抗ヒスタミン薬:どんな薬?どのような種類があるの?飲み方や注意点、副作用は?
更新日:2020/11/11
- 抗ヒスタミン薬を飲み始めていただくにあたり、どのような薬であるのかについて、役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 抗ヒスタミン薬とは、体の中でヒスタミンとH1受容体との結合を抑える薬です。くしゃみ、鼻水、皮膚の腫れ、かゆみなどの症状を抑えます。
- 副作用には、眠くなる、集中力が低下する、おしっこが出づらくなる、緑内障が悪化するなどがあります。
- くしゃみ鼻水がでるタイプのアレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹では有効な薬とされ、治療に用いられています。
どんなくすり?おおよその値段は?
- 抗ヒスタミン薬とは、体の中でヒスタミンとH1受容体との結合を抑える薬です。比較的早く効果を発揮します。
- アレグラ®、アレジオン®、クラリチン®など、抗ヒスタミン薬と同成分のお薬がドラッグストアなどで販売されています。これらのお薬の値段はまちまちですが、1か月分1000-3000円程度です。
- 病院で出されるお薬の値段は1日50-80円程度です。3割負担とすると1か月分450-720円程度です。
コラム:アレルギー症状と抗ヒスタミン薬の仕組み
- アレルギーが起こるときには、食物、花粉、ハウスダストなどの刺激で、体の中にあるマスト細胞などから、ヒスタミンという物質が放出されます。
- ヒスタミンはヒスタミンH1受容体に結合することで、くしゃみ、鼻水、皮膚の腫れ、かゆみなどのアレルギー症状を起こします。このヒスタミンとH1受容体との結合を抑える薬が、抗ヒスタミン薬です。
- ヒスタミンはアレルギー反応の初期に放出されることが知られ(即時型反応)、抗ヒスタミン薬も比較的早くから効果を発揮します。
抗ヒスタミン薬にはどのような種類があるの?それぞれの特徴は?
第一世代抗ヒスタミン薬と第二世代抗ヒスタミン薬
- 抗ヒスタミン薬には現在、第一世代と第二世代があります。
- 第一世代抗ヒスタミン薬は、抗ヒスタミン作用だけでなく、眠気、または、口渇や便秘などの抗コリン作用もあります。
- 第二世代抗ヒスタミン薬は、抗アレルギー薬と呼ばれ、H1受容体との結合を抑えるだけでなく、他のアレルギーを起こす物質の放出を抑えることも知られています。第一世代と比べて眠気が弱く、抗コリン作用も少ないことが特徴です。
第一世代と第二世代抗ヒスタミン薬の主な薬剤
- 第一世代:タベジール®、レスタミン®、ポララミン®、ヒベルナ®、ビレチア®、アタラックスP®、ホモクロミン®、ペリアクチン®など。
- 第二世代:アゼプチン®、ゼスラン®、ニポラジン®、セルテクト®、ザジテン®、ダレン®、レミカット®、アレサガ®、アレグラ®、ディレグラ®、アレジオン®、アレロック®、クラリチン®、デザレックス®、ルパフィン®、エバステル®、ジルテック®、タリオン®、ザイザル®、ビラノア®など。
ピペリジン/ピペラジン系と三環系
- 抗ヒスタミン薬は、ピペリジン/ピペラジン系と三環系にも分類されます。効果が不十分な時に他の系に変更することで、治療効果がみられることがあります。
ピペリジン/ピペラジン系と三環系による主な抗ヒスタミン薬の分類
- ピペリジン/ピペラジン系:エバステル®、アレグラ®、タリオン®、セルテクト®、ジルテック®、ザイザル®、ビラノア®など。
- 三環系:ザジテン®、アゼプチン®、アレジオン®、クラリチン®、アレロック®、デザレックス®、ルパフィン®など。
コラム:インバースアンタゴニストとしての抗ヒスタミン薬
- 抗ヒスタミン薬はアンタゴニストとしてだけでなく、インバース・アゴニストとしても働くことが知られています。
- H1受容体が多数発現すると、構造的な活性が生じ、ヒスタミン非存在下でも、シグナルが伝達するようになります。抗ヒスタミン薬はH1受容体に作用して、このシグナル伝達を抑制すると考えられています。初期治療の効果の機序の一つと考えられています。
どんな目的で飲むの?
- 抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎や花粉症、蕁麻疹などのアレルギー症状を持つ方が飲むことで、アレルギー症状を抑えます。
アレルギー性鼻炎、花粉症
- 鼻炎の症状であるくしゃみ・鼻水、結膜炎の症状である目のかゆみなどを改善させます。
- アレルギー性鼻炎は、くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型、鼻閉を主とする充全型に分類されますが、くしゃみ・鼻漏型に最も効きます。鼻づまりにも効果があります。
- 花粉症では、症状が出る前の花粉飛散予測日(またはそれより1-2週前)から飲むことで、症状を軽くすることが可能です。
蕁麻疹
- 皮膚の腫れやかゆみを抑えます。抗ヒスタミン薬は、蕁麻疹の治療において最も効果のある薬です。
- 効果が弱い場合は、量を増やしたり、他の抗ヒスタミン薬とあわせて使ったりすることもあります。
コラム:最近の抗ヒスタミン薬
- 最近の抗ヒスタミン薬の中には、血管を収縮させる作用を持つα交感神経刺激薬との合剤(ディレグラ®)もあります。これは、鼻づまりがでるタイプ(鼻閉型)、鼻づまりが中心だが鼻づまりも鼻水もあるタイプ(鼻閉を主とする充全型)のアレルギー性鼻炎で使用されます。
どのように飲むの?
- 抗ヒスタミン薬は、1日1回飲む場合、寝る前に飲むことが多いです。
- 食事の影響がほとんどない抗ヒスタミン薬は、夕食後に飲むこともあります。
- 食事の影響で吸収が低下する抗ヒスタミン薬もあります。ビラノア®やアレグラ®が有名ですが、これらは空腹時に飲むことが勧められます。
アレグラ®の飲み方
- アレグラ®は、空腹時に飲むことをおすすめします。ただし、食後に飲んでも大丈夫です。
ビラノア®の飲み方
- 就寝前に飲むことをおすすめします。
- 食前1時間から食後2時間の間に飲むのは避ける必要があります。食後にすぐ寝てしまう場合は、ビラノア®はお勧めできません。
飲み始めるときの注意点は?いつまで使うの?自分でやめてよい?
- 抗ヒスタミン薬の副作用には、眠気や集中力・判断力の低下(インペアードパフォーマンス)があります。車の運転などには気を付けてください。
- 基本的には、症状がよくなればお薬を中止することができます。ただし、症状がないときにも飲み続けることでアレルギー反応を抑えたり、アレルギーがでたときの症状を和らげたりする可能性もあります。いつまで飲むべきかについては、主治医とご相談ください。
副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの?治療中の注意点は?
- 抗ヒスタミン薬の副作用について下記にまとめました。
抗ヒスタミン薬の注意すべき副作用
- 眠気、集中力・判断力の低下(インペアードパフォーマンス):ヒスタミンは脳の覚醒作用があるため、抗ヒスタミン薬ではこの副作用が起こります。
- 口の渇き、おしっこの障害、緑内障の悪化:抗ヒスタミン薬は抗コリン作用があるため、この副作用が起こります。
- これらの副作用は、第一世代抗ヒスタミン薬の方が起こりやすいことが知られています。第一世代は、緑内障や前立腺肥大のある患者さんは飲んではいけないことになっています。
- 第二世代のアレグラ®、クラリチン®、デザレックス®、ビラノア®などは眠気の副作用が特に少ないことが知られています。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 蕁麻疹診療ガイドライン 2018.日本皮膚科学会
- 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016 年版.鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員
よくある質問
食事などとの飲み合わせは?一緒に飲まないほうがいい薬はある?
- 食事の影響で吸収が低下する抗ヒスタミン薬があります。ビラノア®やアレグラ®が有名ですが、これらは空腹時に飲むことが勧められます。
- デザレックス®は、食事に関係なく飲むことができます。
- 一部の抗ヒスタミン薬では、グレープフルーツと一緒に摂取することで、血中濃度が下がります。ビラノア®やアレグラ®が有名です。
- 抗菌薬のエリスロシン®と同時に内服すると、多くの抗ヒスタミン薬の血中濃度が上昇します。
- アルコールと抗ヒスタミン薬を同時に摂取すると、眠気や集中力・判断力低下の副作用が強くなることが知られています。
妊娠中でも服用して大丈夫?
- 妊娠中でも基本的には内服可能です。ただし以前より多く処方され、データも多い、クラリチン®、ザイザル®などが勧められます。