くなるといわれています。
- 適度な運動、バランスのとれた食生活ができているか?前立腺肥大症を悪化させる生活習慣病を予防します。
前立腺肥大症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 年をとると、大きくなる程度に差はありますが、皆さん前立腺肥大症になります。前立腺が大きくなりすぎてしまうとおしっこの症状がでてくるわけです。
- 大きくなりすぎてしまう要因として、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常症があります。メタボリック症候群の方も、前立腺が大きいことが知られています。これらを防ぐためにも、適度な運動、バランスのとれた食生活が大切になってきます。
どんな症状がでるの?
- 前立腺肥大症によって以下のような症状が出ます。
前立腺肥大症によっておこる症状
- おしっこをしているときの症状:おしっこの勢いがない、おしっこが途切れる、お腹に力を入れないとおしっこが出ない、など
- おしっこをした後の症状:おしっこが終わってもおしっこが残っている感じがする、など
- おしっこを膀胱に溜めているときの症状:昼間おしっこが近い、急におしっこがしたくなりがまんするのが難しい、など
- 夜中、寝ているときの症状:夜間に何度もおしっこに起きる
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まずはこれまでにかかった病気、いま飲んでいるお薬などをお聞きし、おしっこの症状によってどれだけ困っているかを伺います。その後、次のような検査を行います。
検査の種類
- 直腸診:医師がおしりの穴に指を入れて、前立腺を触り、硬さ、大きさをチェックします。不快な検査ではありますが、前立腺の病気を診る上で重要な検査です。
- 尿検査:おしっこに血やばい菌が混じっていないかをチェックします。
- 血液検査:前立腺肥大症と同じような症状が出る前立腺がんの可能性がないかを判断します。
- 超音波検査:前立腺の大きさを見ます。
- この他にもおしっこの勢いを測定する検査やおしっこを出した後に膀胱におしっこが残っている量を測定する検査を追加することもあります。
どんな治療があるの?
- 前立腺肥大症の治療は、お薬を飲んでいただくお薬の治療と、手術による治療があります。
お薬の治療
- 5α還元酵素阻害薬:肥大した前立腺を小さくするお薬で、尿道の圧迫をやわらげます。効果があらわれるまでに数か月かかります。
- α1遮断薬:前立腺内の筋成分の緊張を取るお薬で、尿道の圧迫をやわらげます。すぐに効果があらわれるお薬ですが、重症の場合は長期的な効きめがよくないこともあります。
- ホスホジエステラーゼ5阻害薬:前立腺内の筋成分の緊張を取るお薬で、尿道の圧迫をやわらげ、膀胱の血液の巡りをよくします。すぐに効果があらわれるお薬ですが、長く飲み続けた場合の効果はよくわかっていません。
- 過活動膀胱治療薬(抗コリン薬やβ3作動薬):おしっこを我慢できずに漏れそうになる場合、膀胱の緊張を和らげるお薬を追加する場合もあります。
手術
- 手術は、通常お薬を飲んでいただいても症状が良くならない方に行います。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 前立腺肥大症の治療に使われるお薬には、下記のような副作用や注意点があります。気になることがありましたら、主治医の先生にご相談ください。
薬の副作用、注意すること
- 5α還元酵素阻害薬:起こる頻度は少ないですが、性機能障害が起こることがあります。また、前立腺がんの診断に有用なPSAの値に影響を与えることがあるので、診断が遅れないよう注意する必要があります。
- α1遮断薬:起こる頻度は少ないですが、立ちくらみや鼻づまり、性機能障害が起こることがあります。また、白内障の手術を行う際には、眼科の先生にこの薬を飲んでいることを伝えてください。
- ホスホジエステラーゼ5阻害薬:硝酸薬などの狭心症のお薬と一緒に飲んではいけません。
予防のためにできることは?
- 肥満の方は、食事に気を付け少しでも体重を減らせるよう心がけてください。
- 予防として、適度な運動、バランスのとれた食生活なども効果的です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- お薬を飲んでいただくことで症状を抑えることはできますが、前立腺肥大症そのものを治すことはできません。気になる症状がぶり返さないよう、お薬は飲み続ける必要があります。
- 手術の中には、効果が長く続く方法も出てきています。主治医の先生にご相談ください。