やけど: どんな症状?原因やリスクは?自分で対処する方法は?どんなときに医療機関を受診すればいいの?
更新日:2020/11/11
- 皮膚科専門医の常深 祐一郞と申します。
- うっかりご自身やご家族がやけどをしてしまったとき、どうしたらよいのかわからないことありますよね。特にお子さんの場合、心配になることでしょう。夜間や休日の場合、「応急処置はどうしたら?」「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になれられることがおありでしょう。また、治ると思っていたやけどが治らず長引いてしまって困っているという方もいらっしゃることでしょう。
- そこでこのページでは、やけどの一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「いつも説明していること」、「よく質問を受けること」、「よくある間違い事例」について記載をさせていただいています。
まとめ
- やけどは温度が高い物に接した時に皮膚が傷つくことです。
- やけどをした時にまず行うことは冷やすことです。水道の流水くらいがよいので、とにかくまず十分な時間冷やしてください。
- 服の上からやけどした場合、服を脱ぐ必要はありませんので、服の上から流水で冷やしてください。
- 水ぶくれは穴を開けて中の液体を出すと痛みは楽になります。ただし、水ぶくれになった皮膚は取らずにそのままぺたっとやけどに密着させておいてください。
- 目や広い範囲の顔をやけどした場合は、冷やしながらすぐに病院に向かってください。
- 胴体や手足でも片腕全体や、胸腹全体などの広い範囲のやけどの場合、冷やしながらすぐに受診してください。
- 火事などで高温の気体を吸い込んだ場合は、すぐに受診をしてください。
- やけどが浅ければ、塗り薬による治療を、深い場合、手術による治療が選択されます。
どんな症状?
- 皮膚は上から表皮、真皮、脂肪という3層になっています。
- やけどの症状は、皮膚がどの深さまで傷ついたかによって異なります。その深さは、接した物の温度と接していた時間によって異なります。高温であるほど、接していた時間が長いほど、深くまでやけどします。
やけどの重症度
- 表皮までのやけど(1度熱傷):赤くなりますが、水ぶくれにはなりません。傷は残らずに治ります。
- 真皮までのやけど(2度熱傷):水ぶくれができます。真皮の浅い層まででしたら傷は残りませんが、深くなるにつれて傷が残りやすくなります。
- 脂肪までのやけど(3度熱傷):黒く壊死【えし】します。治った後、瘢痕【はんこん】という傷が残ります。
主な原因とその説明
- やけどとは、高温の物に接した時に起こる、物理的な皮膚の損傷です。
- やけどの深さは、接した物の温度と接していた時間によります。
- やけどの重症度は、やけどの深さと面積で考えます。浅いやけどでも面積が広ければ重症ですし、深いやけどは面積が狭くても重症です。
- 火事や爆発で高温の炎や気体を全身に浴びたり、高温の気体を吸い込んで気道を損傷する重症の熱傷もありますが、ここでは、日常生活で起こるやけどについて述べます。
日常生活で起こるやけどの原因
- 日常生活では、湯飲みやお椀、鍋の中の液体をかけてしまったり、ポットや炊飯器の湯気を浴びたり、鍋やフライパン、ストーブなどの熱い金属を触ってしまった時に起こることが多いです。
- 高温のフライパンでも、一瞬触れただけなら真皮までのやけどで済みますが、それほど熱くないカイロでも数時間接していると、脂肪にまで至る深いやけどになります。カイロを貼ったままやストーブに当たりながら寝てしまった際には温度自体はそれほど高くないですが、時間が長いためとても深くなることがあります。低温やけどが意外と重症と言われるゆえんです。
こんな症状があったら救急車を!
- ここで述べます救急車を呼ぶ必要のあるやけどは、同時に、入院が必要なやけどともいえます。
- 広い範囲のやけど:血液の流れに異常が起こることがありますので、速やかに受診してください。大まかな目安としては、浅いやけどでも、胸・腹や背中全体、両うで全体、片足全体などの広い範囲の場合です。
- 深いやけど:狭い範囲でも緊急性があり、入院が必要なことがあります。
- 眼や陰部などのやけど:面積は狭いですが、やけどにより機能に影響が出ると後遺症になりますので、速やかに受診してください。
- 手のやけど:手も大切な部位で、後遺症を残すことがありますので、眼や陰部ほど緊急ではないですが、早めの受診が望ましいです。
- 火事や爆発はここでは詳しくは取り上げていませんが、火事などで高温の気体を吸い込んだ場合は、すぐに受診をしてください。気道がむくみ、窒息してしまう可能性があります。
やけどに対して、よくなるために自分でできることは?
まず、とにかく、冷やす!
- まずはとにかく冷やすことです。冷やすことで、やけどの進行を抑えることができ、痛みも和らぎます。
- 氷水などは冷たすぎてかえって皮膚を損傷させることがありますので、水道の流水がよいです。
- 服の上からやけどした場合、慌てて脱ごうとせず、服の上から流水などで冷やしてください。服を脱ごうとすると時間がたってしまったり、脱ぐときにこすれることで皮膚を傷ついたりする可能性があります。
- 通常のやけどでしたら慌てなくてもよいので、じっくりと1時間程度は冷やしてください。
水ぶくれの対処
- 水ぶくれは穴を開けて中の液体を出すと痛みは楽になります。ただし、水ぶくれになった皮膚は取らずにそのままぺたっとやけどに密着させておいてください。この皮膚をとってしまうと、やけどの傷がむき出しになり痛みが強くなりますし、新しい皮膚ができるのも遅くなります。
塗り薬をつかうなら
- 塗り薬を塗る場合、家にある保湿剤のワセリンや抗菌薬の入った軟膏などであれば応急処置に使用できます。クリーム状のものではなく、ワセリンや軟膏など油脂性のものがよいです。ただし、これらはあくまでも応急処置ですので、病院を受診して適切な塗り薬をもらってください。
- 塗り薬を塗る場合、ガーゼに薬をのばしてそれをやけどの部位に貼り付けるのがよいです。やけどの皮膚に直接薬を塗らないでください。
病院に行くまでに注意いただきたいこと
- 病院を受診するまでに何日かかかる場合、1日1回入浴時に、やけどの部位を洗ってください。洗うことはとても重要ですので、病院を受診した後も、毎日洗ってください。石けんをよく泡立てて、ガーゼなどで軽くこすりながら洗い、ぬるま湯で十分流してください。
- 食品用ラップや市販の創傷被覆材(キズパワーパッドなど)で傷を覆った場合、多くの場合、失敗してかえって悪化させてしまいますので、お勧めしません。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 先ほど述べた緊急を要する場合以外は、しっかり冷やしたあと、通常の診療時間帯に受診してください。
- かなり狭い範囲で浅いやけど:家にあるワセリンや抗菌薬の入った軟膏を塗っていれば、自然に治ります。
- それ以上のやけど:傷ついた組織が残っていたり、塗っている薬が不適切であったり、塗っている薬でかぶれていたりと、うまくいかないことがあります。 ですから、一度は医療機関を受診して、正しい薬と正しい処置を教えてもらってください。
お医者さんでおこなわれること
- まずやけどの深さと面積を評価します。特に深さは治療法や治るまでの期間に影響します。
2度熱傷までの場合
- 基本的に塗り薬で治療を行います。最初の数日はステロイドの塗り薬を使うことがあります。また、抗菌作用のある塗り薬を使いながら、傷ついた組織を少しずつ取ることもあります。
- 傷がきれいになった後は、傷を治りやすくする薬に切り替えます。新しい表皮は、やけどの傷の中に残った毛穴(毛包)や汗の穴(汗腺)からもできてきますので、比較的速く表皮で覆われていきます。
- すべての期間を通じて大切なことは、やけどの部位を洗うことです。どうしても作り損ないの組織やばい菌が傷の上に付着してきますので、これを毎日洗って取り除かないと、新しい表皮ができるのを妨げてしまい、治りが止まってしまいます。
3度熱傷の場合
- 傷ついた組織を手術で取る必要があります。また、毛包も汗腺も残っていませんので、まわりから表皮が伸びてくるのを待つしかなく、非常に時間がかかるので、多くの場合、体のほかの部位から皮膚を移植します。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下の書籍やウェブサイトを参照してください。
- 日本皮膚科学会ガイドライン>創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン>6:熱傷診療ガイドライン、日皮会誌:127(10): 2261-2292,2017
- https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/熱傷診療ガイドライン.pdf
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A>やけど
- https://www.dermatol.or.jp/qa/qa8/index.html
【先生にご執筆いただいたご原稿】