神経性やせ症/神経性無食欲症:疑う状況は?診断は?治療で良くなるの?
更新日:2020/11/11
- このページに来てくださったかたは、もしかすると「自分が、あるいはご家族が、神経性やせ症ではないかな?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は知っておいてもらいたいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- やせたい気持ちがとても強くなり、体重が増えることがこわくなります。そのため食べることがこわくなります。
- 体重とやせた体型にこだわり、食べる時間や量、内容などを自分の方法でコントロールします。
- その結果体重が減り、明らかにやせた外見となることが多いです。
- 栄養不足のため、疲れたり、ぐあいが悪い時が増え、これまでどおりの生活ができなくなります。
- 落ち着いて考えることが難しくなり、どんなにやせても、太っていると感じます。
神経性やせ症/神経性無食欲症は、どんな病気?
- 神経性やせ症/神経性無食欲症とは、やせたい気持ちがとても強く、体重が増えることがこわくなり、食べることがこわくなる精神の病気です。
- 神経性やせ症の方は、やせることや体重への強いこだわりと、太ることへの強い恐怖感が見られます。カロリーに敏感になり、カロリーの低いものばかりを食べたり、食べる量が減ったりして、体重が減ります。また、激しい運動をしたり、人によっては食べたものを吐いたり、下剤などの薬を使う場合もあります。
- しかし本人は「太っている、もっとやせたい」と感じ、さらに栄養不足で考える力がどんどん落ちます。多くの場合、本人は「このままやせていたいので、普通に食べたくない」と考えます。「自分は病気で、治療が必要だ」とは、なかなか考えられません。「治療すると太ってしまう」と考えます。
神経性やせ症/神経性無食欲症と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 以下のような症状があるときは、早めに受診を考えてください。
病院へ行くべき場合
- まわりの人が見て心配になるくらい、明らかに体重が減った
- やせすぎではないが、食べる量がすごく減った
- 体調や気分が悪く、いつもどおりの生活が難しい
- 生理がある人で、体重が減った後に生理が止まった
- 一人では動けない、意識がもうろうとしているときは、すぐに救急車を呼んでください。
- 受診する医療機関については以下の通りです。
医療機関について
- 本人が受診を希望したら、早めに受診してください。
- ご家族が受診をすすめるときは、まずかかりつけ医が良いです。学生は、学校の保健室やカウンセラー、社会人は、産業医や地域の保健所なども活用してください。
- はじめの相談窓口で、適切な病院などを紹介してくれます。信頼して相談できる病院を持つことが重要です。
- 心療内科や精神科の受診を希望する場合は、神経性やせ症の治療が可能かどうか、問い合わせてください。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 病院へ行く前に自分でできることは以下の通りです。
まわりの人に相談する
- 「自分が病気かもしれない」と考えることは、とても勇気がいります。しかし、「自分の食べ方はおかしいな」とか「困ったな」と思ったら、勇気を出して、ご家族などの話せる人に話してみてください。あなたのことを心配していると思います。
できる分だけ食べてみる
- 「食べる量を増やしてみよう」と勇気をもって考えられたら、許せるものから、ほんの少しでいいので食べてみてください。こわくても勇気を出して行動することが、治療に役立ちます。うまくいかない日があってもいいので、「また明日挑戦すればいいや」と考えてみてください。
神経性やせ症/神経性無食欲症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 神経性やせ症になりやすい人は以下の通りです。ただ、いろいろな要因が関係しているので、「こういう人がなりやすい」と決めつけるのは意味がありません。
なりやすい人
- 完璧主義
- 「理想どおりにできないと失敗したのと同じ」と自分を追いつめる
- 目標のハードルが高すぎる
- 自分のこだわりがとても強い
- 人の意見や新しい方法を取り入れることがとても難しい
- 昔太っていて、からかわれたり、いじめられたりした
- 男女ともになる病気です。ダイエットがきっかけでなることが多いです。
どんな症状がでるの?
- 神経性やせ症は、体の症状と心の症状があります。
体の症状
- 疲れやすい:栄養不足と低い体重のため、血液の状態が悪く、貧血やミネラル不足になります。
- よく眠れない、朝起きることが難しい
- 元気に活動できない:学校に行けなくなったり、仕事をやめることになったりすることもあります。
- 肝臓、腎臓、心臓、脳の機能が落ちる:低い体重が続くと、肝臓や腎臓、心臓にも影響が出ることがあり、重症化すると脳が縮むこともあります。
- 血糖が下がる:意識がなくなり、倒れてしまうこともあります。
- 虫歯:吐いている人は歯への影響が大きく、虫歯になりやすく、どんどん歯が薄くなります。
心の症状
- 気持ちが落ち込み、自分はダメだと感じる
- 何かをしようという気持ちがなくなる
- 人と会うことを面倒くさいと思う
- 不安やこわい気持ちが強く、安心して生活をすることが難しい
- 体重が減るほど、もっとやせたくなる:苦しい気持ちの終わりがありません。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- お医者さんに行ったら、主に下記のような検査を行います。
- 最も一般的なものは、血液検査、血圧の測定です。
- 病院によっては、心電図、胸のレントゲン、骨粗しょう症の検査、脳のMRIなども行います。
- 食べ方のこだわりや、気持ちの落ち込みを調べるために、質問用紙に記入する時もあります。
どんな治療があるの?
- 治療は体の治療と心の治療があります。二つを組み合わせて治療が行われます。
体の治療
- 体の不調や、うつ状態、眠れないなどの症状には、薬を使うこともあります。
- 体の状態が悪かったり、体重が減りすぎたりする時は、入院で治療となります。
心の治療
- カウンセリングでは、本人とカウンセラーの対話が中心です。治療の進み具合により、気持ちを話したり、食事内容をチャレンジしたりするなど、さまざまな内容で行われます。
- また、ご家族の協力もとても大切です。本人が許せる食べ物を用意したり、少しでも食べられたことを評価したりするなど、本人のペースを大事にしながら治療に向かって寄りそうことが本人の大きな力になります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- お医者さんで治療を受けたら、チームで治療していると考えることが重要です。
- 患者さんの治療にかかわる人たちは、チームの仲間です。
- 病院の先生やカウンセラーだけではなく、患者さんもご家族も、治療チームの一員として治療するという気持ちで行動することが大事です。みんなが知恵や知識を出し合い、あなたに合ったペースで治療を進めていきます。
- チームを信頼して、不安や困りごと、今の気持ちを話すことが、治療の大きな助けになります。
予防のためにできることは?
- 予防のためにできることは以下の通りです。
予防のためにできること
- 自分の長所を認めて、短所を許してあげられるおおらかさを持つ
- ものごとの結果を見るときに、「良い」か「ダメ」かの極端な考え方よりも、「このくらいはできた」と部分点をあげる
- このように、原因となる、本人の性格傾向や成長経過でのできごと、考え方のくせや社会での影響の中で、自分を追いつめない考え方をすることが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 真剣に治療を続ければ、治る病気です。
- ただ、本人が自分は治療が必要な病気であると考えることが難しく、むしろ治療をいやがることの方が多いです。また、治療をしたくても、治療すると太ると考えているので、やせたい自分との間で苦しい思いをします。その不安と苦しみは、周囲の人の想像を越えたものです。
- その苦しみや不安を持ちながら治療をするのには、個人差はありますが、ほとんどのケースで数年かかります。
追加の情報を手に入れるには?
- 神経性やせ症のもっと詳しい情報は、下記のサイトを参考にしてください。
- 日本摂食障害協会
- https://www.jafed.jp/
- 摂食障害 情報ポータルサイト(一般の方)
- http://www.edportal.jp/about.html