IgG4関連疾患:どんな病気?何科を受診すればいいの?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- リウマチ専門医の坪井洋人、住田孝之と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「IgG4関連疾患」との診断をうけられ、どんな病気なのだろうかと不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- IgG4関連疾患は、抗体の一つであるIgG4を作る形質細胞とリンパ球が集まり、炎症と線維化をおこして臓器の腫れなどをきたす、原因不明の病気です。
- 病気は全身のあらゆる臓器に起こるので、診断時には全身の検査が必要です。また、同時にがんがみられる場合があるので注意が必要です。
- 代表的な病気が起こる場所は、神経、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、肝臓、胆道、腎臓、膵臓、胃腸、前立腺、リンパ節、血管、乳腺、皮膚、後腹膜などです。
- 治療としてステロイドが有効ですが、ステロイドの量を減らした後に、固まりや臓器の腫れがまた悪くなることがあります。慎重に経過をみる必要があります。
IgG4関連疾患は、どんな病気?
- IgG4関連疾患は、抗体であるIgG4を作る細胞(形質細胞)と免疫をつかさどる細胞(リンパ球)が集まり、炎症と線維化をおこして臓器の腫れをきたす病気です。
- 病気は全身のあらゆる臓器に起こります。主として、神経、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、肝臓、胆道(胆汁の通り道)、腎臓、膵臓、胃腸、前立腺、リンパ節、血管、乳腺、皮膚、後腹膜(お腹の中の後ろ側)などです。
IgG4関連疾患と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- IgG4関連疾患の診断のきっかけには、以下のようなものが挙げられます。
IgG4関連疾患の診断のきっかけ
- 体の表面の腫れもの(涙腺、唾液腺、甲状腺、リンパ節、皮膚、乳腺など)
- 血液検査の異常(IgG、IgG4の上昇など)
- 画像検査の異常(体の中の固まり、臓器の腫れなど)
- IgG4関連疾患を疑って医療機関をはじめて受診するケースは多くはありません。前述した症状や検査の異常から医療機関を受診し、追加で行った検査の結果からIgG4関連疾患が疑われる場合がほとんどです。
受診前によくなるために自分でできることは?
- IgG4関連疾患を患者さんご自身で診断し、治療することは難しいです。体の表面の腫れものや検査異常を認めた場合には、医療機関で検査を受けてください。
- 体の表面の腫れもの以外の症状はあまりないので、血液検査、画像検査を含めた健診を定期的に受診することが、IgG4関連疾患を含めた多くの病気の早期発見に重要です。
IgG4関連疾患になりやすいのはどんな人?原因は?
- 残念ながら、IgG4関連疾患の原因は不明です。
- 遺伝的要因と環境要因(感染症など)が合わさって、IgG4関連疾患につながると考えられています。
どんな症状がでるの?
- IgG4関連疾患では、全身のさまざまな臓器に病気が起こり、病気が生じた臓器により、症状も異なります。
- 下記に代表的な臓器の病気と症状をまとめて示します。
IgG4関連疾患の代表的な症状
- 涙腺・唾液腺:腫れ、目や口の乾燥症状(ドライアイ、ドライマウス)
- 肝臓・胆道(胆汁の通り道)・膵臓:お腹の痛み、黄疸(眼球や皮膚が黄色くなる)
- 後腹膜(お腹の中の後ろ側):お腹の痛み、水腎症(腎臓からの尿の流れが悪くなり、腎臓が腫れる)
- 肺:咳、痰、呼吸が苦しい
- リンパ節:腫れ
- 甲状腺:腫れ、甲状腺機能(甲状腺ホルモンの分泌)の異常
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- IgG4関連疾患が疑われる場合には、まずは症状やその経過を伺い、体の診察や画像検査(CT、MRI、エコー、PET-CTなど)で臓器の腫れ、固まりを確認します。
- また血液検査で、血液中のIgG4が高くなっているかどうかを確認します。135 mg/dl以上で、高IgG4血症と判断されます。
- さらに、組織を取って顕微鏡で見る病理組織学検査で、IgG4を作る細胞(形質細胞)と免疫をつかさどる細胞(リンパ球)の集まり、組織の線維化(線維組織が増えること)があるかどうかを確認します。
- 最初に見つかった臓器の病気以外に、IgG4関連疾患による病気がないかどうか、また癌や感染症の合併がないかどうか、全身を詳しく調べます。
どんな治療があるの?
- 治療では、ステロイド(副腎という臓器からつくられるホルモン)の薬が、最も効果的です。
- しかし、薬の量を減らしたり、中断することで、症状がまたあらわれたり悪化することもしばしばみられ、課題となっています。
コラム:治療の流れ
- ステロイドの初期治療で症状の改善がみられたら、臓器の腫れ、血液中のIgG4値の変化などをみながら、徐々にステロイドの減量を行います。
- ステロイド減量後は、必要最低限量を継続し、症状がまた現れたり、悪化しない状態が維持できたりした場合には、ステロイドの中止を検討します。
- ステロイド減量後・中止後にまた症状があらわれた場合(再燃後)は、ステロイドの再開や増量で改善が得られることが多いですが、再燃後のステロイド減量はより慎重に行い、状況により免疫抑制薬(ステロイド以外で体の免疫反応を抑える作用をもつ薬)の併用を検討します。
- ステロイド初期治療に対する反応は、通常2週間後には認められますので、薬の効果があらわれない場合には、癌や他の病気の可能性を念頭に、再度詳しい評価が必要です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- IgG4関連疾患に最も効果的な治療薬であるステロイドには、感染症、高血圧、脂質異常症、糖尿病、食欲亢進、肥満、骨粗鬆症、不眠、便秘、白内障、緑内障など様々な副作用があります。主治医の先生からよく説明を受けてください。
- 特に、ステロイドの副作用である食欲亢進では、食欲のままに食べると、血糖値や脂質の上昇に加え、特徴的な肥満(顔が丸くなる満月様顔貌、お腹周りの皮下脂肪が増える中心性肥満)が進むので、注意が必要です。
予防のためにできることは?
- IgG4関連疾患の原因はいまだ不明のため、残念ながら現時点では確実な予防方法はありません。
- 体の表面の腫れもの(涙腺、唾液腺、甲状腺、リンパ節、皮膚、乳腺など)や、血液検査の異常(IgG、IgG4の上昇など)、画像検査の異常(体の中の固まり、臓器の腫れなど)を認めた場合には、放置せずに医療機関を受診することが、IgG4関連疾患を含めた病気の早期発見、早期診断に重要です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- IgG4関連疾患には、ステロイドを使い続けることで症状があらわれなくなる方もいらっしゃいます。ただ、ステロイドの量を減らした後に症状が再び出る方もいらっしゃいます。侵されている臓器、ステロイドの使い方によって違いがありますが、症状が再び出る方は、20~50%程度と報告されています。
- 現時点でのIgG4関連疾患の治療目標は、完全に治すというよりは、必要最低限量のステロイドの量を飲み続け、症状や血液検査の異常がみられない状態を維持することです。
コラム:寛解について
- 寛解が維持できた場合には、ステロイドの中止を検討しますが、どのくらいの期間寛解が維持できたらステロイドを中止できるのかは十分にはわかっていません。またステロイド中止後、しばらく経ってからの再燃もあり、治癒の判断も明確な基準はありません。
- なお、IgG4関連疾患の膵臓病変(自己免疫性膵炎)では、画像および血液検査で完全な改善が得られた症例では、ステロイド治療の期間として3 年間がひとつの目安であるとされています。
追加の情報を手に入れるには?
- 難病情報センターのホームページに病気の解説(一般利用者向け)が公開されています。
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/4504
もっと知りたい! IgG4関連疾患のこと
医療費の助成について
- IgG4関連疾患は現在国の指定難病(指定難病300)に認定されており、診断基準と重症度分類を満たした場合には、医療費助成の対象となります。詳細に関しては、主治医の先生、または最寄りの保健所にご確認ください。
治療薬であるステロイドの副作用を予防するには?
- ステロイド開始前に、副作用のリスクとなる要因がないかどうか、感染症のスクリーニング検査、血糖値、脂質、骨密度、眼科診察、歯科診察など全身を詳しく調べます。
- 患者さんの年齢や合併症、ステロイドの投与量、スクリーニング検査の結果を参考にして、ステロイドの副作用に対する予防のお薬や治療のお薬を使うこともあります。